32.グループ通話の話
想と知基が始めたグループ通話。
何故このタイミングで始めたのか、恭也には理解できなかった。
ただ、この通話で他のクラスメイトの今後の動きが解りそうだった。
そのため恭也は、この通話に参加した。
『あっ、恭也君』
『恭也君、こんにちは。ご参加嬉しい限りです』
先に居た2人はカメラ機能をオンにしていたため、顔が見えていた。
知基は笑顔で両手を振って出迎え、想も微笑みながらお辞儀をした。
「や、やぁ2人とも」
『来てくれて嬉しいよ』
『僕達2人だけというのも寂しいですからね』
『やっほー3人とも!』
『『『!?』』』
突然聞こえてきた、明るい少女の声。
スマホには4つ目のカメラが表示されており、そこに手を振る朱莉と緊張した面持ちの里桜が映し出されていた。
『朱莉さん……と、里桜さん!?』
『こ、こんにちは』
「えっ?何で2人は一緒に居るの?」
『今里桜と一緒に勉強会しとったんよ』
『で、何かグループ通話始まってたから、朱莉が一緒に入ろうってなって……』
『今に至るってわけやね!てか恭也、顔出さへんの?』
「えっ?あぁ……」
通話に参加して以来、恭也だけはカメラをオフにしているため、顔が映っていない。
恭也はふと横に居る万桜に視線を向けた。
気を遣ったのか、万桜は妖しく微笑み姿を消した。
恭也はカメラをオンにし、自分の顔を晒した。
「映ってる?」
『ばっちりやで!』
朱莉がグッドサインを出す。
するとこのタイミングでまた1人、通話に参加してきた。
『あっ……こんにちは………』
『お~!好実も来た!』
『千枝さんこんにちは~』
朱莉や知基が、入ってきた気の弱そうな少女を出迎える。
出席番号17番千枝好実。
顔は良いが、性格のせいであまり目立たない生徒だ。
『久しぶりやな、好実』
『うん……。ねぇ…どうして集まってるの?』
『そうですね……。少し今起きていることについて話し合いたいと思いまして』
想は眼鏡を上げ、全員に言い聞かせた。
『3日前の爆破事件にて、多くのクラスメイトがお亡くなりになりましたが、異変はそれ以前から起きていたように思えます』
「それ以前って?」
『万桜さんが亡くなってから、その約一週間後辺りから、栄太君や早苗さん含め、12人のクラスメイトが順に不登校になっていきました』
『そう言われれば……せやな………』
恭也は冷や汗を掻く。
想と知基は、クラスで起こっている異変に気づいていたようだ。
この真剣な雰囲気が伝わったのか、朱莉が口を開く。
先程の明るさは、もうどこかにいっていた。
『ウチらのクラスでの爆破といい、その12人のことといい……。今生き残っとる誰かの仕業かもしれへんよな?警察も疑うてるし』
『朱莉……』
『だってそうやろ里桜。じゃなきゃウチらのクラスばっか狙われへんし』
『確かにそう思うのが自然かもしれませんね。ですが……僕達の考えは少し違います』
朱莉が熱くなっているところで、想が口を挟んできた。
知基もまた、頷いている。
『少し違うってどういうことなん?』
『僕達のクラスにここまでできる生徒……というか、人がいるとは思えないんですよね』
『爆弾なら頑張れば作れそうな気がするけど……』
『確かに爆弾ならそうかもしれません。ですが問題はそれ以前に被害に遭った生徒達なんですよね』
「あの12人が、どうかしたの?」
恭也は試すつもりで、想に訊いた。
『被害に遭った生徒に直接会う方が早いと思いまして、事前に彼らを訪ねてみたんです。ただ、栄太君、卓君、鳴海さん、萌花さん、由美さん、信吾君、竜平君、早苗さん、純君、孝君の10人は行方不明でしたので、実際に会えたのは太一君と心愛さんだけでした』
「……2人だけ……か」
『はい。まずは太一君です。彼は暗い自室に籠もり、毛布に包まって何かに脅えている様子でした。声を掛けると、「見るな!」と何度も叫んだため、それ以上の接触は不可能でした。太一君のお母様によると、どうやら彼はたくさんの目に見られているようです』
『目…?』
「目?……幻覚でも見えてるのかな?」
恭也は考えるふりをしながら、顎に手を置いた。
万桜が太一に呪いをかけたことを、本当は知っている。
『………えっと、心愛の方はどうやったの?』
『心愛さんもまた、部屋に籠もっている状態でした。しかし、太一君とは大きく違いました。ドアの隙間から覗いたのですが、心愛さんは……その………』
『……想?』
『……心愛さんは……言葉で表すには難しい程惨い状態になっていました。彼女の親御さんも、それに脅えているご様子でした』
心愛の状態を思い出したのか、想の顔色は悪くなっていた。
知基は俯き、朱莉と里桜は浮かない顔を見合わせ、好実は戸惑っている。
沈黙に包まれているこの場を、恭也は冷めた目で見つめていた。
心愛のことは、既に万桜から聞いている。
聞いたうえで、だから何だとしか思えなかった。
強いて言うなら、万桜の声が心地良いとしか感じなかった。
この空気を打ち消したいと思ったのか、今度は知基が口を開いた。
『気になることはまだあるんだ。勇二君と雄大君のことなんだよね』
『……その2人がどうかしたん?』
『勇二君はあの日出欠になっていたのに、爆発に巻き込まれてる。爆発直前に来たんだと思うけど、その理由が解らない。雄大君に関しては死因は爆発じゃないらしいし……』
『……アタシ、雄大が死ぬところ見た』
ここで里桜が発言する。
知基は喰い気味で里桜に問うた。
『その時のこと、話せる?』
『……アタシあの時雄大に責められてて…。それが悪化して雄大が首絞めてきたんだ。殺されるかと思ったけど、気づいた時には雄大は死んでて、近くにバケツが転がってた』
『何者かが上から雄大君にバケツを落としたということですか……』
眼鏡を弄りながら、想も話に乗ってきた。
朱莉も里桜を横目で見つめていた。
雄大の話題になり、恭也は少し身構えた。
そもそも雄大を殺したのは、恭也自身なのだ。
『地面が塗れてたから、水も入ってたんだと思う』
『完全に殺す気だったみたいだね』
『誰にも見られずに水入りのバケツを落とすとすれば、トイレからでしょうか。里桜さん、犯人の顔を見ましたか?』
『ごめん、見えなかった』
『そうですか……。見えていたら大きかったのですが……。雄大君なら誰かの恨みを買っていてもおかしくないですが……果たして………』
ここまで語ったところで、想はハッとした。
それから話を元に戻した。
『少し脱線してしまいましたね。雄大君のケースは人によるものの可能性が高いですが、太一君や心愛さんのあの状態は…人によるものとは思えないんです。行方不明の10人にも同じことが言えます』
『人によるものやあれへん……って言うと?』
『僕自身、馬鹿な話だと思うのですが────』
『何を話してるんだ愚民どもーーーー!!!』
突然聞こえてきた大声が、想の話を遮った。
その場の全員が、新たに表示されたカメラに注目した。
通話に入ったきたのは、十海人だった。
千枝好実
顔は良いがあまり目立たない。泣き虫。




