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00-3 中指の神


進はこの時点であんぐりと口を開けている


運の女神は、とても悲しげな顔をして


「進さんは、とっても可愛そうな死に方をしました……」


と言って、髪の毛についたクラッカーの紙をひっぺがし、そして

進に美しい手を差し伸べた。


「これは、酷い死に方をした方、限定特典です♫ 何か願いを叶えてあげましょう♫」


「酷い死に方……?」


「そうです♫ 運の女神の力で、なんでも一つだけ、叶えてあげますよ~♫」


「現世に戻してよ」


運の女神は微笑まなかった


「あなた本当に、戻りたいのですか?」


思わず顔を上げる進に、女神はどこからか紙を取り出し、それを見始める


「焼野原進……享年27歳。幼い頃から、虐待と男遊びを繰り返す母親とネグレクトを決め込む父親のもとで育つ。18歳からアルバイトを始め、22歳で自立して一人暮らしを始めるも、定職につけずに職を転々とする。」


女神は、それを放り投げ捨ててしまう


「はっきり言って楽しいとは言えない人生でしたね♫」


「そう、そう……ですよ、でも、でもそんな」


「でも?」


「それでもあたしには、大事な人生だったんです やりたいことだってあったんです」


「どうにかなる人生だったんですか?♫」



「うるせえよ!!」



進は立ち上がって、自分の人生の塁歴が書かれた紙を女神からむしり取る


「あらあら、野蛮ですね♫」


進は思いっきり、女神に己の中指を立てた


「うるせえっ!」


そして彼女は雄々しく吠える


「このクソ女神!! あたしの前から消えろ!! 死んでも願いなんか叶えてもらうもんかッ!」



運の女神は、初めてそこで驚いた表情を見せた。


そのとき、

もう泣くことも出来ず震える進、彼女の後ろから突然声がした。


『よくぞ言った、それでこそ人間の魂だ』


進が振り返ると、そこには、巨大な中指が立っていた。


「あなたは、中指の神……!!」


進は頭のどこかでぼんやりと思った。

あ、そっか。運の女神がいるなら、中指の神様も居るのかぁ。

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