表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八百万 怨念  作者: マー・TY
64/70

62.乞う話

 爆発の衝撃で十海人は吹き飛ばされ、踊り場に転がる。

 辺りに土煙が立ち込む。

 そして、瓦礫と共に周囲に生暖かいものが飛び散った。

 十海人は鼻に付いたそれを拭うと、慌てて立ち上がった。


「どっ、どうなってるんだ!?爆発しただと!?お、おいぃいいいいいいい!!」


 嫌な予感がし、覚束ない足取りで階段を上がる。

 焦げ臭さと共に、別の臭いも嗅ぎ取れた。

 爆発後の廊下はさらに荒れていた。

 壁の一部が吹き飛んでおり、元々爆弾があったと見られる場所には穴が空いている。

 

「ゆっ…、床が抜けている……!?なんてモンが……!!………ッ!!!?」


 土煙が晴れていくにつれ、見たくないものの姿が顕になった。

 首筋に冷たい汗が伝う。

 そこに、知基が仰向けになって倒れていた。


「うっ……うわぁあああアアアア!!!!」


 十海人はその姿を見て悲鳴を上げ、尻もちを着いた。

 知基は見ていられない姿になっていた。

 全身土埃を被っており、肌から一部血が滲んでいる。

 目を見開き、口を金魚のようにパクパクとさせており、そこに鼻血が溢れていく。

 そして何より、爆発の影響なのか、右足が無くなっていた。

 折れた骨が露出しており、今でも血がドクドクと流れ出ている。

 

「ヒッ…ヒィイイイイ!!何だよ!?何なんだよ!?おっ、おいぃイイイイ!!死んでるのか!!?」


 「うるさいよ」という冷たい言葉も、もう期待できそうにない。

 すぐにここから離れたかったが、全身震えて体が言うことを聞かない。

 もしも自分が先に進んでいたら、自分がこうなっていたのかもしれない。

 そう思うと、恐くて恐くて仕方が無かった。


「あ〜あ。下手に避けようとするから……」


 呆れ返ったような声が聞こえた。

 階段を降りる音が鳴り響き、やがて恭也が姿を現した。


「だから楽に逝けないんだよ。ねぇ、蛇石君?」


「ヒィイイイ!!!!」


 感情の籠らない目を向けられ、十海人は再び悲鳴を上げた。

 恭也は手の中でナイフを回しながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 体の震えがさらに増す。

 迫ってくる恭也の姿が、大鎌を持った死神に見えた。

 早く逃げろと、脳が命令しているのは解る。

 しかし、逃げたくても動けない。

 体の震えが増しており、尻餅を着いたまま、後退ることしかできなかった。

 そうしている間に、あっと言う間に恭也に追いつかれてしまった。


「捕まえた」


「まっ……待って!待ってくれ!!」


「……何?」


 今にもナイフを振り下ろさんとする恭也を必死に止めた。

 助かるために、十海人はなんとか交渉を試みる。

 手始めに、知基を指差した。


「あっ……あいつ、まだ生きてるぞ!!……と、トドメ刺さなくていいのか!!?この隙に、に……逃げるぞ!!?」


「は?……あぁ、野坂君か。いいよ別に。飛んだ足の痛みか何かのショックで意識無さそうだし、そもそもあの足じゃ逃げられないだろうし。君を殺してから殺るよ」


 知基は再びナイフをチラつかせた。


「まっ、待て!待てぇえええええエエエエエ!!!」


「まだ何かあるの?」


「こ、この俺様も協力しよう!!残った奴ら、全部俺様が殺してやる!!仲間になる!!俺様は使えるぞ!!!だから、殺さないでくれ!!!」


 ここに来て、十海人は協力を申し出た。

 自分の命を守るため、里桜や知基を見捨てる選択肢を取ったのだ。


「蛇石君」


「お、おぅ!何だ!?この俺様に何なりと――――――!!」


「もう遅いよ」


 恭也は冷たくそう言放つと、十海人の首を思いっきり掻っ切った。

 血飛沫が上がり、床を、壁を、天井を、恭也の体の濡らしていく。


「ぐっ……げごっ……」


 十海人は悲鳴すら上げる余裕すらなく、潰れたカエルのようなうめき声を上げ、絶命した。

 切られた首からは、未だに鮮血が流れ出ていた。

 

「もう誰もいらないんだよ」


 恭也はそう呟きつつ、顔に掛かった血を拭う。

 もとよりここで全員殺すつもりであるため、今更味方はもう必要ない。

 そもそも十海人のような何の知識や力も無い臆病者はいらないと、心の中で毒づいた。


「さて……と。待たせたね、野坂君……ッ!!?」


 ようやく知基にトドメを刺そうと振り返ったところで、恭也は目を見開いた。

 知基の周囲を、黒い煙が漂い、渦を巻いていた。


「………万桜?」


 恭也の呼びかけに応えたのだろうか。

 黒い煙は量を増し、知基の体を覆っていく。

 それから、どんどん集まっていき、球体状になったかと思うと、急に弾けて上の階へと流れ出て行った。

 驚くことに、そこに居た筈の知基の姿は無くなっていた。


「万桜!?万桜だよね!?待って!!」


 恭也は慌てて、黒い煙が流れて行った方へと駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