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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 桐崎蓮兎
仲のいい幼馴染が俺のことを好き、なんてことはなかった
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第十三話

「ねぇね!どこから見て回る!?私はペンギンが見たい!」

「あたしは熱帯魚が見たいかな」

「俺はイルカ見たいな。生で見た事ないし」


皆一様に見たいものを並べる。うーん、ちょっと勝樹と成瀬の距離が近くないですかね。こりゃ目を離せそうにない。


「あんたは見たいの無いの?」


成瀬が三歩後ろを歩く俺に振り返って聞いてくる。何故そんなに離れてるかって?邪魔しないようにかつ、勝樹と成瀬の監視のためだよ。


「別にいいよ俺は」

「何で?」

「特別見たいもんないし、そんな奴が邪魔しちゃ悪いし」

「そっか。まああんたがそう言うなら良いけど」

「良くない!」


うおっ!びっくりした。いつの間にか仁美が目の前まで詰め寄って来ていた。目を細め、睨むように見上げてくる。もしや怒ってます?


「どうした。可愛い顔が台無しだぜ☆」

「かわっ……じゃなくて!見たいのあるでしょ!言って!」

「無いって。俺は俺で皆の見たいもん見てるだけで楽しめるから気にすんな」

「でも……」

「辞めとけ仁美。しつこいと嫌われるぞ」


勝樹は仁美の肩に手をぽんと置き、語りかける。さり気ないボディタッチ、俺でなきゃ見逃しちゃうね。


「勝樹……でも晃が……」

「こいつが意見曲げたこと今までにあったか?」

「それは……確かにないかも」

「そもそも意見持ってないけどねこいつ」

「折角纏まりそうなんだから余計な事言うな」

「あんた……」


成瀬は何か言いたそうにしていたが言葉を飲み込んだ。文句の一つでもと思ったが、言葉が見つからなかったんだろう。ウケる(ギャル風)


「晃は本当にいいの?」

「いいよ」

「誤魔化したり嘘ついたりしてない?」

「してない」


俺は仁美の目を見てハッキリと言った。こういう時はキッパリ言い切る方が効果的って婆っちゃんが言ってた。いや言ってなかったかもしれん。多分言ってなかったわ。


「……分かった」


仁美は肩を落として背を向け俺から離れる。うむ納得した様で何よりじゃ。


「でも!」


うおっ!びっくりした。再び振り返って詰め寄ってきた。心臓に悪いからそういうの止めて欲しい。


「まだ何か?」

「見たいの出来たらちゃんと言うんだよ?」

「はいはい。分かりました」

「ハイは一回!」

「へーい」

「よし、じゃあ行こう!」


再度踵を返し、ペンギンコーナーと書かれた方へと歩いていく。ず、図太い……。やれやれといった感じで勝樹もついていく。俺もついて行きますか。もちろん三歩後ろからね。


「あんたいつもこうなの?」


何故か成瀬が隣を歩いていた。気まずいから前言って欲しいな~……。


「どういう意味だよ」

「自分の事ハッキリ言わないで、一歩引いた感じでさ。何か、ムズムズするというか」

「んだよそれ」

「あんたの態度がムカつくって言ってんの。で、どうなん?」


どうなん言われてもな。成瀬は何処に引っかかったのか分からないから答えようが無い。まあここは適当に濁しとくか。


「よく分かんねーけど、俺はいつも通りのつもりだ」

「うわっ……」

「うわってなんだよ、失礼だな」

「成程ね、仁美もああなるわ」

「どういう意味だよ」

「別に?本人に聞いたら?」

「あ、おい!」


成瀬は話を打ち切り前を歩く二人に合流する。何か見透かされた感じで少しモヤッとするな。って勝樹との接触をなるべく回避させなきゃいけないのに何やってんだ俺。はぁ……こんな調子で今日大丈夫かな……。


 ☆


「凄い迫力だったね!こっちまで水飛んでくるかと思ったよ!」

「だな。前じゃなくて良かった」

「俺らへの当てつけですか」

「そっちも濡れれば良かったのに」


ジャンケンで負けて前の方に座った俺と成瀬は、見事にイルカショーの水を被ることになった。カッパを着ていたので最悪な事態は避けられたが、完全に防御するのは難しく、所々濡れてしまった箇所がある。ちょい寒い。


「二人ともそう怒るなよ。ジャン負けしたのが悪いんだから」

「うんうん。それより次どうする?そろそろご飯かな?」


時計を確認すると時刻は11:30、昼には少し早い気もするが、どうしたものか。


「まだ少し早いし、もう少し見てからにしないか?」

「そうだね!どこ行く?」


勝樹の提案に仁美も乗る。こういう時に場を纏めてくれる勝樹の存在は助かるなぁ。


「喉乾いたから飲み物買ってくる」

「ん。いてら」

「何言ってんの?あんたも行くの」

「は?」

「女の子一人に重いもの持たせる気?」

「何?人数分買うつもりなん?じゃあ全員で行くか」

「俺と仁美は次見る所探すから行けないわ。な?」

「え?あ、うん」

「えー……」

「ほら、行くよ」

「あ、いや、ちょっと……」


俺の思考の余地も無く成瀬は俺の右手首を掴み、そのまま何処へともなく連れてかれる。いや力強えな。全然振り解けそうにない。大人しくついて行くしかないか。


成瀬に連れられ数分が経った。おかしい。確かに辺りに自販機らしきものは見当たらないが、ひたすら二人から離れようとしている様にも感じる。一切振り返らないので表情は分からないが。


「おい、どこ行くんだよ」

「…………」


成瀬は応えない。

左手に自販機が見えた。だが成瀬はこれをスルー。


「おい、自販機あったぞ」

「…………」


やはり何も応えない。流石におかしい。まるで二人から出来るだけ離れたい様な……。


「お前何がした……」

「こっち」

「あ、おい!」


俺の腕を強く引き、人気のない場所へ連れられる。俺に背を向けたままだが、掴む手は離そうとしない。


「なあ、もう教えてくれたっていいだろ。何がしたいんだよお前は」

「あんたに聞きたい事があってさ」

「何だよ聞きたい事っ……」


俺が言い終わる前に成瀬は俺を強く壁に押付けた。


「ってぇ……」

「これで、あんたは逃げられない」


気が付くと成瀬の顔が俺の目の前にあった。所謂ガチ恋距離とかいうやつだ。凄くドキドキする。恐怖で。


「こんな面倒な手を使わなくても良かったんじゃないか?」

「だってあんた逃げるでしょ?」

「逃げないって約束しただろ?」

「信用出来ると思う?」

「確かにな」


成瀬の言葉に俺は苦笑をこぼす。口約束に何の効力もない、ましてや俺との約束だ。信用出来るわけが無い。

予想外だったのは、成瀬がこんな強硬手段に出た事だ。勝樹との交渉の内容も想像は難しくない。俺に近付いてきたのも、俺の警戒心を和らげるため。ただ、そこまでして聞きたい事とは何か、皆目見当も……なんて言いたいが、大方予想は付く。間違いなくあの件だろう。


「それで、聞きたい事って何だ?」


俺は来たる質問に対し、考えを巡らせながら聞いた。成瀬は俺の目を真っ直ぐ捉え、口を開く。




「あんた、ほのかに何したの?」



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