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騎士学院のイノベーション  作者: ハッタカ
第二章 王女襲来
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王族の視察 5

「火の魔術を放つぞ!魔法陣展開!・・・魔力供給!・・・照準!・・・発動!」


『『『グゥルアァァ!!!』』』


  魔導列車を降り、早々に森の表層にある目的地に到着した俺達の班は、さっそく目当てのサーベル・ウルフを見つけ出し、隊列を組んで討伐に当たっている。


見つけた魔物の数は5匹、マーガレット嬢とセルシュ少年が前衛で魔物を引き付け、その隙に後衛のレンドール少年が中級の火魔術を放ち、相手に大きなダメージを与えるという基本に忠実な戦術だ。ちなみに俺を含めたロベリアとライトは邪魔だからと、何もしないように隅に居るよう指示を出されている。


その指示にはマーガレット嬢が異論を挟んだのだが、森では何が起こるか分からないから、常に全力をもって魔物に対処するのではなく、余力を残すための戦術だと反論された彼女は、不満を感じながらも、そのもっともらしい言葉に引き下がらざるをえなかった。

 

「よし!僕の魔術のお陰で既に魔物達は瀕死だ!止めは任せたぞ!!」


「・・セルシュ。私が左3匹、君が右2匹だ」


「・・了解」


レンドール少年の言葉に思うところがあるのか、マーガレット嬢は一瞬苛ついた表情を浮かべるも、王女達の目があることを気にしてか、セルシュ少年と目標の魔物がかち合わないように連携をとっていた。セルシュ少年も思うところがあるのか、あまり良い表情はしていないながらも、マーガレット嬢の指示には素直に従っている。その様子から、どうやら苛つきの対象はレンドール少年のようだった。


そうして魔物と戦闘を始めてから10分もしない内に、あっさりと討伐は完了した。


「マーガレット様とセルシュは周辺の警戒を!お前達は討伐証明部位の牙を採取しておけよ!」


そう俺達に指示を出すと、レンドール少年は足早に王女達の元へ駆け寄り、今の戦闘についての自分の功績を、これ見よがしに語っていた。


「・・・なんか私達、あの人に良いように利用されてない?」


「ボクは戦闘でお役に立てることは無いですから、しょうがないかなと・・・」


サーベル・ウルフの牙を剥ぎ取りながらロベリアが不満を、ライトは諦めの言葉を吐いていた。俺としては、戦闘から外してくれた方が他の事へ意識を集中できるので、願ったり叶ったりの状況だった。


「ここは楽が出来ると思ってやるしかないよ。今回の指揮官は一応レンドールだからな。騎士団に入団するなら、余程無茶苦茶な指示でも無い限り、従う必要があるだろ?」


「そうれはそうだけど、あの人の為っていうのがちょっとなぁ・・・」


俺の言葉に、ロベリアは複雑な表情を浮かべていた。どうやら彼女にとって少年は敬意を向けられないような人間性だと感じているようだ。


それにしても初めて魔物の討伐を経験した時と比べると、彼女も随分とこの森や戦闘に馴れてきたようで、それほど怯えることなく魔物と対峙できるようになっている。


「ボクも強くなれたらなぁ・・・」


ライトは今の境遇が心苦しいようで、何も出来ない自分に落胆しているようだった。彼は魔力量は桁外れなものの、その扱い方に難があるようで、魔物との戦闘に耐えるような身体強化までは出来ていないと言っていた。


「ライト。良かったら少しコツを教えようか?」


「えっ?あの、アルさんは魔術師ですよね?凄い人だとは分かっていますが、身体強化まで教えられるんですか?」


俺の言葉に、ライトは目を見開いて驚いていた。一般的に剣士は魔術を、魔術師は身体強化を使用しない。出来ないわけでは無いのだが、得手不得手の問題もあり、無理矢理発動しようとしても恐ろしく時間を要するし、とても実戦に耐えられる威力にはならないというだけだ。


「理論的な事ならな。そもそも剣武術コースの実技の授業では身体強化の方法について、どんな風に教えられてるんだ?」


「それが・・・この学院に入学した時点で身体強化は出来て当然らしくて、授業では教えられないんです。マーガレット様から色々と手解きを受けたんですが、中々感覚が掴めなくて・・・」


俺の質問に、ライトは暗い表情で返答する。平民蔑視も甚だしい学院だと分かってはいたが、そもそも教師どもは平民に対して教育する気も無いようだ。


「そうか。感覚としては全身を血液が巡るように、魔力も巡らせろってマーガレットが言わなかったか?」


「そ、そうです!何とか意識してやってみるんですが、身体の中心付近はイメージ出来ても、手足の方までは感覚が掴めなくて・・・」


ライトの現状は、初心者に有りがちな感覚不全だ。普段意識することの無い指先や足先にかけての感覚が分からないのだ。


本来ならじっくりと時間を掛けて感覚を掴んでいくものなのだが、彼であれば別の方法の方が手っ取り早く身体強化が出来るはずだ。


「ライト、お前の魔力量は桁外れだ。ただ、量が多過ぎて制御が覚束ないでいる」


「はい。マーガレット様からもそう言われました・・・」

 

