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八百万 怨念  作者: マー・TY
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52.捜索する話

「里桜、ちょっと休まへん?」


「うん、そうだね。ちょっと休むか」


 学級閉鎖になっていてもなくても今日は休日。

 平日よりも気持ち的に動きやすくなっていた。

 時刻は13時。

 里桜と朱莉は、公園のベンチに座った。

 2人ともコンビニで買ったおにぎりを取り出し、袋を開ける。


「……ていうかもう、心当たりがある場所は無い気がする」


「さよか。万桜はいったいどこにおるんやろうな?」


 里桜と朱莉は万桜を捜していた。

 万桜と話したい。

 その願いを叶えるために里桜は動いており、朱莉もそれに協力している。

 先程まで2人で、万桜と縁がありそうな場所を廻っていた。


「万桜とあんまり遊びに行かへんかったの?」


「そうだね。アタシはいつでも行けたんだけど、万桜にはそんな理由が無くてさ。ずっと勉強してなきゃいけなかったみたいで……。夜にこの公園のブランコで話すくらいだったなぁ……」


 里桜の視線は自然とブランコの方へと向けられた。

 今でも当時の情景が目に浮かぶ。


「確かに、勉強ばかりしてる娘やったよね。ウチも何度か話しかけたことあるけど、それどころじゃなさそうやったから、いつの頃かやめちゃってたな」


「……もっと、強引にでも万桜のこと知るべきだった。好きだからっていう理由で勉強してるって言ってたけど、本当は強いられてたんだ。お父さんに暴力を振るわれるから……」


「万桜は毎回、命懸けでテストに臨んでたんやね……」


 テスト期間を面倒だと思う生徒は多い。

 しかし、補習等を受ける方がより面倒なため、不真面目な生徒もしぶしぶ勉強をするのだ。

 学校生活のほとんどを勉強に費やしている万桜には感心していたが、それが虐待によるものだと知った時、朱莉は心を痛めた。

 何もできなかったことへの罪悪感もあった。


「せやけど、せやかて……。今万桜がやっとることは赦せたものやない。里桜、絶対万桜見つけんで!ウチも言いたいことあるさけ!」


「うっ、うん……。そうだね」


 空元気なのか、朱莉は立ち上がって捲し立てた。

 彼女なりにこの重たい空気を壊したかったのだろう。

 食事を終え、2人は公園を出た。

 

「ほんまに他に万桜が居そうな場所思い浮かばへんの?」

 

「う~ん……。学校も家も塾も廻ったよね。後は…………あっ、あそこは?」


「あそこ?」


「幽霊団地」


「あ~……」


 行くところがあるとすれば、残すは幽霊団地。

 徹からの連絡により、本来ならば明日の21時に向かうことになっている。

 しかしその内容の怪しさもあり、2人とも警戒していた。


「確かにそこ行ったら絶対何かあるやろうな。……やけど絶対怪しいんよなぁ」


「でももうそこくらいしか思いつかない……」


「ウチも手助けする言うたけど、流石に危ないんやないかな?徹も嘘言うとるかもしれへんし。それに幽霊団地って廃墟らしいやん。浮浪者とか野犬とかおったらヤバいで」


「う~ん……それもあるかぁ……。じゃあ、やっぱり明日も行かないの?」


「そりゃ行かへんよ。里桜もやめた方がええんちゃう?」


「そうか……。そうだね…………」


 朱莉は心配してくれるものの、里桜は妙に幽霊団地のことが気になっていた。

 確かに危険かもしれないが、もしかしたら万桜がそこに居るかもしれない。

 朱莉には内緒で行こうか。

 そんな考えが頭に浮かんだ時、背後から車が近づいていきた。

 白色の車はゆっくりと里桜と朱莉の傍に寄る。


「……?」


「……何や?」


 何事かと2人が車から距離を取ろうとした瞬間、後部座席の方の窓が開いた。

 そこからスプレー缶を向けられ、一気に中のガスが噴出された。


「ッ!!?」


「げほっ!なっ……何や!?」


 突然吹きかけられたガスに、2人は苦しめられた。

 咳が止まらず、目も開けていられない。

 2人の顔が涙と鼻水でぐしょぐしょになっている間に、一人の男が車から降りてきた。

 全身黒色で揃えており、フードを被っているため顔はよく見えない。

 ただ、その手には鉄パイプが握られていた。


「眠ってもらうよ。九重さん」


 男はそう言うと、鉄パイプで里桜の後頭部を殴りつけた。

 

「がっ─────!」


 何が起こっているのか全く解らないまま、里桜はその場に倒れる。

 その音に朱莉が反応する。


「里桜!?げほっ!……り、里桜!どないしたん!?げほっげほっ!」


「汚いなぁ。唾飛ばさないでよ」


 男は苛ついた調子で呟くと、朱莉の腹部を蹴飛ばした。

 尻餅を着いた朱莉は、見えない相手に向かって怒鳴る。


「ぐっ……!誰!?…げほっ!うえっ……誰なん!?里桜に何してん!?」


「無様だなぁ」


 男はそうポツリと呟くと、気を失っている里桜の体を起こして車に乗せた。

 男自身も乗り込むと、後部座席が閉まった。

 苦しそうに咳き込む朱莉を残し、車は走り去った。

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