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騎士学院のイノベーション  作者: ハッタカ
第二章 王女襲来
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第二章 エピローグ

 今回の一連の騒動が一段落ついたと思ったのだが、騒ぎは騒ぎを呼び寄せるのか、次の厄介事が舞い込んできたようだった。


「クリスティーナ、ちょっと良いか?」


「分かりました。お兄様」


焦りの表情を浮かべながら駆け込んできた王子は、王女を皆から離れた場所へと呼び出し、何やら話し合っているようだった。遠目に見える2人の表情から、緊急事態ではあるものの、俺を呼ばないということは、差し迫った命の脅威が近づいているわけではないようだ。


「ど、どうしたんだろうね?」


不安な表情を浮かべたロベリアが話しかけてくる。先程までの俺に対する困惑の感情はいつの間にか消えており、今は王子達の様子についての不安を感じているようだ。


「さぁ?緊急のようだけど、魔物の脅威とか、さっきみたいな襲撃とかじゃないようだな」


「そ、そうなのか?何でそんなことが分かるんだ?」


「本当に大丈夫なのかな?また、さっきみたいな事が迫っているとしたら・・・」


俺の言葉にマーガレット嬢が疑問を投げ掛け、ライトは先程までのこともあってか、不安で押し潰されそうな顔をしていた。そんな彼らに、俺は軽い感じで口を開いた。


「もし危機が迫っているとすれば、悠長に話なんてせずに逃げるだろ?たぶん、また違った問題事が舞い込んできたんじゃないか?」


「た、確かに」


「うぅ・・・早く帰りたい」


納得した表情を見せ、落ち着きを取り戻したマーガレット嬢に反して、ライトは泣きそうな表情でどこか遠くを見つめていた。



 しばらくすると、王子達の話し合いが終わったようで、どこか困った顔をしている2人がこちらに戻ってきた。


「あ~、これからの事なんだが、色々と想定外の事が起こってね・・・一先ずは君達を安全な場所まで退避させる。その後、私とクリスティーナは別行動をとらせてもらうよ」


「だ、大丈夫なのですか?」


王子の言葉に、マーガレット嬢が心配の声をあげた。今さっきまで王子達は命を狙われていたのだから、別行動をすると言われれば当然の反応だろう。とはいえ、何の理由もなしに言っている訳ではないのは明白で、マーガレット嬢も理由を聞きたそうにしていた。


「残念ながら、細かいことは言えない。政治的な判断だと言っておこう」


「っ!そ、そうですか。了解しました」


王子の返答に、マーガレット嬢は一応納得の表情を見せた。政治が絡むとなれば、いくら侯爵家の令嬢といえども、今はまだ学院の生徒でしかない彼女ではどうすることも出来ない。


「よし。では学院の合流地点へと急ごう」


そうして俺達は魔導列車付近の合流地点へと移動し、そこに待機していた学院の先生に対し、王子と王女が事の次第を簡潔に報告していた。また、付近に現役の騎士団員も任務で駐留していたので、王子達は幾人かに声を掛け、こちらへの応援を命じたり、様々な指示を出していた。


報告を受けた先生達は驚きを隠せない表情をしていたが、彼らが今回の件に関わっていないとは言い切れないこともあり、具体的な詳細は学院に戻ってからとなった。


王子達が報告をしている間、生徒の俺達は点呼をとったり、負傷者の確認が行われていた。俺は全身血まみれということもあり、魔術で血を洗い流し、予備の制服に着替えた。


レンドール少年については既に治療は完了しているが、未だ目を覚ましていないこともあり、対応は救護の先生へと引き継がれた。


そして・・・


「アル様。よろしいでしょうか?」


生徒達には待機の指示が出ており、俺はロベリア達と今回の件について、王家から別途指示があるまで箝口令が敷かれることなどを確認していると、王女が真剣な表情で話しかけてきた。


