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騎士学院のイノベーション  作者: ハッタカ
第二章 王女襲来
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王族の視察 2

「学院生の諸君!私はヴェストニア王国第一王子、オースティン・ヴェルツ・ヴェストニアだ!」


 学院の講堂の壇上にて、大袈裟な身振りで自己紹介を行っているのは、この国の王位継承権第一位の王子だ。今年で20歳になる彼は、170センチ半ばを超える長身の美青年だ。王族の特徴である翡翠色の髪は耳まで掛かる程の長さで切りそろえられ、彼が演説をするとサラサラと靡いている。また、純白を基調としたナポレオンジャケットには、ふんだんに金糸の刺繍が施され、ひと目で高価なものだと分かる作りだ。


王家の視察については当日の朝に周知され、昼過ぎに到着した王子達が学院の生徒に対して言葉を伝えたいということで、急遽講堂に集められたのだ。


今までは食堂でチラホラと見るくらいだった上級生の姿も一同に介しており、壇上の王子達の姿に落ち着きをなくしている者もいるようだった。


「本日より1週間、この学院の運営や日常の様子を視察させてもらうが、生徒諸君の勉学に対する姿勢も見られたらと思っている!王族が居るからと緊張はせず、是非普段通りの姿を見せてもらいたい!」


『『『パチパチパチ!!!』』』


王子からの簡単な挨拶が済むと、講堂内は割れんばかりの拍手に包まれた。正直大した内容を話したわけでもないのだが、相手が王族、それもこのままいけば次期国王になる人物に対して下手な対応は出来ないという忖度が透けて見える。


「オースティン殿下、学院生徒を思いやる暖かなお言葉をありがとうございます。殿下のお言葉は生徒達にとっての良い励みになるでしょう。それでは次に、クリスティーナ殿下よりお言葉を賜ります」


壇上の王子が一歩下がると、司会進行を務めている副学院長から王女の紹介がなされた。壇上でうつむきがちに顔を伏せていた王女は、名前を呼ばれるとゆっくり顔を上げ、数歩前へと進み出た。


「ヴェストニア騎士学院の生徒の皆様、わたくしは第二王女のクリスティーナ・ヴェルツ・ヴェストニアです」


「「「おぉ・・・」」」


王女は淑女として洗練されたカーテシーを取りながら自己紹介をすると、講堂からどよめきが沸き起こった。


王女はまるで芸術的な絵画のように整った顔立ちをしており、王家特有の翡翠色をした艷やかなロングヘアをサイドテールにし、肩から前に下げている。紺色のドレスは派手過ぎず、王女の容貌と相まって、神秘的な魅力を醸し出す役割を担っているようだった。


その微笑は男性だけでなく、女性までをも虜にするような美貌らしく、生徒達はつい感嘆の声が漏れてしまったような雰囲気だった。


「今回の視察に当たってわたくし達が訪問した理由の一つは、この国の未来を担う皆様方の様子を見ておきたいと考えたからです」


王女が話し始めると、ざわついていた周囲は水を打ったように静まり返り、皆王女の言葉に集中して聞き入っているようだった。王族としての天賦の才能か、彼女はこの講堂内の雰囲気を既に掌握してしまっている。


「学院卒業後、多くの生徒の皆様は騎士として配属され、魔物を討伐すべく、危険な任務に就くでしょう。そして

実際の現場では、勉学を共にした御学友のみならず、既に騎士として経験を積んでいる諸先輩方とも肩を並べることになります。当然そこには、剣士の騎士も魔術師の騎士もいらっしゃいます」


「「「・・・・・・」」」


王女が何を言おうとしているのか、全ての生徒が固唾をのんで見守っていた。ただ話の方向性から、この学院が抱えている問題に切り込むような流れに、教師陣は顔色を悪くしている。


「騎士団においては、皆誰もが誇り高い騎士です!そこに剣士や魔術師という括りはありません!共に協力し、王国のため、家族のため、愛する人のために、どうか皆様、共に戦場を駆ける仲間の背中を守れる力を、この学院で身に付けて下さい」


