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八百万 怨念  作者: マー・TY
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51.脅迫する話

「……何があったんでしょうか」


 午前0時を回った頃。

 雪村は休憩室で頭を捻っていた。

 今日の里桜と朱莉とのやり取りで決まった、各生徒への御守りの配布。

 しかしその過程で、晶子、乃愛、徹、恭也の4人が行方不明になっていることが解った。


「万桜さんの仕業なのでしょうか?だとしたら、早めに対処しなければ……。……それとも、あの件が関係している?」


 万桜の件の後、朱莉が持ち出してきた話の内容を思い出す。

 徹からの、明日の21時に幽霊団地に来てほしいという旨のメッセージ。

 送り主の徹が行方不明になっていることで、より怪しく思えた。


「幽霊団地……ですか……」


 雪村は腕時計を見て、難しそうな顔をした。




 翌朝7時。

 熟睡していた華絵を起こしたのは、スマホのアラームではなく着信音だった。


「んっ……何よ………?」


 機嫌の悪そうな声で呟く。

 眠い目を擦り、毛布から体を出した後、通話ボタンを押した。


「もしもし?」


『おはよう白川さん。もしかして寝てた?』


「アンタ誰よ?」


『やだなぁ。恭也だよ。同じクラスの矢野口恭也』


 スマホ越しで聞こえる恭也の声は、謎に明るかった。

 その声が華絵の沸点を刺激する。


「恭也ァ?何でアンタが掛けてくんのよ?キモいんだけど」


『キモいって酷いなぁ。僕はさ、君に見せたいものがあるから掛けただけなんだけどな』


「見せたいもの?何よそれ?」


『今LINEで送るよ』

 

 そう言われてから、早速恭也からLINEで画像が送られた旨の通知が来た。

 急に気持ち悪いと思いつつも、華絵はその通知をタップする。

 それからすぐに、画面が恭也との個人LINEへと切り替わった。


「はっ……?」


 そこに表示されていたのは、暗い部屋で晶子と乃愛が手足を縛られた状態で床に転がされている写真だった。

 気を失っているのか、2人とも目を閉じている。

 しかし、乃愛の方は何故か耳元に血の痕があった。

 いつも連んでいる2人のこの姿に、華絵は言葉を出せなかった。

 一気に眠気が吹き飛んだ。


『驚いた?そうだよねぇ~。お友達が知らない場所で縛られてるんだもんね~』


「……2人に何したのよ?ていうかこれ、アンタの仕業なの!?乃愛は血が出てるけど、死んでないでしょうね!?」


『質問攻めやめてくれない?順番に話すからさ。まずこの2人は誘拐させてもらったよ。もちろん僕がやったことだよ。まぁ、僕が攫ったのは栗山さんの方で、明利さんは僕の協力者に頼んだんだけどね。明利さんはちゃんと呼吸してるから大丈夫。命に別状は無いよ』


 変わらぬ調子で恭也は丁寧に説明をする。

 ドラマの台本でも読んでいるかのようだった。


『他に質問はある?』


「アンタ……頭おかしいんじゃないの?晶子と乃愛を誘拐して何がしたいのよ!?」


『明日の21時に幽霊団地に来てほしいだけだよ。だって、こうでもしないと君来ないじゃん』


「……今までの全部、アンタの仕業なわけ?」


『違うよ。全部万桜が望んだことだよ』


「万桜が……?ふざけたこと言ってんじゃないわよ!」


『は?ふざけてないけど?』


 急に恭也の声色が変わった。

 少し低めになり、明らかに苛立っているのが解る。


『万桜は君達みたいな馬鹿が能天気に生きてるのが気に入らないんだよ。憎くて憎くて仕方ないんだよ。だから君達を蹂躙して殺すことにしたんだよ徹底的にね。僕はそれを手助けしてるんだ。ちなみに、爆破事件の犯人は僕だよ。教室に居た奴ら一掃できて良かったよ』


「あれ、アンタの仕業だったの?頭おかしいんじゃない?どうやって万桜と繋がってんのよ?」


『愛だよ』


「……は?」


 いよいよ華絵は、恭也のことを理解できなくなってきていた。

 その意味不明な解答に、つい間抜けな声が漏れた。


『こうして僕達が繋がっていられるのも愛の力なんだよ。僕は万桜を愛してる。万桜のためだったら何だってできる。万桜だって、僕のことを信頼してくれているんだ。これが終わったら、僕達は…………フフ、フフフフフ……』


「くっ……狂ってる……。あいつはもう死んだじゃない!」


『そうだね。でも僕は万桜の声を聞ける。触れ合える。ちゃんと愛し合えるんだよ』


「何なのよそれ!?」


『君達、万桜が生きてた頃、いっぱい嫌がらせしてたよね?忘れたとは言わせない。恍けてもいいよ。ちゃんと君達の記憶に残ってるだろうし』


「ッ!!?」


『まぁでも、リーダー格の君の態度によっては赦してあげるよ。誘拐した2人も解放してあげる』


「……何をしたらいいの?」


『そう来なくっちゃ』


 口調が元に戻った恭也は、華絵にある指示をした。

 華絵は緊張で強張る。


「………アンタの犯罪に………私も、協力しろって?」


『そういうこと。まぁ、別に断ってもいいんだよ。そしたら栗山さんと明利さんを殺すだけだから。それと、このことを警察に言っても殺すからね。すぐ解るんだから』


「………」


『まぁでも、考える時間くらいあげるよ。正午までには決めてね。それじゃあ、良い返事期待してるよ』


 恭也はそこまで言うと、一方的に通話を切った。

 華絵はベッドの上で、震えることしかできなかった。

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