この岩に刺さった剣を抜いた者を次の王様とする!
“この岩に刺さった剣を抜いた者を次の王様とする!”
このように書かれた立て札と、岩に突き刺さった剣が男の目の前に鎮座していた。
刃の部分が見えないほどにしっかりと刺さっており、柄の部分を残してほぼ刺さっている状態だ。剣自身が「抜いてみろよ」といわんばかりの横柄な態度を示しているかのようであった。
「こんなの、抜けんのか?」
岩に刺さった剣をまじまじと見つめ、男は首を傾げた。
男は行商人で、知己から仕入れて欲しいものがあるからと、この国を始めて訪れた。そして、この剣と出会った。
剣を抜いた者に王位を譲るなど、この国の王様は余程の変人なのだろうと勝手に解釈した。
「やあやあ、兄さん、挑戦してみるかい?」
首を傾げる男に兵士が話しかけてきた。
「兵士さんよ、この剣は本当に抜けるんだろうな? あんまりにも深々とぶっ刺さっている。柄以外は偽物で、岩と一体化している、なんてことはないだろうね?」
「それはないね。ちゃんと抜ける剣だよ」
そう言うと、兵士はおもむろに岩に刺さった剣を掴み、引っ張り上げようとした。顔を真っ赤にするほど力を入れて引っ張ると、ほんの僅かだが動いた。爪先ほどの微々たるものだが、確かに剣は動いた。
「だはぁ~! やっぱ重いわ、こりゃ。私も結構鍛えているんだが、これが限界だわ」
兵士は手をブラブラさせて解し、それから手ぬぐいで顔から垂れている汗をぬぐった。
「まあ、動くのは分かった。でも、重すぎて抜けないんじゃないか?」
男は剣の柄を指で突き、怪訝な瞳を兵士に向けた。
「そんなことはないよ。この国の今の王様も、この剣を抜いて、その前の王様から王位を譲り受けたんですから」
「へ~。今の王様もそうなんだ。余程の怪力自慢か」
「そうでもないよ。体格は兄さんとそれ程大差ないね」
「それで抜いたんなら、大したもんだ」
男は素直に感心した。先程の兵士の具合を見る限りは、そうとうな重さであろうこの剣を、自分と同じくらいの人物が抜いたと知ったからだ。
「王様に会ってみるかい? お城に行けば、会えると思うよ。剣を抜いた当時のままの姿だし、抜くための参考になるかもよ」
「・・・ん? 当時? 今の王様が剣を抜いたのっていつの話だい?」
「たしか、五十年位前だったと思う」
兵士の回答を聞いて、男は絶句した。もし話が本当なら、五十年も同じ姿のまま過ごしたことになるからだ。とてもではないが信じられなかった。
「ああ、信じられないの無理ないさ。でもね、この国の王様は精霊の祝福を受け、不老不死の力を授かるんだ。だから、次に誰かが剣が抜くまで、ずっと体を保っていられるんだ」
「そうなのか! それはすごい!」
男は興奮した。おとぎ話の中でしか聞いたことのない魔法的な力。それが目の前の剣を抜きさえすれば、手に入ると聞かされた。やはりますます挑戦したくなってきた。
「それだけじゃないぞ。即位式には力を授ける精霊がやって来て、不老不死とは別に、なんでも一つだけ願い事を叶えてくれるんだそうだ」
「へぇ~、そうなんだ。なら、今の王様はどんな願い事を?」
「それは知らない。即位式に立ち会っていた俺の爺さんから聞いた話だと、天から降りてきた精霊に耳打ちして、誰にも聞かれないように願い事を言ったんだとさ。そのことは誰が尋ねても答えてくれないから、謎のままだよ」
気になる話ではあるが、人に知られたくない願い事はいくらでも思い浮かべることができる。妙な病気を治せだとか、歪んだ性癖をまともにしたいだとか、頭髪を復活させろだとか、色々とある。男も内緒で叶えてみたい願いが一つ二つは思い浮かんだ。
「ああ、でも、この剣に関わる決まり事にだけは干渉してはいけないって事にはなってるね」
「となると、その願い事とやらで、“この岩に刺さった剣を抜いた者を次の王様とする!”という決まり事を消すことはできないのか」
