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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 桐崎蓮兎
仲のいい幼馴染が俺のことを好き、なんてことはなかった
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第四話

意識が戻ったのは、昼休みの終わり頃で、昼飯を食う時間など無かった。あの女……容赦なさすぎだろ……。


空腹に耐える事三時間、ようやく放課だ。あの二人は部活だし、やる事ねえからさっさと帰りたいんだけど、とにかく腹が減って仕方ねえ。残しとくのももったいねーし、夕飯まで我慢できねーし、弁当食ってから帰るか。


「変な時間に昼食をとると、体内時計狂うわよ」

「マジ?つーか体内時計って本当にあるのかよ」

「ええ。いい機会だし、詳しいメカニズムについて教えましょうか。そもそも体内時計というのは…」

「長くなりそうだからまた今度頼む」


長い話とか聞きたくないです。早く帰りたいんで。

委員長は俺の前の席の椅子を引きそこに座る。え?居座る気なの?


「ところで、何故あなたは今お弁当を食べているの?」

「昼色々あって食い損ねちまったんだよ」

「成瀬さんと話していたみたいだけど、何があったのかしら?」


なんでそんなところ見てんだよ。いや、成瀬が俺という屑に話しかけるという異常事態が起こったわけだし、見てても不思議ではないか。


「まあちょっと、な……」

「何その歯切れの悪い回答は。まあ話したくないというのなら別にいいけれど」


話が早くて助かる。女子のスカートの中覗いたとか言ったら多分殺されてたと思うし、よかったわ。


「で、何の用だ」

「?用?特にないのだけれど」

「じゃあなんで居座ってんだよ」

「なぜ私の行動について逐一聞いてくるのかしら。そんなに私を束縛したいの?ヤンデレ男は引かれるだけよ」

「なんで俺がお前に好意を抱いている事前提なんだよ」

「違うの?」

「ちげーよ。俺のどこをどう見たらそうなるんだよ」

「そう、つまりあなたは殺したい程私を憎んでいると」

「なんでそうお前は極端思考しか出来ねーんだよ。修羅の国にでも住んでたのか?」

「修羅の国に住んでてもその考えにはならないでしょう?あなたこそ発想が極端過ぎよ。単細胞は思考もお粗末なのね」

「なぜ俺が悪いみたいになっているんだ……俺悪くないよな?」

「それで、あなたは私の事が嫌いということでいいのよね」


鈴井ってこんなめんどくさい女だったのか……。こらからは接し方を考えなきゃな。

まあ誤解されたままなのも嫌なので、訂正はしとくか。


「嫌いではねーよ。つーかろくに話したこともなかったんだし、好きも嫌いもあるかよ」

「そう……ね……」


俺の回答に、なぜかやや暗い顔をする。嫌われてた方が良かったってか?酷えな。こんなんじゃ傷つきはしないけど。


「そういえば、普段よく本を読んでいるけれど、好きなの?」

「ん?ああ、まあ割とな」


なんでそんな事知ってんだよ。確かに休み時間とか本を読んでる事多いけど、普通は気付かんだろ……。


「どういった本をよく読んでいるの?」

「ん〜、まあ色々読むが、江戸川乱歩とかの推理小説をよく読むな」

「そう。面白いわよね。やはり自分なりに推理したりしながら読むのかしら?」

「そうだな。まあ俺の陳腐な頭じゃ、たまにしか当たらないけどな」

「たまにでも凄いことよ。あなたの数少ない特技なのだから、もっと誇ってもいいのではない?」


数少ないってなんだよ失礼だな。他にも特技くらいあるぞ。速読とか、ラーメンの知識とか、あとは……考えたけど誇れる特技なんてねえな。


「お前は何の本が好きなんだ?」

「そうね……強いて言うなら、宮沢賢治が好きかしらね」

「へぇ、それはまた意外だな」

「よく言われるわ。私がファンタジー系を読むの、そんなに不思議かしら」

「なんかキャラ的に、『ファンタジー?そんな非現実的な物なんて、現実逃避したい人が読むものでしょう?生憎、私はそんなものに興味はないわ』とか言いそうだったから」

「なるほど。あなたの私へのイメージがよく分かったわ。教えてくれてありがとう」


笑顔なはずなのに目が全く笑ってねぇ……。女子の笑顔ってこんなに怖いものだったのか……。


「で、宮沢賢治が好きな理由ってなんだ?」


俺はまずいと思い、俺は急いで話を戻す。


「巧みな文構成で私をファンタジーの世界へ連れて行ってくれる。何度読んでも面白いと思わせてくれるわ」

「本当に好きなんだな」

「ええ。よければあなたもどう?私が持っているのでよければ貸すわよ」

「あー、まあ、機会があればな」


そうこう話していると、弁当を食べ終えてしまった。


「じゃあ俺帰るから」


一応委員長にも帰る旨を伝える。無言で帰っても後味悪いからね!


「そう……。一ついいかしら?」

「ん?なんだ?」

「その……明日も早く来るのかしら?」


何故あえてそんな事を聞く。あーあれか。お前がいるなら時間ずらすか的なあれか。晃くん傷ついちゃうぞ☆


「ああ、明日も……つーかしばらく早めにくる事になるな」


嘘ついてもバレるだろうし、正直に話した。大丈夫、心のプロテクターはつけたし、何言われても問題ない。


「そう。ではまた明日ね」

「お、おう。また明日」


返ってきた言葉は、俺の予想とは大きく外れ、至って平凡な優しい言葉だった。マジかよ、構えて損したわ。


まあ鈴井もOKしてくれたことだし、明日も早く来ていいってことだよな。いや、別にあいつの許可とかどうでも良いけど。



翌日、俺は再び早い時間に学校へ向かった。

教室には委員長がいるが、憂鬱ではない。昨日本について話したのは楽しかったしな。ちょっと楽しみなまである。

好きな事について語る女の子って可愛いんだな。俺がやったらただのオタク特有の早口語りになっちゃうんだけど。


教室の扉を開けると、昨日と同じように本を読んでいる鈴井がいた。


「おはよう。今日も早いな」

「おはよう。どうしたの?そんなぬとねの区別がつかなそうな顔をして。株でも失敗した?」

「俺の真顔はFXで有り金全部溶かしたみたいな顔なのかよ……」


前言撤回。やっぱりこいつに会うのは憂鬱だ。


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