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騎士学院のイノベーション  作者: ハッタカ
第三章 神樹の真実
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帝国への誘い 12

「し、失礼した。私は神樹教の教祖、ザイール・フェニルという」


「ヴェストニア王国第一騎士団団長、アルバート・フィグラム。爵位は伯爵位だ」


「・・こ、これは遠路はるばる帝国の地に、ようこそおいでくださいました」


 周りの帝国民達の目もあり、教祖が出てきた天幕の中に案内された俺達は、10人は座れるだろう大きな円卓に腰を落ち着けた。


俺が自己紹介を行うと、見た目と肩書きにギャップに目の前の教祖は目を見開いて驚いていたが、取り繕うようにして歓迎の言葉を口にした。エリーゼさんについては当時皇女の近衛騎士ということで顔が知られており、教祖の背後に控える4人の騎士達は微妙な表情を浮かべながら様子を伺っているようだ。


ちなみに、彼女には話が面倒にならないよう、出来るだけ静観していて欲しいと伝えてある。


「我々がこの帝国に来た理由は騎士の方にも伝えましたが、この国がある魔物によって滅亡の危機に瀕したと聞き、確認のために派遣されました」


さすがに生き延びた人々に対して「滅亡の確認に来ました」と言うわけにはいかず、少々オブラートに包んだ伝え方にした。


「なるほど。その情報をもたらしたのが・・・そちらの皇女専属近衛騎士からというわけですね。そして、彼女が居るということは、当然皇女も存命であると?」


彼は先程から現皇帝であるイシュカさんについての事ばかり気になっているようで、ソワソワとした様子を隠しきれずにいるようだった。


「確かに彼女は存命ですが、今は王国で長旅の疲れを癒してもらっていますよ。あぁそうだ。あなた達の言う皇女ですが、今は皇帝として王国で保護しております」


「っ!こ、皇帝ですか・・・そうですか、そうですか・・・」


俺の言葉に教祖は頬を引きつらせている。こんなすぐに感情が表情に出る人物が組織のトップで大丈夫なのかと疑問に思うが、もしかすると今の帝国の追い詰められた状況が、彼から余裕を奪った結果なのかもしれない。


「早速ですが、私には聖魔術の心得があります。そちらの騎士から帝国の現状を聞き、よろしければお力になれると申し出ました」


「聖魔術!それは素晴らしい!!民達の中には未だ治療が追い付かず、負傷に喘ぐ者達も多い・・・是非そのお力をお貸しいただきたい!」


「もちろんです。ですが、その前に確認したいことがございます」


「・・・何でしょうか?」


俺は真剣な表情でそう前置きすると、教祖は身構えるように聞き返した。


「聞きたい事は2つ。一つは神樹についてどこまで把握しているか。もう一つはこの帝国の現状をどうしていくつもりなのか、です」


俺の問いかけに教祖は目を泳がせていた。これほど心情が察しやすい相手であれば、交渉の得意なレックでなくても俺で十分だ。


「な、何故そのような事を?」


「何故?当然ではないですか?現状の帝国が復興する為には、神樹の安全域を復活させる事が必須。神樹の研究が盛んだったという帝国であれば、その情報を掴んでいてもおかしくない。それに、死んだような目をしている住民達を統率する立場の者が、どんな未来を見据えているか興味がありましてね」


俺の質問に教祖は目を閉じて考え込むと、しばらくして真剣な表情で口を開いた。


「この帝国が滅びの憂き目にあったのも、全て皇帝の一族のせいです。彼らは神樹の情報を独占し、その恩恵の大半を自分達の私利私欲の為に独占しました。そんな事をしたから神樹は枯れ、安全域も消滅してしまったのですよ・・・」