「そうなるね。それだと、剣を抜いた人がずっと王様ってことになるし」
確かにそれでは誰も挑戦しなくなる。見返りや報酬があるからこそ、人は困難な道を選び、突き進むのだ。王位と不老不死、それが手に入るからこそ、難題に頭を捻るのだ。
「おらぁ、どけどけぇ!」
物思いに耽っていると、男と兵士を押しのけて、一人の大男が岩の剣の前に進み出た。
かなりの長身で相当鍛え抜かれている体が見えた。筋骨隆々とはまさにこれだ、といわんばかりの偉丈夫だ。
「見てろよ、お前ら! お前らが証人だ! 俺が剣を抜いて、王様になってやるぜ!」
腕をバキバキ鳴らした後、男は何度か深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、それから柄を握った。
「うおりゃぁぁぁ!」
大男の声に合わせて飛び散る汗、膨らむ筋肉、そして、動き出す剣。
「おお!?」
「これはいけるか!?」
見ている男も兵士も、いつの間にか握り拳を作り出し、徐々に持ち上がる剣を見つめ、なおも絶叫する大男に声援を送った。
だが、それも無駄に終わった。
大男はたしかに剣を動かし、高く持ち上げた。現在、大男は天に向かって万歳しているかのように、その手を掲げている状態だ。
だが、剣は抜けない。刃の部分が恐ろしく長く、まだ先端が見えないほどに長かったんだ。
「な、なんじゃぁこりゃぁ!?」
大男の叫びも無理なかった。いけたと思ったのに、剣が長すぎて失敗。持ち上がろうとも、剣先はまだ岩の中。これではとても“抜けた”という判定は出せない。
「なっが!」
「てか、この剣って、こういう感じになってたんだ」
見物していた男も兵士も呆れ返った。目の前にいる現在の挑戦者は、かなりの長身だ。それが万歳するくらいにまで腕を上げているにもかかわらず、岩から抜けきってないのだ。
「ぐぅぅぅ、も、もうダメだ!」
大男はとうとう耐えきれなくなって剣から手を放した。すると、せっかく持ち上がった剣がまた岩へと吸い込まれるかのように刺さっていき、元の状態に戻ってしまった。
「やってられっか! どうあがいても、抜けないじゃねえか、この剣!」
大男は怒りを剣にぶつけ、不敵な笑みを浮かべていそうな剣の柄を蹴っ飛ばし、その場から消えてしまった。
妙な静寂だけがその場に残り、男と兵士は視線を合わせた。
「あの身長で抜けないとなると、相当長いな、あの剣」
「だね。私もここの見張りを任されて三年くらいになるが、あそこまで持ち上げた奴は初めてだ。それでも抜けない。本当に今の王様はどうやって抜いたんだ!?」
男も兵士も腕を組み、人間を嘲笑う突き刺さった剣を睨みつけた。
「人の力では無理なのか・・・? 人の力、人の力・・・。あ、そうだ!」
男は何かを閃いたのか、パンと手を叩いた。
「人の力で無理なら、道具を使えばいいじゃないか!」
「え、それっていいのか?」
「兵士さんよ、この剣に関する決まり事はあるのかい?」
「あるのは、あくまで“この岩に刺さった剣を抜いた者を次の王様とする!”という一言だけだよ。他の決まりは特にない。・・・ああ、そういうことか!」
「そう。規則がないなら、禁じられていないという事。道具を使っても問題ない!」
禁止されてないなら使用可能。道具に頼ろうとも、“抜ければ”なんでも許される。むしろ、怪力よりも、頭の方が試される王様の試験なのだ。
「よし、そうと決まれば、作るべきものは“アレ”だな」
「お、何かいい道具があるのかい?」
「ちょっと、町まで買い物に行ってくる!」
男は兵士に別れを告げ、町の方へと駆けていった。
***
翌日、剣の刺さった岩の横には、櫓が組み上がっていた。
「兄さん、やるねぇ」
「実家が木材加工の工房やっててね。これくらいならなんとかなるさ。さて、あとは」
男は櫓に更に手を加え、いくつかの“滑車”を取り付けた。
「ヘッヘッ、重たい物を持ち上げるなら、やっぱりこれだろ」
