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騎士学院のイノベーション  作者: ハッタカ
第三章 神樹の真実
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帝国への誘い 11

「単刀直入に聞きます。あなた達はいつまで持ち堪えられますか?」


「・・・な、何を?」


 エリーゼさんの厳しい視線を伴った質問に、騎士の人達は若干目を泳がせていた。その様子に彼女は目を細めると、ため息混じりに口を開いた。


「なら、もっと直接的な表現で聞きます。あなた達が言う3万の帝国民達は、あとどの程度生き延びられそうですか?」


「・・・俺たち帝国騎士が居る限り、一人の国民も死なせはーーー」


「今は理想論も根性論も不要だ!必要なのは現実的な考察と対策!!現実逃避したところで、国民を守れるわけではない!!!」


エリーゼさんは騎士の言葉を遮るようにして、真剣な表情でそう言い募っていた。彼女のその気迫に飲まれたのか、騎士の人達は悔しげな表情で俯いてしまった。その様子に、おそらくは先程まで彼らが語っていた話は、希望的な部分を誇張した話だったのかもしれない。


「エリーゼ殿、まぁ落ち着け。これまで見てきた帝国の様子から、とても楽観できるような状況でないのはワシも分かるが、今彼らを責め立てても仕方なかろう?」


「しかし、状況は正確に把握しなければなりません。表面的な言葉を信じ、次に訪れた時には全滅している、なんて事になれば・・・」


ダニエルはエリーゼさんの肩に手を置きながら諌めるように言葉を掛けると、彼女は思い詰めたような表情を浮かべた。ダニエルとしては、せっかくレックの力で友好的な雰囲気になったのに水を差された事に思うところがあるのだろうが、彼女の思いも理解できる。勇んで革命を起こした結果が今の状況なのだ。俺達のような部外者や敵勢力の者に対して虚勢を張って取り繕い、実は全滅寸前ですなんて事だったら笑えない。


「はぁ・・・場合によっては、今のあなた達の状況を助ける事が出来るかもしれない。俺達の実力はさっき見てもらった通りだし、何なら帝国に来るまでの道中、この国を灰塵に帰した魔物を撃退している。しかし、体面を気にするあまり不都合な真実を隠していては、救えるものも救えない!」


「「「・・・・・」」」


俺の言葉に騎士達は沈黙してしまったが、しばらくすると一人の騎士が意を決したように顔を上げた。


「本当にあの圧倒的な存在である魔物を撃退したのですか?」


「ええ。それはエリーゼさんも見ていますよ?」


俺がそう言うと、彼はエリーゼさんの方をチラリと見る。すると、彼女は真剣な表情で小さく頷いて見せた。その様子に、彼は目を見開き、少しの沈黙の後に口を開いた。

 

「そうですか・・・お話しします、帝国の本当の現状を」


「お、おいっ!」


「皆だって分かっているだろ!?今のままじゃあ半年も持たないって!!」


「「「・・・・・・」」」

 

その言葉に反感を見せるものもいたが、続く彼の言葉に何も言えなくなっていた。それは今の帝国の現状を如実に物語っているようだった。


現状、帝国民の生き残りは俺達が入ってきたルートとは反対側の外壁に集落を築いているらしい。損傷の少ない外壁と倒壊した家屋の廃材も利用し、小さいが強固な外壁を建設し、その外側に深い堀を設置、生き残りの3万人が生活しているようだった。


防衛の面からは、通常の魔物であればある程度襲撃を防げるが、飛行型の魔物には効果が無く、日常的に負傷者や死者が出ているとのことだ。そもそも強大な魔物の襲撃の際に、帝国民は半数以上生き残っていたらしい。それが、安全域が消えてから絶えず襲い掛かってくる通常の魔物のせいで多くの人々が死んでいったのだそうだ。

 

しかも居住家屋は掘っ立て小屋やテントのようなものばかりで、生活環境はあまりよろしくなく、そのせいか住民は病に掛かりやすくなってしまっているらしい。


更に、怪我人や病人の数に対して聖魔術を扱えるものが極端に少ないため、命の選択を余儀なくされ、生き残りの数は日を追うごとに少なくなっているとのことだ。


このような状況だからこそ、今は生き残った者達が一致団結して事態の打開に臨まなければならず、その中心には神樹教の教祖が立っているとのことだ。



 彼が一通り語り終えると、俺達は何とも言えない空気に包まれる。安全域が無いという状態が、これほど簡単に人間の生命を奪うことになるのかという驚きと、帝国の行き詰まりを感じたからだ。