「そこでだ。制御は放棄して、ただ魔力を身体に満たせ。血管を流れるようにとか、循環するようにとかのイメージもいらない」


「えぇ?魔力をただ発動しただけでは、身体強化なんて出来ませんよ!?」


「いいから、やってみろ」


「は、はい」


俺がそう言うと、ライトは半信半疑な表情を浮かべながらも魔力を発動した。


「わぁ。本当にライト君は魔力量が多いんだね」


ライトは魔力が漏れ出るほど身体に満たしていることに、ロベリアは感嘆の声をあげる。ただ、やはり手足の部分に魔力を満たすのが苦手なようで、そこだけ魔力の空白地帯のようになっている。


「・・・あの、まだ魔力を?」


「まだまだ全然だ。そうだな・・・ライトの実家は確かパン屋だったな?」


「えっ?あ、はい、そうですけど・・・」


いつまで魔力を発動していれば良いのか聞いてくるライトに、全く違う話を振ったせいか、彼は怪訝な表情を浮かべていた。


「じゃあ、クリームパンをイメージしてみろ。自分がパンで、クリームが魔力だ。パンの隅々にまでクリームが満ちるように、どんどん魔力を注入していけ」


「な、なるほど・・・」


俺の説明に何となく納得の表情を浮かべたライトは、目を瞑り、集中して魔力を発動し続けた。


そうしてしばらくすると、ライトの身体全体が身体強化特有の薄い赤色の光を帯び始めた。


「あっ、ライト君の身体が!」


「えっ?わぁ・・・これが身体強化なんだ。何だか力が漲ってくるようです」


ロベリアの言葉に、ライトは目を開けて自分の身体を確認すると、手を開いたり閉じたりしながら、感動したように身体強化できたことの感想を呟いていた。


「これはちょっと裏技的な発動方法だから、常に魔力を発動し続けていないと効果が続かない、効率度外視のやり方だ。とはいえ、魔力量が桁外れのライトにとっては、それほど問題にはならないだろう」


「す、凄いです。あんなに苦労して出来なかったのに、こんなにあっさり・・・ありがとうございます!!このご恩は忘れません!!」


「いや、大袈裟だよ。この状態だと集中が切れれば解除されるだろうし、あまり長時間維持するのも難しいから、慣れれば普通のやり方にしていった方が良いぞ」


「はい!分かりました!!」


俺の説明に満面の笑みを浮かべながら元気な返事を返してくるライトの声が聞こえたようで、マーガレット嬢が驚きも露わに近づいてきた。


「なっ!?ライト・・・身体強化出来たのか!?」


「は、はいっ!マーガレット様!アルさんのご指導のお陰で、ついにボクもちゃんと身体強化を発動することが出来ました!!」


「ア、アル・・・の指導で?彼は魔術師だろう?いったいどうやって?」


ライトの返答に、マーガレット嬢は俺をチラリと見たかと思うと、恥ずかしがるような表情を浮かべてすぐに視線を反らし、その方法をライトに聞いていた。


「えっと、やり方の説明というか・・・ボクの実家がパン屋だったものですから、パンに例えて教えてくれたんです」


「そ、そんなことで・・・さ、さすがアルだ」


唖然とするマーガレット嬢だったが、そんな彼女を押し退けるかのように王女が割り込んできた。


「まぁ、さすがはアル様!ヴェストニア騎士学院で首席を取られるだけありますね!魔術師でありながら剣武術にも精通している。その能力、是非騎士団に配属した暁には、存分に発揮していただきたいものです!」


満面の笑みを浮かべる王女の背後には、こちらを射殺さんばかりの憎々しげな表情をぶつけてくるレンドール少年の姿があった。どうやら彼の自慢話を中断させてしまったようだ。


「お褒めに預かり恐縮です。しかし、私ごときの知識ではそれほどお役に立てるようなこともーーー」


「あら。謙遜は時に、評価している相手に対して無礼に映りますよ?ここは素直に称賛を受けとる方が好まれます」


「そ、そうですね。失礼致しました」

  

俺の返答を遮るようにして王女が忠告してきた。確かにその通りなのだが、彼女の言葉には何か裏があるのではないかと勘ぐってしまうのだ。それに、王女は俺の姿をマーガレット嬢から隠すような立ち位置をしており、その意図にマーガレット嬢が気づくとややこしくなりそうだと、頭を抱えたくなった。


そんな時だったーーー


「っ!?王女殿下、王子殿下」


「ええ」


「分かっている」


俺の警戒を促す言葉に、2人は一瞬で真剣な表情に変わり、森の中層方面へと視線を向けた。


「・・・どうしたんです?」


俺達3人の雰囲気の変化に追い付けないでいるロベリアが、訝しげな表情を浮かべながら俺に問いかけてきた。


「魔物の群れが・・来る」


俺の呟きに、王女と王子以外は驚愕の表情を浮かべるのだった。

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