「なるほど。それなら持ち上がるかもしれん」
兵士は男の発想に素直に感心した。剣を抜くならその身で、という思い込みを打破し、櫓を組み立て滑車を利用し、剣を抜いてしまおうなど、常人の発想ではない。
王様になるような人はこういう考えもするんだ、と兵士は作業を続ける男を羨望の目で見つめた。
「っし、こんなもんか。あとは・・・」
男は櫓から下りてくると、剣の柄にしっかりと縄を括り付けた。
「兵士さん、一緒に上まで登ってくれや」
「お安い御用だ」
二人で櫓の上に立ち、そして、縄の反対側をしっかりと握った。
「あとは剣の長さが、想定範囲を超えてなければいける!」
「さすがに大丈夫でしょう」
「さあね。神か精霊か、とにかくろくでもない悪戯をやるもんだ。んじゃ、行きますよ」
「おうさ!」
男は縄をしっかり握り、兵士は男の肩にしがみ付いた。
そして、櫓から飛び降りた。二人分の体重が縄にかかり、滑車によって増幅され、大きな上向きの力が剣に伝わった。
そして、剣は動き出した。スルリスルリと抜けていき、剣が抜けた分だけ、二人も地面に向かって落ちていく。
交差する二人と、恐ろしく長い剣。だが、物事には何にも限りと言う物があった。
そう、地面に降り立つと同時に、剣もまた岩から抜け出し、先端部を二人の前に晒したのだ。
それは本当に長い長い剣だった。大人の身長二人分はあろうかという長さだった。
だが、それもとうとうすべてをさらけ出すこととなった。一人の旅商人の機転によって、実に五十年ぶりに人々の前に全容を見せつけた。
「「抜けたぁぁぁ!」」
男と兵士の歓喜の声は周囲に響き渡った。
***
思いがけず王様になることとなった男は、喜びに心を満たしていた。
男が剣を抜いたことの証人となった兵士は、ただちに城に戻り、現国王に報告してくるから待っていてくれと言って城に向かって駆けていった。
しばし待つこと、先程の兵士が戻って来た。それも豪華な“輿”まで引き連れていた。四人で担ぐ大きくて豪華な輿だ。
「さあさあ、“国王陛下”よ! どうぞこちらにお乗りください」
「おお、苦しゅうない、苦しゅうないぞ」
口調も変え、すっかり王様気分だ。そして、輿に乗って、その上にある手の込んだ細工物が彫り込まれた椅子に腰かけた。
座ったのを確認すると、四人の従卒が輿を持ち上げ、城へ向かって進み始めた。
城下町まで到着すると、町の大通りには人々が押しかけ、新しい王様を一目見ようとズラリと並んでいた。歓声が飛び交う中、輿に揺られて突き進む男は、本当に王様になったんだと実感した。
「ところで、兵士君、これからどこに行くのだっけ?」
「もちろん、城に向かいます。現国王に会っていただき、そこで継承の儀を執り行います。それが終わって、王冠を頂いた時こそ、正式な新国王になるというわけです」
兵士の説明に納得し、男は頷いた。
そりゃあ、王様になるのであるから、そうした儀式は必要だなと納得した。
沿道に並ぶ人々に愉快に手を振りながら輿に揺られていると、とうとうお城までやって来た。大きな門をくぐり、城壁の内側に入ると、そこにはこれまたズラリと兵士や宮仕え達が居並び、新たなる国王を出迎えてくれた。
その更に奥には、豪華な服に身を包み、王冠を頭に乗せる男が待っていた。両手を広げ、新たなる国王になるべき男に歓迎の意を示した。
「ようこそお越しくだされた、新国王よ」
「歓迎痛み入ります、旧国王よ」
二人はしっかりと抱き合い、いよいよ継承の儀式が始まると互いに覚悟を決めた。
そして、天からまばゆい光が放たれ、一つの光体が下りてきた。眩しくて正体は分からないが、羽の生えた光の玉、そう男には視認できた。
「おお、これが話に聞いていた精霊か」
「そうだよ~、新国王。では、継承の儀、始めちゃうよ~」
精霊は近くにいた兵士の頭に乗っかると、その体を乗っ取ってしまった。そして、どこからともなく先程抜いた長大なる剣を召喚し、それを握り締めた。
