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八百万 怨念  作者: マー・TY
36/70

34.万引きの話

 午後6時頃。

 出席番号28番深水亮太は、繁華街のコンビニにいた。

 学校、会社帰りの者達で、店内は混み合っている。

 亮太は他の客を避けながら、店内を歩き回った。

 商品が並んだ棚を見渡し、時折目だけを頭上に向ける。

 ある程度歩き回ったところで、亮太はパンが並んだ棚の前に立った。

 その中で、丁度近くにあったコロッケパンを手に取る。

 それから、また店内を移動した。

 すれ違う人々を、手慣れた様子で避けていく。

 そしてあるタイミングで、亮太は上着の内ポケットにコロッケパンを入れた。

 ふと、レジの方を見る。

 4人掛かりで忙しそうにレジ打ちをする、店員達の姿があった。

 亮太はひそかにニヤリと笑うと、コンビニから出た。




「いや~~うめ~~~」


 公園まで移動した亮太はベンチに座り、コロッケパンを頬張っていた。

 ホクホクしたジャガイモの食感や、パンのほんのりとした甘さを味わう。

 しかし、そのコロッケパンの味は普通に食べる時以上だった。


「くっ…へへっ……wやっぱ美味ぇわwこうやって盗んできたモン美味ぇw」


 亮太はよく万引きをする。

 最初は出来心だった。

 2ヶ月程前、ふと「万引きをしたらどうなるのだろう」という考えが頭に浮かび、それから行動に移すまで時間が掛からなかった。

 最初に盗んだのはおにぎり。

 店員も誰も見ていない中、ズボンのポケットに入れて店を出た。

 犯罪であることは自覚している。

 そのためか、帰宅しても心臓がバクバク鳴っていた。

 盗ってきたおにぎりを食べるかどうか迷ったが、捨てるのも勿体ない気がした。

 袋を開け、口に入れる。

 そのおにぎりの味は、今まで食べてきたものの中でも格別だった。

 先程まで緊張の面持ちだった亮太だったが、完食した頃には笑っていた。

 それからというもの、亮太は万引きにハマっていった。

 バレずに物を盗むことにスリルを感じ、それが快感に繋がっていた。

 楽しいうえに成功すれば商品が手に入る。

 そこらのテレビゲームをするよりも楽しかった。

 コンビニだけに飽き足らず、スーパーや百円ショップ、本屋等も狩り場にするようになった。

 このように、亮太の万引きは徐々にエスカレートしていった。

 腕も最初の頃より上達し、防犯カメラも脅威に感じなくなっていた。

 万引き無しの生活を、考えられなくなっていた。


「やっぱ楽しいしやめらんねーわwここまでやっててバレないとか俺天才なんじゃね?いや、店側が馬鹿なのかwへへへw次はどこでやるかなぁ?」


 今まで盗みを働いてきた店を嘲笑し、次の万引きのことを考える。

 次はまたジャンルの違う店にしよう。

 2~3個盗んでもバレないのではないか。

 1日で店を何件回れるか挑戦するのも楽しそうだ。

 万引きだけにも関わらず、様々な考えが頭に浮かんだ。


【随分楽しそうね】


「うおわっ!!?」


 急に背後から耳元に囁かれ、亮太は驚きベンチから立った。

 背後を見ると、一人の少女が立っていた。

 亮太はその少女に見覚えがあった。


「おっ……お前確か………!」


【あなたのクラスメイトだった三日月万桜よ。忘れてた?】


 万桜は不満そうに亮太に近づく。

 その際ベンチをすり抜けており、それを見た亮太は後退った。


「お前…死んだんじゃ!!?」


【そう、死んだわ。交通事故でね。そして幽霊になった。まぁ、私のことなんてどうでもいいじゃない?】


 万桜は顔を近づける。

 こんな状況だか、亮太は少し新鮮な気持ちになった。

 万桜の顔をよく見たことがなかった。


【万引きなんていけないわね。御両親が悲しむわよ?】


「うっ……うるせぇな!関係ねぇだろ!」


【御両親だけじゃないわ。お店にだって迷惑掛かってるのよ?あなた程の馬鹿だと解らないかしら?】


「はぁ?黙れや。たった100円とか200円とかで細けぇんだよ。てか防犯機能ガバガバな店側が悪ぃだろ」


【その100円や200円のものをいくつ盗んできたのかしらね。塵も積もれば山となるってことわざ知ってる?被害額の合計はいくらになっているのかしらね……】


「せっ…説教垂れてんじゃねぇよ根暗女が!」


【ふ~ん?……そう】


 万桜は無表情になり、右手を前に出した。


「は?何だ……う”っ!!!???」


 突然亮太の腹と頭に激痛が走った。

 あまりの痛みに、立っていられなくなる。


「ぐぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”痛い”痛い”痛い”痛い”痛い”─────!!!!!」


 地面を転げ回る亮太を見ながら、万桜は話し始めた。


【お店は生きるために商売をしているの。商品を仕入れて、お客さんに売って、それで初めて生きるためのお金が稼げる。その命綱とも言えるものを、あなたは横取りしたのよ?】


 亮太は痛みで話どころではない。

 それでも万桜は続けた。


「う”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”────!!!」


【お金が無ければ物は買えない。こんなの子供でも解ることよ?やっぱり反省させて解らせるしかないかしら?】


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”──────!!!!」


 泣き叫ぶ亮太の腹と頭が膨張していく。

 そして、まるで生き物のようにウネウネと動き出していた。


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”─────!!!!!!」


【反省する前に死にそうね。サヨナラ】


“パァァァン!!!”


 弾けるような音が公園中に響き渡った。

 辺りに血飛沫が舞う。

 激痛で暴れ回っていた亮太は既に大人しくなっていた。


【万引きによって得たもの、全部出たかしら?】


 クスクスと笑い、万桜は公園を出て行く。

 血溜まりの中心に倒れている亮太の腹部と頭部には、ポッカリと穴が空いていた。

深水亮太ふかみりょうた


万引き常習犯。

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