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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 桐崎蓮兎
仲のいい幼馴染が俺のことを好き、なんてことはなかった
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第五話

「晃〜、今日親居ねえんだけど、俺ん家こね〜か?明日お前バイトないだろ?夜通しゲームやろうぜ」


金曜の放課後、健が唐突に提案してきた。


「お前ん家?いやまあいいけど。あと誘う理由に親がいないをつけるのをやめろ。単純に気持ち悪い」

「おっしゃ、決まりだな」

「あ、ちょっと待ってくれ、姉貴に聞いてみねーと分からん」


携帯を取り出し起動させると、姉貴からチャットが来ていた。珍しいな。


《今日友達と飲んでくるから、ご飯一人で食べててね〜》


「よし。行こうか」

「お、おう、えらく早かったな」


姉貴のことは心配しなくても大丈夫そうだな。いや〜よかったよかった。


「でもよ、お前今日部活あんだろ?」

「おう。適当に待っててくれ」

「待っててくれってお前……まあいいけど」

「じゃあまた後でな」


そう言って健は部活に行った。


そういや週末の作戦、仁美に話してなかったな。話しておくか。


「仁美、ちょっといいか?」

「ん?なに〜?」


支度を終え、教室を出ようとしていた仁美を呼び止める。部活へ行こうとしていたのか。悪いことしたな。


「一応休みの作戦について話そうと思ってな」

「え!?なになに!?いい作戦があるの!?」

「ん〜、まあ大したことじゃないんだが、日曜、二人で出かけてみたらどうだ?」

「へ?」


仁美は素っ頓狂な声を上げて惚けた顔をする。その後、みるみるうちに顔が赤くなっていく。面白いなこれ。


「いいいやいやいや!無理だって!そんないきなりデートだなんて!」

「新しいバッシュ見たいとか、練習中につけるリストバンド欲しいとか適当な理由つけて誘ってみろって。多分OKしてくれると思うぞ」

「そ、そう……かな……」

「ああ。俺が保証する。泥舟に乗ったつもりでやってみろって」

「それ沈んじゃわない!?本当に大丈夫なの!?」

「とにかく、まずはやってみないとだろ。当たって砕けろ。ダメで元々だ」

「う、うん!そうだね!やってみるよ!」

「その意気だ。いい報告を期待してるよ」

「うん!ありがとう!じゃあ私、部活行くから!じゃね!」

「おー、じゃあな」


仁美はこちらに手を振りながら部活へ行った。あいつらは両想いだし、きっと作戦も上手くいくだ……


ドン

「ってえな……」


何かが俺の腕にぶつかった。んだよ、いよいよ直接攻撃でもしてきたのか?

ぶつかってきた方を見ると、成瀬がカバンを持ってを肩に乗せ、俺の方をめっちゃ睨んできていた。女の子がそんな顔しちゃダメでしょ。もっと優しさを覚えた方がよろしくてよ。


「なんだよ……なんか用か?」

「別に」


成瀬は俺から視線を外しつつそう言いい残し、教室を出て行った。俺が鬱陶しいからってそこまでやるかね普通。まあ仁美に行為がいかないだけマシだと思うけど。


さて、あいつの部活が終わるまで大体二時間、俺にはやる事が何もない。真面目な奴なら勉強しようってなるんだろうけど、残念ながら、俺にそこまでの意欲はない。

委員長も早々にどっか行ったし、話し相手もいない。どうしようか。そういえば委員長で思い出したけど、図書室に明智小五郎シリーズ全部あるとか言ってたな。いくつか持ってないのあるし、折角だから行ってみるか。



図書室に入ると、受付に一人の女生徒がいるだけで、他に人はいなかった。

放課後とはいえ利用者が全くいないとは……。まあ、今まで利用してこなかった俺が言えた立場じゃないが。


受付にいる女生徒は俺に気がつくと軽く会釈をしてきた。丁寧な人だなぁ。俺も会釈を返し、本を探し始める。大金塊大金塊は〜……。あれ?無えな。シリーズ全部あるんじゃねえのかよ。あの女嘘つきやがったな。


「お探しの本はこちらですか?」


俺が委員長に憎悪の念を抱いていると、そんな俺の様子を見かねたのか、受付の人が声を掛けてくれた。俺の視界に入るように本を持って。


「あ、それですそれです。ありがとうございま……」


お礼を言おうと振り返ると、言葉を失った。彼女の容姿に目を奪われたからだ。

髪は肩より短いくらいのショートで、少しおっとりとした雰囲気が漂っている。

なんというか……すごい綺麗というか可愛いというか……めっちゃタイプなんだが……。


「どうしました?」


彼女はキョトンとした表情でこちらを覗き込んでくる。行動一つ一つの威力がとんでもないことになってるな。今すぐにでも昇天しちまいそうだ。


「いえ、なんでもないです。ありがとうございます」


昇天しかけのところをなんとか持ち直し、平静を装って答える。


「江戸川乱歩、好きなんですか?」

「あ、はい。個人的に買うくらい好きですね。推理物が好きってのもあるんですけど、やっぱり面白いと思います」

「そうなんですね。私、怪盗二十面相しか読んだことなかったので、他のシリーズも読んでみようと思います」


彼女は目を輝かせて、俺を見上げるように言ってくる。何この可愛い生き物。俺をお迎えに来た天使かな。


「あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。私は二年C組の天使 桜(あまつか さくら)です。天井の天に使うと書いて天使(あまつか)です。よろしくお願いします」


いやマジモンの天使(てんし)やんけ。これはあれか?人の名前を借りて下界に降りてきた天使(てんし)的な?にしてももっといい名前あったろうに。バレバレじゃん。


天使(あまつか)さんが自己紹介したのだからこっちもしないわけにはいかないな。


「俺は一年B組白峰 晃って言います。えっと……白峰村の白峰に、日の光と書いて晃です。よろしくお願いします」


白峰のところ、絶対伝わらないよなぁと思いつつ、天使(あまつか)さんと同じような自己紹介を返す。


「日の光と書いて晃……いいお名前ですね」


名前を褒められたのは初めてだ。というか天使(てんし)に褒められた!昇天しそう……。

まあこんなところで今生におさらばする訳にはいかないので、何とか正気を保つ。


天使(あまつか)さんの方を見ると、ハッと何か気がついたみたいな顔をしていた。どんな顔も可愛いなおい。


「白峰君の読書の邪魔しちゃ悪いですよね。では私はこれで失礼します。本を借りたい時は受付まで来てくださいね。では」

「あ、はい。ではまた」


天使(あまつか)さんはそう言い、受付の方に去っていった。読書なんてどうでもいいからもっと話してたかったんだが……。まあしゃあないな。


受付にいるということは図書委員か。つまり、図書室に来れば天使(あまつか)さんに会えるということだな。こりゃあ定期的に来たくなっちゃうな。バイトない日は来よううんそうしよう。


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