よく見ると、旧国王は両脇を抱えられており、精霊が剣を握った段階で跪かされ、そして、前のめりの姿勢で固定された。
そう、これは“斬首”のための姿勢だ。新国王は目を丸くして驚いた。
「精霊殿! これはどういうことですか!?」
「新しい国王が誕生したんだから、旧国王はいらなくなった。だからあの世に出荷よ~」
「えええええええええええええ」
まさかの斬首。新国王が誕生したら、用済みの旧国王は処分される。あまりの状況変化に、新国王となった男は絶叫した。
しかし、別の意味でも驚いた。なにしろ、旧国王は一切の抵抗をするでもなく、まるで死を望んでいるかのように従順に首を差し出そうとしていたからだ。
その顔もまた穏やかで、安堵と解放感に満ちていた。
「いいんですか、旧国王!?」
「いいもなにも、今となってはこれこそ望みだ、新国王よ」
跪き、頭を垂れ、剣が振り下ろされる瞬間を待ち望む。旧国王からはそんな気配が漂っていた。
「新国王よ、お前も剣を引き抜く報酬に惹かれたからこそ、剣を引き抜いたのであろう? 王の地位と、不老不死とに。ああ、まったくもって素晴らしい報酬だとも。富貴な暮らしを延々続けられるのだ。誰しもがそう思うはずだ」
「ええっと、つまり、旧国王は、それらに飽きた、と?」
「時は流れるからこそ、過ぎ去ったものを惜しむ。惜しむからこそ止めてしまいたくなる。しかし、止まってしまえば、今度は流れる姿こそ愛おしく感じるのだ。凍り付いた世界よりも、温かみのある流れる世界をこそ、求めるようになる」
旧国王は首を回し、新国王を見つめた。これから首を切り落とされるというのに、まるで聖者のごとき悟り切った顔をしていた。
「国王になった直後は、君は王の位を守るために行動するだろう。折角手に入れた物を手放さないようにするためにな。だが、いずれ後悔する。親しい人達に置いてきぼりにされることにな。だから、一つの願い事は、あまり欲の突っ張った事を願わぬ方がよいぞ。おかげで、次の国王が出てくるのに、五十年もかかってしまった」
「忠告痛み入ります」
そして、会話はそれまでと言わんばかりに、精霊は剣を振り下ろした。
先程の重くて長い剣を、まるで棒切れでも振り回すかのように、軽々と振り下ろした。
旧国王の首が斬り落とされ、ボトリと歪な球体が地面へと転がり落ちた。切り口からは血が噴き出し、頭部と、それに乗っかっていた王冠が血飛沫、血だまりに沈んだ。
「おっとっと~。こいつが汚れては台無しだ~」
精霊は血に染まった王冠を拾い上げると、手にした布で汚れを奇麗に拭った。
そして、丁寧に磨き上げられ、奇麗になったのを確認すると、精霊は新国王となった男の頭に王冠を載せた。
「はい、これにて儀式終了~。新しい国王の誕生だ~」
精霊の呼び掛けに、周囲に控えていた兵士や宮仕え達も拍手と歓声でそれを歓迎した。
「さて、残るは、お願い事だね~。君の望みは何だい?」
「なんでもいいんだな?」
「聞いたと思うけど、岩に刺さった剣の約束事に干渉するような内容でなければね~」
「ならば、望むべきはただ一つ」
新国王は精霊を指さし、そして、叫んだ
「お前を消す方法を!」
「ブッブ~、それ、ダメ~。僕が消えちゃったら、剣そのものもなくなっちゃうから、剣の約束事に干渉することと同義だよ。だから、ダメ~」
精霊は手を十字で交差させ、願い事の受理を拒絶した。
「しかし、あれだね~。そこの首をはねられた奴と同じ事を言うね~」
「あ、その人もそう願ったんだ」
「そりゃあ、いずれ首を跳ね飛ばされると分かっている相手が目の前にいるのなら、消してしまいたくなる気持ちも分からなくもないよ~」
「ならば、別の方法を・・・」
新国王は腕を組み、しばし考え込んだ。そして、結論を得た。
精霊を手招きして近くに呼び寄せ、耳打ちした。
「この世から、“滑車”を消してくれ。そうすれば、あの剣は抜けなくなる」
「うほ~、そうきたか~」