質問の論点がずれた教祖の返答に、俺は小さくため息を吐く。


「そうですか。具体的に皇帝の一族が独占していたという恩恵とは何ですか?」


「情報です!神樹の力についての情報を隠蔽し、その情報を盾とし、長年帝国でやりたい放題の暴君として君臨していたのです!」


「貴様っ!!言うに事欠いて!お前達が帝国をこんな状態にしたのだろうが!!その責任から逃げる気か!!!」


教祖の言い分に、エリーゼさんは立ち上がりながら円卓を力一杯叩くと、激怒の様相で声を荒げた。


「ははっ。事実を指摘されて頭に来たのか?あの混乱の中、皇女達一行が生き延びているのが何よりの証拠だろう?」


「このっ!我々が何の苦労もなく生き延びたとでも思っているのか!?隣国に辿り着くまでに、どれほどの同僚が亡くなったと思っている!!」


「ふん!私達の現状よりはましだろう!!皇女は今、安全な王国に保護してもらっているらしいからな!!」


「全部お前達が招いた結果だろうがっ!!」


俺は終わりの見えない2人の言い争いに小さくため息を吐くと、天幕内全体に殺気を放ちながらドスの効いた声で制止する。


「おい、そこまでにしろ」


「「「っ!!!」」」


この場に居たもの達は全員俺の殺気に呑まれたようで、青い顔に大量の冷や汗を流しながら固まった。そうして静かになったところで話を続ける。


「俺が聞きたいのは2つだと言っただろ?神樹の情報とこの帝国の行く末だ。具体的に皇帝は神樹のどんな情報を握ってたんだ?」


「そ、それは・・・」


俺は先程までの友好的な雰囲気から一転し、かなり威圧的な態度で教祖に質問した。本来なら後ろに控えている護衛の騎士が不敬だなんだと騒ぎだしてもおかしくないのだが、俺に対して完全に萎縮してしまっているようで、何も言えないでいた。


「情報を握っているからやりたい放題したとお前が言ったんだろ?暴君であり続けることが可能な神樹の恩恵とは何だ?」


「・・・・・・」


「その情報を使って皇女・・今は皇帝か。帝国から王国まで生き延びたんだと指摘したんだろ?凶悪な魔物がひしめく危険な森を生き延びれる恩恵とはなんだ?何故そんな恩恵を有していたはずの皇帝の一族は、お前らに殺されたんだ?」


「・・・・・・」


俺の質問に教祖は目を泳がせ、しどろもどろにあたふたとしているが、まるで答えようとはしていなかった。いや、答えられないといった様子だった。


「じゃあ、帝国をどうする気なんだ?今はあんたがトップに立っているんだろ?復興にあたってどんな策を考え、どの程度準備が進んでいる段階なんだ?」


「・・・・・・」


「そっちの騎士から話を聞き、この場所を見て分かったが、何もしなけりゃ早晩この帝国に人は居なくなる。全員魔物に殺されてな。当然その打開案があるんだろ?わざわざ皇帝を殺して革命したんだ。用意周到に準備してたんだろ?」


段々と圧を増していく俺の言動に、今にも倒れそうな程顔色を悪くした教祖は、ようやく弱々しくも口を開いた。

 

「こ、こんな、こんな事になるなんて・・・思わなかったんだ・・・」


声を震わせながら、まるで懺悔のように教祖は語った。


「神樹の実を取り込めば、人間を超越した力が手に入るはずだった。だが、その果汁を一滴舐めただけでも身体が拒絶し、皆凄惨な最後を迎えた。皇帝の一族であれば、安全に取り込む方法を知っていると思ってたんだ・・・」


「お前は神樹の実を取り込まなかったのか?」


「・・・先ずは安全性を確かめてからと考えていた」


どうやら教祖は予め危険性を分かっていたのだろう。毒味役に何人か試し、結果誰も成功しなかったというわけだ。


「で、そうこうしているうちに魔物が攻め込んで来て、神樹の実を食べてしまったってことか?」


「どうしようもなかった・・・相手はドラゴンだったんだ・・・突如現れたドラゴンに混乱し、成す術べなく実を奪われ・・・その後はご覧の通りだ・・・神樹の実さえ手に入いれば、私達の作戦は成功したはずだったんだ・・・」


項垂れるようにして紡がれる教祖の話に、俺は内心で盛大なため息を吐いた。彼らが主張するような、皇帝が神樹の恩恵の大半を得ていた事実など無いのだろう。実を取り込むことで超越した力が手に入ると知り、欲望に駆られて行動したというのが根底にあったようだ。


しかも教祖のこの様子では現状の打開策など無く、何も考えていないのは明らかだ。


(だから帝国の騎士は教祖に会わせることに躊躇したんだろうな・・・さて、俺達はどう動くべきか・・・)


このまま何もせずに王国へ帰還すれば、おそらく冬までには全滅しているだろう。助けるような義理もないので見捨てても構わないが、エリーゼさんは何とかしたいと考えるだろう。


(エリーゼさんには身を呈して俺を助けてくれた恩があるからな。彼女の意見も聞いてみるか)


そう考え、俺は隣で殺気に当てられて縮こまってしまったエリーゼさんに声を掛けたのだった。

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