過去
小説家になりたかった。
夢を夢であり続けさせることで大人になったつもりでいた。
小学校高学年の頃兄がしていた部活に興味を持ってしまった。
父はその気になって私を体験入部に連れていった。大人たちの会話の中、私の入部は決まったみたいだ。
最初は楽しかった。知らないことだらけで毎日が刺激的だった。競技人口も少ない部活だったので同級生は珍しがり、たくさん話しかけてきた。彼らは私に興味があるわけではないと知りつつも承認欲求は満たされた。
話は変わるが、部活を始めるずっと前から、いつからか覚えていないくらいずっと前から私は人の目ばかりを気にしていた。それでいて不器用だった。ああしなければよかった。あの時もしかしたらいや気持ちにさせたかも。毎日そう思いながらいざ誰かと会話するときには数時間前の後悔を忘れ自分を大きく見せなければ、私はすごいんだ。馬鹿にしていいような人じゃないのだ。そんな不安と義務感で強がり、虚勢をはって生きていた。そうしてまた後悔するのだ。
部活の話に戻そう。先ほど私は自分のことを不器用だと言ったが運動や勉強は平均以上は何も努力をしなくてもできる子供だった。
部活もその競技の大会に出れば県内でも強豪と言われている選手とも互角に争うことができたし時には賞をもらった。いわく弱小だった所属のチームではいろんな大人が父を褒めていた。父もまた不器用だったのだと思う。段々とできて当たり前そんな価値観を私に持つようになった。
ヤンキーが雨の中猫を拾って株が上がる。テストが毎回赤点の生徒が平均点を取って褒められる。期待値が低いほど達成する成果は低くて済む。
私は努力なしで平均以上ができる子供ではあったが格段努力が苦手だった。逃げ出したい。そんな思いが先行するのだ。しかし父の中で私の期待値はとても高いものになってしまった。ここで期待するような言葉を素直にかけてくれれば何か違ったのだろうか。父は私にお前なんかができるわけない。終わったな。兄弟でお前が最低だ。といった言葉ばかりを投げかけるのだ。そのくせ結果が出ないと家の物を壊したりまた人格を否定したりする。私は私を守るために常に努力が必要な状況になった。
中学校に入学して私は小学校とは別の部活に入ろうと思っていた。これ以上父の期待に応え続けるのは辛い。
しかし無駄だった。小学校のコーチは中学校へも度々コーチとして出向いていたためコーチを通じて父が勝手に入部届を提出していたのだ。