「ダメかね?」
「いいよ~。別に剣を抜くための方法が一つ消えるだけで、剣自体が抜けなくなるわけじゃないから~」
精霊はパチンと指を鳴らした。そして、世界からは“滑車”が消えてなくなった。
「しかし、考えることは一緒だね~。前の王様も、君と同じことを願ったんだよ~。まあ、剣の抜き方がバレてしまった以上、それを消しておかないと、すぐに次の国王が現れちゃうから、当然と言えば当然だけどね~」
「当たり前だよな。お前を消せないなら、剣を抜く方法を消しておくのは当然の発想だ」
「ちなみにね~。前の国王は、巨大なシーソーを作って、それで引っこ抜いたんだよ~」
「シーソー? なんだそれは?」
「・・・ああ、この世界じゃ、シーソーの存在は消してあるから、君には分からないかな~」
話はそれまでとばかりに精霊は乗っ取っていた兵士から分離し、今度は首を切り落とした旧国王に乗り移った。
首のない死体が立ち上がり、足元に転がっている自分の首を拾い上げた。まるでおとぎ話に出てくる首無騎士のようだ。
「それじゃあ、儀式も願い事も終わったし、僕は帰るね~。次に会うのは何年後かになるかは分からないけど、そのうち会えるかな~」
「できれば、二度と会いたくはないがな」
「そうだね~。次に会う時は、君が死ぬ時だもんね~」
片手に首を抱え、もう片方の手で名残惜しそうに手を振る精霊。なお、切り落とした首が笑顔を作っているところが不気味過ぎた。
「ああ、言い忘れていたな~。その剣、放っておいても、一年後には勝手に岩に戻って、自然と突き刺さるからね~。だから、最低一年は王様やっていられるよ~。富貴の味を堪能するといいよ~」
「ありがとう、精霊殿。その一年は有効に利用させてもらおう」
「フフフ~、やっぱり同じだな~。こいつも別れ際に、同じ事を最後に言ったんだ~」
「ならば、そいつを超えねば、自分も同じ末路を辿ってしまうか」
「どうだろうね~。剣を抜くための方法が、この世界からどんどん消えていってるし~。あるいは、君で最後の代替わりになるかもしれないよ~」
「だといいのだがな」
「んじゃね~。会いたくなっても会えないけど、また、会える日を楽しみにしているよ~」
精霊がまばゆく輝き出すと、天に向かってそれが伸びていき、収まった時には、地面の血だまりも含めて、何もかもがなくなっていた。
残された男は、新たなる国王として、まずはやっておかねばならないことがあった。
後ろを振り向き、居並ぶ者達に叫んだ。
「大臣! 大臣はいるかね!?」
すると、一人の男が進み出てきて、新国王に頭を下げた。
「お呼びにございますか、陛下」
「おお、君が大臣か。早速だが、一つ急ぎでやってもらいたい仕事がある」
「はい、陛下、いかなる御用向きでありましょうか?」
尋ねる大臣にたいして、新国王は地面に転がっている剣を指差した。すべての元凶たる、岩に突き刺さっていた長くて重い剣だ。
「腕のいい鍛冶屋を探してきてくれ。この剣を更に長く、更に重たくする。そうすれば、抜けなくなって次の王様は現れまいて!」
~ 終 ~
タイトルからお察しの方もおされるでしょうが、『アーサー王伝説』の岩に刺さりし王権の象徴たる宝剣“エクスカリバー”をモチーフに、ひねた性格の自分風に書いた短編でございました。
結局、不老不死って、精神構造も不老不死に適した者だけが使いこなせるんだと思ってます。人間じゃ、絶対無理なのかもしれません。
それこそ死なない体なんぞ手に入れようものなら、それこそ“一生かけて”後悔するでしょうね。
では、短い作品でしたが、閲覧していただいて感謝いたします。
お時間がありましたら、自分の他作品も眺めていってください。
皆様、ありがとうございました~。
(∩´∀`)∩
気に入っていただけたなら、↓にありますいいねボタンをポチっとしていただくか、☆の評価を押していってください。
感想等も大歓迎でございます。
ヾ(*´∀`*)ノ