これからの事を考えよう!
「ただいま〜。」
私はアリエルの自宅に戻った。
玄関横の靴箱の上に置いてある、優しい女性の写真に目をやる。
ゲームのシナリオでは、アリエルの母親はアリエルが13歳の頃に亡くなっている。
それから、アリエルは母親と一緒に住んでいた、この小さな家に1人で住んでいた。
アリエルの母親にも、もう会えないのだが、本当の母親にももう会えないのだと思うと、目頭が熱くなる。
「駄目だ!ダメだ!弱気になったら!」
死んだ筈だったのに、どんな世界でも、今、私はここに存在している。
だからこそ……。
「よし!これからの事を考えなくちゃ!!」
温かいお茶を入れて、小さなテーブルに座った。
「まずは…」
確か、アリエルは16歳で学園に入学する。
現在は、15歳だ。確実に男爵家がアリエルを探している所だろう。
シナリオでは、確かアリエルはバーミリオン男爵の娘だ。アリエルの母親は、男爵家の侍女だった。
男爵家から逃げるのは、平民のアリエルにとって難しい事だ。
入学してからを変えるしかない。
そして、まず1番に確認しないといけない事は…。
悪役令嬢が転生者かどうか?
もし、私と同じ転生者なら、此処がゲームの世界だと知っている可能性がある。
そうしたら、もしかしたら、悪役令嬢と協力して行動出来るかもしれない。彼女の考え次第だが。
もし、転生者でなくても、私は攻略しないから、悪役令嬢は、悪役ではなくなるだろう。
私は、そもそも、このゲームの考え方が嫌いだ。
婚約者のいる男性に何故、ヒロインは、甘い言葉をかけて言い寄るのか?
日本なら、慰謝料請求問題だ。
妹にこの話をした時に、「だから唯姉は真面目過ぎるんだよ〜!こんなゲームは何も考えずに気楽に遊ぶものだからっ!笑」
って言われたっけ。
私はくすっと思い出し笑いをした。
この世界にも、妹のように気楽に話が出来る人と出会えたら、良いな。
OL時代は、仕事ばかりで恋愛もまともに出来なかった。
せっかく学園に入学するのだから、ゲームとは関係ない、友人や恋人が出来たら良いんだけど。
まあ、まずは悪役令嬢をただの令嬢にしなくては!
その為には、私のフラグを折りまくる!!!
そして、私は普通に学園生活を満喫しよう。
これからの事を決心した、私は窓の外を見た。
雲一つない青空は、今の私の気持ちに似ていた。
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引き続き、温かい目でお読み下さいませ。