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八百万 怨念  作者: マー・TY
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19.3日後の話

 爆発事件が起こった日から3日後。

 午後13時に、九重家のインターホンが鳴った。


「んっ……」


 ベッドに寝転がって歴史の教科書を読んでいた里桜は、すぐに自室から出て玄関のドアを開けた。


「朱莉……」


「……ひっ、久しぶりやな、里桜」


 玄関前に、苦笑いをした朱莉が立っていた。

 カジュアルな私服に、トートバッグを持っている。


「……まぁ、とりあえず……入って」


「うん…お邪魔します……」

 

 里桜は朱莉を家に入れ、そのまま自室に案内する。

 それから朱莉を自室で待たせ、キッチンに向かい、2つのコップに麦茶を注いでトレイに載せた。

 キッチンやリビングは薄暗い。

 父と母は仕事、妹の里菜は学校で、朱莉が来るまでは里桜は一人だった。

 麦茶を持って、自室に戻る。

 朱莉がベッドに座って待っていた。


「麦茶で良かった?」


「うん。ありがとな」


「そう。じゃあ、始める?」


「せやな……」


 里桜はテーブルに麦茶と、教科書とノート、筆記用具を置いた。

 朱莉もトートバッグから教科書類を出し、同じように置く。

 こうして、2人の勉強会が始まった。




 爆発事件が起こった日の翌日。

 里桜達2年3組の生徒は、警察から事情聴取を受けた。

 当時教室では爆発の前兆等無かったこと。

 いつも通り過ごしているところを、雄大に無理矢理連れ出されてしまったこと。

 襲われているところに水が入ったバケツが落下してきて、雄大に直撃したこと。

 それから、雄大が絶命し、朱莉が駆け付けたところで謎の爆音が鳴り響いたことまで……。

 他のクラスメイトがどのように受け答えしたのかは定かではないが、里桜は全て正直に話した。

 その際に、若山が警察署前の道路で事故に遭い、死亡したことも明かされた。

 里桜は驚きを隠せなかった。

 取り調べは1時間程で終了したが、解放されて後も若山のことで頭がいっぱいだった。

 2年3組に関わっている人物が、立て続けに亡くなっている。

 裏がありそうな気がしてならなかった。

 警察署からの帰路を辿っていると、朱莉からLINEでの連絡があった。

 朱莉だけは取り調べを病院で受けたらしい。

 メッセージは次のようなものだった。


『里桜、昨日は堪忍な。ウチ、いろいろ取り乱してもぉて……。あの、良かったら後日会われへん?休校にもなったし、一緒に勉強とか、どないやろ?』


 朱莉の言うとおり学校は、2年生だけでなく全学年が現在休校になっている。

 生徒達は各自、自宅学習をするようにと連絡も来ていた。

 それでもこのようなメッセージを寄越す辺り、朱莉はどこか寂しさを感じているように思えた。

 日和が亡くなってまだ間もないため、無理もないだろう。

 それに、里桜自身も朱莉の顔が見たかった。

 その後日時や集合場所を決め、そして現在に至るのだった。


「………」


「………」


 勉強会が始まって10分。

 里桜はここまで無言で教科書を眺めていた。

 ふと、朱莉の方を見る。

 彼女もまた、無言で問題集を解いていた。

 勉強会とはいえ、この先ずっと無言が続くと思うとキツかった。


「………んっ?」


 里桜の視線を感じたのか、朱莉は顔を上げた。

 チラッと見るだけの筈だったが、ついその時間が長くなってしまっていた。

 里桜は慌てて目を逸らす。


「里桜、どないしたん?」


 朱莉は首を傾げてそう言った。

 里桜は再び視線を朱莉の方に向ける。


「いや、何か……。こうして会えたのに、会話が無いのは何かな~……って……」


「あはっ……ははは。せやな。そもそも会いたいって言うたのウチやのに。黙ったまんまで堪忍な」


「いや、まぁ……無理もないって…………」

 

「さよか。はぁ……。勉強なんて手に付かへんよ……」


 朱莉は持っていたシャーペンを放り、楽な姿勢になった。

 里桜も教科書を閉じ、テーブルに突っ伏した。


「……朱莉」


「ん?何?」


「日和のことは、もう大丈夫なの?」


「………あぁ、うん」


 朱莉は姿勢を直した。

 下を向いており、目は前髪でよく見えない。


「病院で薬とかもろて、何とか落ち着いたで。日和のことは、もう大丈夫や」


「そう……」


「うん。……せやけど、………赦す気はないで」


「えっ?」

 

「あの爆発、絶対誰か仕込んだものやろ。犯人見つけたら、絶対赦さへん。日和の仇や。いてまうぞ……」


 暗く、鋭く、殺意が籠もった声に、里桜は震え上がる。

 それは、いつもの朱莉のものとは思えなかった。




 同じ頃、恭也は自室のベッドに座ってスマホを見ていた。

 画面に表示されているのは、ネットニュース。

 そこには、神凪高校の爆発事件も取り上げられていた。

 事件の詳細や的外れな考察が書かれている中で、恭也が犯人を示すような内容は無かった。


【────あれから3日。早いものね】


 いつの間にか隣に、万桜が座っていた。

 恭也のスマホを覗き込み、いつものように妖しく笑っている。

 

「……今では“呪われたクラス”なんて呼ばれてるよ」


【フフッ。違いないわね。私が関わっているんだから】


「………どうする?そろそろ、残りも消していく?」


【そうね。……でも、里桜はまだ………】


「………やっぱり、九重さんは大切なの?」


【………フフフ】


 里桜のことが気に入らないようで、恭也は眉をひそめる。

 万桜は里桜と過ごした日を、初めて出会った頃のことから思い返していた……。

次回 万桜の過去回想

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