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八百万 怨念  作者: マー・TY
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42.信じられない話

「すみません里桜さん、お待たせいたしました」


 場所は警察署。

 待合室の椅子に座っていた里桜に、書類を持った雪村が声を掛けた。


「いや、そこまで待ってないです」


「そうでしたか。……それでは、こちらへ」


 雪村は里桜を机と椅子がある個室へと導いた。

 里桜を座らせると、雪村も向かい側に座る。


「度々すみません。事情聴取、もううんざりですよね」


「いや、そうは思ってないです。寧ろ話したいと思ってたところなんで……」


「そうですか。なら、始めましょう」


 秀一が飛び降りた後、知基の連絡によって警察が到着した。

 警察の行動は早く、すぐに現場での捜査が始まった。

 それから里桜達は警察署に連行され、個別に事情聴取を受けることとなった。


「まず、何故三日月さん宅に集まっていたのですか?」


「今起こってることについて、アタシ達独自に調べてたんです。その途中で、男子達の方が万桜の家に行こうって言い出して……。それで、万桜の家に集まったんです。アタシも万桜のこと知りたかったので」


「なるほど。三日月さんの家に集まった後は、どうしましたか?」


「万桜のお兄さん……秀一さんが帰ってきたところだったんで、少し話しました」


 雪村は里桜の話を聞きつつ、メモを取っていく。


「会話の内容は?」


「万桜のことです。万桜、お父さんから虐待を受けていたことを知りました……」


「虐待……ですか」


「はい……」


 虐待に気づけなかった自分を責めているのだろう。

 里桜は暗い顔をしていた。


「……そう気に病まずに。あなたが悪い訳ではありませんよ。悪いのはお父さんです」


「はい……」


「彼からはきっちりとお話を聞くつもりです。……話を戻します。秀一さんと会話をした後は?」


「秀一さん、虐待についてツッコまれると、家に入りました。それで、どうしようかってなってたら……叫び声が聞こえて……しばらくしてから、2階の窓から………飛び降りました……」


「飛び降りの原因は解りますか?」


「よく解らないです。話した感じじゃ飛び降りるようには見えませんでしたし。……でも…………」


「でも?」


「信じてもらえるとは思えないんですが………」


 里桜は少し口籠もったが、はっきりと言った。


「万桜が、居ました」


「……三日月万桜さんが、ですか?」


「はい。2階の窓から、アタシ達を見下ろしてました。多分ですけど、秀一さんが飛び降りたのは……万桜が何かしたからだと思います……」


 万桜について話してから、里桜は気まずくなった。

 万桜は亡くなっている。

 亡くなった人間を見た、と言って信じる者はかなり少ない筈だ。


「………すいません。信じられませんよね?アタシが言ったこと」


「いいえ。信じますよ」


「えっ……?」


 意外な返答に、里桜は反射的に雪村の顔を見る。

 相変わらず表情は乏しいが、どこか頼もしく感じた。

 はっきりとした声で、雪村は言った。

 

「僕の所属は、“特務課”です」




 その頃、華絵はベッドに横たわっていたスマホをいじっていた。

 自身のアカウントで投稿した自撮り写真。

 それにはたくさんの“いいね”や賞賛のコメントが付いている。

 しかしその中には良くないコメント、所謂アンチコメントも含まれている。

 『ブス』『見るからにビッチ』『加工乙w』等と、顔も知らない相手から散々書き込まれている。

 とはいえ、それらに関しては特に不快には思わない。

 華絵からすれば、アンチコメントを書き込む連中は自分に嫉妬しているだけに過ぎない。

 寧ろ『私よりブスなのが何か言ってるw』等と書き込んで挑発する程だ。

 自分より下の存在が必死になるのは、見ていて面白かった。


“♪♪♪♪♪♪”


「ん?」


 画面をスクロールしていたところ、電話が掛かってきた。

 番号を確認すると、華絵は通話ボタンを押した。


「もしもし、晶子?」


『華絵!ヤバいよ!』


 通話の相手は晶子だった。

 何故か取り乱したような声をスマホ越しに出している。


「何?ヤバいって何なの?」


『殺される……私達、万桜に殺されるのよ!』


「はぁ!?どういうこと!?ちゃんと説明しなさいよ!」


 晶子が言っていることを、華絵は理解できなかった。

 何故急に万桜の名前が出てくるのだろう。

 

『さっき里桜達が万桜の家に行くって言ったから、こっそり付いて行ったの!そしたら、万桜のお兄さんが飛び降り自殺するしその飛び降りた窓見て里桜が万桜の名前叫んでたし!絶対全部万桜の仕業よ!』


「はぁ!?そんなの真に受けてるわけ!?あいつは死んだのよ!私達に何かできるわけないでしょ!?」


『だっておかしいもん!万桜のお兄さん元気そうだったのに、急に飛び降りたのよ!?訳わかんない!どういうことなの!?万桜に何かされた以外何があると思うの!?説明してよ!』


「そんなの私が知るわけないでしょ!あいつの兄がイカれてただけなんじゃないの!?」


 そこまで言ったところで、華絵は息を切らす。

 いつの間にか、自分が熱くなってしまっていたことに気づいた。

 

(はぁ……くだらない。私、何必死になってんのよ)


 心の中で悪態を吐く。

 晶子が捲し立てたせいだと整理した。


「はぁ……しょうもないこと考えてないでほっときなさいよ!あいつに殺されるとかくだらない!そういうことだから、切るからね!」


『えっ!?ちょっと、華絵!?』


 晶子の言葉を遮り、華絵は一方的に通話を切った。

 スマホを放り投げ、ベッドに大の字になる。

 イライラとした様子で、天井を見つけた。


「何なのよホントに。あいつに殺される?馬鹿じゃないの?ウチのクラスの奴ら殺され過ぎておかしくなったんじゃないの?」


 この場に居ない晶子に対して、ぶつくさ文句を言う。

 万桜のことを、この時はまだ1ミリも信じてはいなかった。

 しかし心の一番隅には、万桜からの報復を恐れる自分が居た。 

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