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八百万 怨念  作者: マー・TY
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37.いずれ遭う話

 翌日、里桜は何かすることもなく、ベッドに横たわっていた。

 何も言わず、ただ暇そうにスマホを弄る。

 それ以外やることがない。

 というか、何かする気力が湧かなかった。

 

「はぁ…………くそっ…!」


 昨日のグループ通話の、十海人の言葉を思い出す。

 それだけで苛ついたが、また万桜に会いたくなってきた。

 クラスメイト達が次々と悲惨な目に遭っているこの状況。

 ここまで何故自分が無事でいられるのか不思議だったが、時間の問題だろうと里桜は考え始めている。

 もし今、万桜が生きていたらどうしていただろう。

 今までの様々な場面で、万桜が生きていた場合の仮定ばかりが思い浮かぶ。

 

(万桜、アンタだったらどうしてる……?)


 里桜は天井を眺め、亡き親友に問いかけた。

 万桜は頭が良い。

 十海人に疑われているとはいえ、何か良い案を出してくれるかもしれなかった。

 

“ピンポーン”


「んあっ?」


 唐突にチャイムが鳴り、里桜はベッドから飛び起きた。

 父も母も妹も居らず、家には里桜一人だ。

 里桜を訪ねて来る者はそういない。

 首を傾げながらも、玄関まで下りてドアを開けた。


「おはようございます。警察です。九重里桜さんですね」


「あー、えっと、はい」


 九重家を訪ねてきたのは、20代くらいの男性。

 服装からして警察官だと解った。

 彼は警察手帳を見せ、丁寧にお辞儀する。

 一見礼儀正しいが、表情は乏しい。


「本日は、安否確認を兼ねた事情聴衆に参りました」


「安否確認?事情聴衆?何かあったんですか?」


「はい。昨晩、あなたの同級生が2人、遺体となって発見されまして」


「死んだんですか?……誰が?」


「深水亮太さんと、千枝好実さんです」


「えっ!?」


 好実が亡くなったことを聞かされ、里桜は衝撃を受けた。

 あまり喋らなかったが、好実とは昨日通話したばかりだ。

 

「ショックなことでしょうが、些細なことでいいのです。何か思い当たることがあれば教えていただけませんか?」


「……あの、好実となら、昨日グループ通話しました」


「グループ通話…ですか。何か好実さんに変わったところはありましたか?」


「いや……特には。通話じゃほぼ何も言わなかったような……。多分大人しい性格なんじゃないかと」


「彼女、何か思い詰めている様子はありませんでしたか?」


「いや、そんな感じでも……。ただ、怖い話になって戸惑ったりしてたかな………って、何でこんな質問を?」


「……好実さんは、首吊りで亡くなっていました」


「首吊り?」


 スマホの画面越しに見た限り、好実は健康そうだった。

 クラスメイトが悲惨な目に遭う現状を恐れていたのかもしれないが、果たして首を吊る程だっただろうか。


「自殺?」


「その線で捜査を進めています。しかし、どうやら自殺をする様子はなかったようですね」


「好実はそんな面識無かったですけど、まぁ、そうですね……」


「……となると、本当に奇妙です。深水亮太さんは変死体で発見されまして」


「変死体?」


「はい。昨日、頭部と腹部に穴が空いた状態の死体が発見されました」


「穴?」


「はい。頭部と腹部に爆弾でも仕込まれない限りあり得ないような死に方でして……。しかし、そんなものが仕込まれたような痕は無かったそうです」


「……」


 この警官の言う通りなら、亮太の頭部と腹部は自然に爆破したことになる。

 果たしてそんな現象は起こり得るのか。

 いや、里桜が識らないだけで、実際に起こり得るのかもしれない。

 摂取した食物による化学反応?

 新種のウイルス?

 万桜の見解が聞きたかった。


「すみません。気分を悪くしてしまいましたね」


「あっ、いや、別に大丈夫です。ちょっと親友のこと考えてて……」


「そうですか。………!…少し失礼します」


 警官はそう言うと、里桜から少し離れてスマホを取り出した。

 何か連絡でも来たのだろう。

 スマホを数回タップし、目を凝らしている。

 それから少し険しい表情を浮かべ、スマホを仕舞った。


「失礼しました。上の者から連絡がありまして」


「何かあったんですか?」


 警官の表情の変化を見逃さなかった里桜が問いかける。


「はい。今のこの事情聴衆は、あなたのクラスメイト全員にも行っていまして……。それでまた新たに判明したことが……」


「それは……?」


「……まず、紀嶋浩介さんとそのご家族が行方不明となっています。そして、須藤美奈さんが精神に異常を来した状態で発見されたそうです……」




 数分後、里桜はまたベッドに寝転がっていた。

 相変わらず、何かしようとする気にもならなかった。

 

「はぁ………」


 溜息を吐きながら、スマホを弄る。

 連絡先一覧には、新たに先程の警官の電話番号が載っていた。


『申し遅れました。雪村と言います。何かあったら連絡ください。些細なことでも良いので』


 雪村と名乗った警官は自分の連絡先を記したメモ用紙を渡すと、その場を去った。

 

「雪村さん……か」


 表情は乏しかったが、それでも仕事熱心な性格なのだろう。

 少しだけ心強く思えた。


“♪♪♪♪♪♪♪”


「んっ?」


 唐突にスマホの着信音が鳴る。

 相手を確認すると、里桜は迷わず通話ボタンを押した。


「もしもし?」


『もしもし里桜?今暇?』


「朱莉?あー…うん、暇だよ」


 電話を掛けてきたのは朱莉だった。

 里桜にとっては、丁度良いタイミングだった。


「朱莉、好実のこと……」


『知っとる。警察から聞ぃたよ。あと、亮太と、浩介と、美奈のことも……』


 好実は首吊り。

 亮太は変死。

 浩介は一家揃って失踪。

 美奈は精神異常。

 全て昨日か今日で起こったこととは思えない。


「朱莉は大丈夫?」


『平気やで。せやけど、2-3の皆ばかり被害に遭っとるから、いつかきっとウチにも……』


「うん……。アタシも一緒だよ」


 大怪我か。

 精神異常か。

 行方不明か。

 そして、死か。

 ここから先、何かしらが降りかかることはほぼ確定している。

 確定しているからこそ、恐ろしく感じた。


『……もっと、はよ何とかするべきやったな』


「朱莉?」


 朱莉の声は里桜とは対称的に、迷いのないものだった。


『行方不明とか精神異常とか、どうやっとんのか解らへんけど、爆弾使うくらいなら犯人はウチらと同じ人間やろ?』


「……」


『日和を殺した奴のこと、ウチは赦さへん。やられる前にやるだけや』

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