王女が胸の前で両手を握り、祈りにも似た恰好で生徒に向かって語り掛けた。


一瞬の静寂の後・・・


「「「うおぉぉぉ!!クリスティーナ殿下万歳!!」」」


絶世の美少女である王女からのお願いは効果てきめんの様で、盛大な拍手とともに、王女に対する割れんばかりの歓声が講堂を包んだ。


そんな講堂の様子に、背後にいる王子は満足げな表情を浮かべており、歓声を浴びている当の王女は、満面の笑みを浮べながらその声に応えていた。



「改めまして、わたくしはクリスティーナと申します。学院滞在中の1週間、お二方にはよろしくお願いします」


「オースティンだ。よろしく頼むよ」


 講堂での王族の挨拶も終わり、大半の生徒は授業へと戻っていく中、俺とマーガレット嬢は学院の応接室で王子と王女の2人と顔合わせを行っていた。


当然俺は2人と面識があるのだが、お互いそんなことはおくびにも出さない態度で接している。


「両殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう。今日より1週間、両殿下にこの学院を案内する役を任ぜられました、アル・ストラウスと申します」


「・・同じく、マーガレット・ゼファーと申します」


王子と王女は応接用のソファーに腰掛け、俺とマーガレット嬢は片膝をついて、頭を垂れながら挨拶を行った。俺の挨拶の後にマーガレット嬢の言葉が微妙に遅れたのは、普段見せたことのない礼儀作法を披露したからか、それとも・・・


「ご丁寧にありがとうございます。このままでは話し難いので、どうぞお掛けになって下さい」


「「失礼します」」


王女が俺達にソファーへ座るように進めると、俺とマーガレット嬢は異口同音で声を発し、2人の対面に腰掛けた。


「さて、これからの予定を簡単に伝えておこう。何も四六時中2人に案内させるようなことはない。基本的には3日目からの授業の視察からになるが、それまでは時間が空いた時に少し学院の様子を聞くくらいだ」


ソファーに座ると、王子が今後の予定について説明を始めた。事前に聞いていた通りの内容で、特に驚くような話ではない。


わたくしとしては、生徒に混じって学生寮で寝泊まりもしてみたかったのですが、警備の都合でそれは叶いませんでした。せっかくですから、お友達を作ってパジャマパーティーをと思ったのですが、残念です」


場を和ますためか、王女は悪戯っぽい笑みを浮かべながらそんな事を言っていた。


「王女殿下であれば友人となりたい者は後を断ちませんでしょう。短い時間の中でも、心を許せる存在が現れるやもしれません」


王女の話しにマーガレット嬢は社交辞令のような返答を返すが、その言葉に王女は小首を傾げながら、柔らかな笑みを浮べて口を開いた。


「まぁ、ありがとうございます。でしたら先ず、この学院で優秀な成績を修めていらっしゃるお2人と親密になれると嬉しいですね」


「わ、私達とですか!?」


「・・・・・・」


王女の言葉に、マーガレット嬢は目を見開いて驚きを顕にした。俺はと言えば、何の目的でこんな発言をしたかの真意を見極めようと、何も言わずに王女の様子を観察する。


「はい。お2人共この王国の将来を担う優秀な方ですから」


「こ、光栄です」


マーガレット嬢は少々緊張した面持ちで受け答えしているが、王女はそれに構わず話を続ける。


「ではせっかくですから、明日の昼食をご一緒しませんか?」


「あ、明日ですか?・・・大変申し訳ありません。剣武術コースでは明日、騎士団の荷運びの補助に入るという実習がございまして・・・」


王女の申し出に、マーガレット嬢は心底申し訳無さそうに断りを入れる。そんな彼女の様子に、王女はほんの一瞬口角を上げると、俺の方に視線を向けてきた。


「そうですか・・・それは残念ですね。それではアル様のご予定はどうでしょうか?」


極めて自然に、しかし絶対に断れない誘いが俺の方へと来てしまった。王女のことだ、事前に剣武術コースの授業予定など知っていたはずだ。しかし、王女がマーガレット嬢の返答を残念がる様子に、少しの違和感も感じられなかった。


「喜んで、ご一緒させていただきます」


「まぁ、ありがとうございます!」


俺の返答に、王女は満面の笑みを浮かべる。そんな王女の様子に隣の王子は笑みを浮かべつつも、面白くなさそうな雰囲気を纏っていた。

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