「場所を変えた方がよろしいでしょうか?」


「そうですね。お願いできますか?」


俺の確認の言葉に王女は苦笑いを浮かべると、クラスメイト達の方へ一瞬視線を向け、俺を人気のない場所まで引き連れていった。



「すまんな、アルバート」


 既にそこで待っていた王子は俺に向かって軽く手を上げ、挨拶代わりに小声で謝意を口にした。おそらくは、これから俺も厄介事に巻き込まれるという布石だろう。


「気にするなとは言えないが、そんなに厄介な問題事なのか?」


「困ったことにな。お前の力が必要となるか分からないが、用心のため、私達と同行してもらいたい」


俺の確認の言葉に王子は嘆息混じりに言葉を吐くが、全く状況が読み取れず、首をかしげた。


「言葉が足りないのは理解していますが、ここでは話せないのです。詳細は移動しながらお話しします」


困惑する俺に対し、王女は申し訳なさそうな表情を浮かべながら説明してくれた。


「分かった。このまま移動するのか?」


「あぁ。私達の別行動については、学院の教師や騎士団には既に伝えてある。少し急ぐ必要もあるからな、クリスティーナは私が抱えていく」


「では、参りましょう」


2人は気を引き締めた表情を浮かべており、その様子から、余程の事態に直面しているのだろうと察せられ、こちらにも緊張感が伝わってきた。



 王子先導のもと、身体強化を併用した高速移動で目的地へ到着すると、そこには見慣れぬ紅い鎧に身を包んだ、数十人の騎士のような出で立ちをした人達が居た。


「お待たせしてすみません」


円形に隊列を組んでいるその人物達に向かって、王子は申し訳なさそうに声を掛けると、隊列が割れ、中心から豪奢な紅い軍服の様な衣服に身を包んだ一人の人物が歩み出てきた。見るからに高貴な出で立ちで、騎士達はこの人物の護衛なのだろうと推察できる。


「お手間をとらせて申し訳ない。初見の方もいるため、改めて名乗らせてもらおう。私は隣国、イーサルネント帝国の現皇帝、イシュカ・ヴェルサス・イーサルネントです」


「お初にお目にかかります、イシュカ皇帝陛下。わたくしはヴェストニア王国第二王女、クリスティーナ・ヴェルツ・ヴェストニアと申します」


「見目麗しい姫君にお会いできたこと、心より嬉しく思う」


皇帝の名乗りに対し、王女は淑女らしく美しい所作でカーテシーをとりながら挨拶を述べると、皇帝は笑みを浮かべ、決まり文句の言葉を返してきた。


ここに来るまでの道中、2人から話は聞いていたが、こうして自国以外の人間を見るのは初めての経験だった。それは王子や王女も同様のようで、王宮に保管されている書物から、この大陸にはヴェストニア王国を含めた4つの国があると記されてはいるが、魔物蔓延る大森林のせいで外交など出来ようはずもなく、こうして外国の要人だと名乗られても判断が難しく、どのように扱うべきか思案しているということだった。


イシュカと名乗った皇帝は、20代前半だろうか、整った顔立ちをしており、少し前髪を残したオールバックの髪型で、深紅の髪が印象的だ。身長は170位で華奢な体格をしているが、その瞳からは強い意思が感じられる。


彼の背後には一人の女性騎士が付き従っており、暗い赤髪のショートカットで、一際派手な紅い鎧に二振りのショートソードを装備している。身長は皇帝と同じくらいで、鋭い視線を周囲に向けながら警戒している。


「それでは、改めて話を聞かせてもらえますでしょうか?」


「勿論です。なぜ我々が自国から遠く離れたこの場所にいるのか。皆さんにとっても無関係な話ではありませんから」


皇帝の話し振りから、おそらく王子と最初に接触した際に何らかの情報交換が成されたのだろう。そして、その内容から王子は彼らの言葉に真実性が高いと判断し、このような状況になっているという訳だ。


本当は事前に聞いておきたかったのだが、先入観に囚われずに判断してほしいという王子の言葉もあり、俺はこれから何が語られるのかを知らない。


安全地帯である魔導列車の方へ案内しなかったのは、まだ彼らを信用しきれていないためか、それとも今回の襲撃事件の混乱に巻き込まないための配慮か分からないが、気を抜くことは出来ない。今俺は2人の護衛としてこの場にいるのだから。


(っ?皇帝の護衛騎士、やたら俺の方を見てくるな。まぁ、自分の見た目の事は俺が一番よく分かっているからな。何で子供をこの場に連れてきたんだって思ってるんだろう)


そうして語られた皇帝の話の内容は驚愕のもので、これからのヴェストニア王国としての行動に大きな影響を与えるものだった。

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