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入学

馬車から降りると、煌びやかなドレスやタキシードの学生達が、ホールに向かっていた。


私は今日は男爵家の馬車でここまで来たが、明日からは乗り合い馬車だ。男爵家には私に使う余分なお金はない。


今日は、入学セレモニーとパーティーがある為、学生はみんなドレスアップしている。


私は、シンプルな水色のドレスを着ている。


ふと横に目をやると、後ろで美しい馬車が止まり、中から、華やかな紅の髪の令嬢が出てきた。



『マリアンヌ公爵令嬢だ…』


凛とした佇まいは、まさに令嬢の鏡だ。

燃えるような紅の髪と少し吊り上がった瞳に、意志と決意を感じる。

長年の王妃教育が彼女の意欲と自信になっているのだろう。


あの人には、勝てないな…。本能的にそう思った。

たとえ、前世の記憶があったとしても、彼女に勝るものを私は、何も持ち合わせていない。

こんなぽっと出の私に、何も出来ないのだ。


だけど、彼女は悪役令嬢で、ゲームのシナリオがある。

注意しなくては。


私は、下唇を噛んだ。





学園長の挨拶と、先生方の紹介が終わり、少しの休憩後、夕方からは、入学パーティーだ。

この学園の2年生である、王子や義兄も参加する。


乾杯と共に、学園長がパーティーの始まりを合図する。

マリアンヌ公爵令嬢と懇意にしている令嬢達も会話を楽しんでいるようだ。

皆、食事やダンスを楽しんでいる。


私には、令嬢の友人は居ない為、壁の花となる

。この中に攻略対象の令息もいるだろう。

本当は、確認したかったのだが、どうやら人に酔ってしまったようだ。


外の空気を吸おうとバルコニーに出る。

暗がりの中、庭園に行こうと階段を降りようとした時、ヒールを滑らせてしまった。


『あっ!ヤバイ!!落ちる!』


そう思った時、ガシッと腰に腕を回され、引き留められた。

驚き、後ろを振り返ると、シルバーの髪がさらりと靡き、サファイアよりも深い海の様なブルーの瞳と目が合った。


「あ、、、、っ。」


そのまま抱きしめられ、逞しい胸元に収まる。


数秒。時が止まる。


爽やかな香水の匂いに安心したのも束の間、私は直ぐに冷静になり、包まれていた胸元を押してすぐに離れた。


「も、申し訳ございませんっっ!助けて頂きありがとうございました。」


と、深くお辞儀した後、顔を上げると、


「あぁっっっ!!」


そこには、アーサー第1王子が、安心した笑顔でこちらを見ていた。


「怪我をしていないようで、良かった。」

微笑み、輝くブルーの瞳は美し過ぎる。



「も、申し訳ございませんっ!失礼致します!!」


動揺した私は、直ぐにその場をから立ち去る。

に、逃げなくては!本能でそう感じた。



ダッシュで逃げる私の背中を見ながら、アーサー王子は横にいる護衛騎士に尋ねた。


「あの令嬢は誰だ?」


「アリエル•バーミリオン男爵令嬢でございます。」


「ふーん。そうか。」



抱き寄せた感触を確認するかのように、アーサー王子は、左手を眺めた。





ところで、私は、ハンカチを落としていないぞ。

どうなってる?


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