「一つ聞きたいんだが、住民達はその教祖を中心として本当に纏まっているのか?」


俺は疑問に思っている事を聞いてみた。正直に言って、帝国が今のような状況になったのは神樹教が起こした革命が原因だ。ならば、その元凶たる教祖を中心に纏まっているというのは理解し難かったからだ。いくら皇帝側に責任を擦り付けようとも、国民の感情を統率するにも限度がある。


「・・・もちろん・・です」


俺の質問に言い淀む彼の様子にため息を吐き出す。周りを見渡し、俺と視線を合わせずに俯く騎士達の様子に、現状が何となく察せられたからだ。


「アルバート殿。先ずは国民達の現状を確認しましょう。それから、今後この帝国をどうするつもりなのか、教祖に確認しましょう。面会は可能だろうな?」


エリーゼさんが騎士達に問いかけると、彼らは苦い顔をしながら沈黙してしまった。どうや教祖には会わせたくないのか、会わせられない理由があるのか。とにもかくにも俺達は騎士達の拘束を解き、帝国の生き残りがいるという拠点へと移動することとなった。



 帝城跡地から地下通路を2時間程移動した所にその拠点はあった。


予め騎士から話を聞いていた通り外壁を利用した拠点で、テントや小屋などが多く設置されている。ただ無秩序というわけではなく、きちんと整理された状態なのだが、王国の平民が住む居住区と比べてもみずほらしく、暗鬱とした雰囲気が漂っていた。


すれ違う帝国の住民の目には生気がなく、どこか諦めにも似た表情を浮かべ、まるで生きる屍がさ迷っているようだった。身にまとう衣服も所々破れ、土汚れ等が目立つ。


「ワシらは部外者のはずだが、住民の方々はあまり興味を示しませんな」


「そんな余裕なんて無いみたいね。生きていくのが精一杯で、他の事にかまけていられないんでしょうね」


「あぁ、何ということだ!見目麗しい女性の方々が、こんなに沈んだ表情をしているなんて・・・」


帝国の騎士の先導のもと、俺達は彼らの拠点の様子を横目に、教祖が居るという場所に案内してもらっている。その道すがら、現状の帝国民達の様子にダニエルを始め、ミッシェルとレックが深刻そうに言葉を交わしていた。


「皆怯えた顔をしている・・・度重なる魔物の襲撃で、精神的にも相当疲弊しているようだな」


エリーゼさんもこの状況に悲しげな表情を浮かべながら現状を嘆いていた。俺から見ても正直既に詰んでいるかのような雰囲気を感じており、秋を待たずに全滅するのではないかと思うほどだった。


 

 そうしてしばらく歩みを進めると、かなり大きな天幕へと到着した。その入口には完全武装の2人の騎士が立っており、俺たちに向けて殺気立った視線を向て、腰の剣の柄に手を添えながら口を開いた。


「そこで止まれ!後ろに居る者達は何者だ!?」

 

「・・・客人を連れてきた。教祖様に面会を希望だ」


見張りの騎士に対し彼は重い口調で伝えるも、相手は目を吊り上げて声を荒げた。


「何を言っている!彼らの装備・・・この国のものではないだろう!?何故、何処の馬の骨とも知らない連中をこの拠点へ連れてきた!?」


「もしかすると彼らは、今の閉塞した状況を打開できるだけの存在かもしれないんだ!」


「っ!!」


切実な彼の言葉に、見張りの騎士達は息を飲む。次いでもう一度俺達の方を見回すと、片方の騎士が目を見開いた。


「なっ!あいつは第五皇女直属の近衛騎士!どうなっている!?何故他国の者達と共にあいつが!?皇女は生きているのか?」


その騎士の言葉に周辺が騒がしくなるが、向けられてくる視線からは敵意を感じなかった。むしろ、希望のような光を感じられた。


「皇女?皇女が生きているのか!?」


「っ!きょ、教祖様!?お、お待ちください!」


天幕の中から聞こえてくる声の主に、見張りの騎士は教祖様と呼び制止したのだが、その声を無視して一人の男性が天幕から現れた。


「どこだ!?皇女はどこだっ!?」


唾を吐き散らすようにして皇女を探すその男は、不健康に痩せこけ、目が窪み、まるで幽鬼のような風貌をしていた。

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