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子供の頃のことが、走馬燈のように思い出される。
いつも一緒に遊んだ日々。可愛かった諒ちゃん。
中学の時、事故に遭った諒ちゃんは学校へも来なくなり、誰にも会いたくないと言って引きこもった。
「ずっと、逢いたかったよ…」
ポロポロ零れる涙を、諒ちゃんはハンカチで優しく拭ってくれる。
「ごめん…。事故の後、体が弱くなって外に出れない状態でさ…。そんな姿で皆に会うのが辛くて…」
申し訳なさそうな諒ちゃんが、気の毒になる。
「そんな状態だったら、誰にも会いたくなくなるよね…。こちらこそ、責めるような言い方して、ごめんね。今は、体は良くなったの?」
私が訊くと、諒ちゃんは「う~ん…」と、歯切れの悪い返事をした。
まだ、体に悪いところが残ってるのかな。
さっき、どうしてビルの屋上までジャンプできたの?
どうして、空を飛べたの?
どうして、私が追われてるのを助けるように絶妙なタイミングで目の前に現れたの?
訊きたいことは他にもたくさんあったけど、なんだか聞けない。
訊いてしまったら、諒ちゃんとまた会えなくなりそうで。
諒ちゃんが、また私の前から姿を消してしまいそうで、怖くて訊けないよ。
ずっと逢いたかった諒ちゃんの傍に居たい。
「陽菜姉…」
魅惑的な瞳が、私の心を捕らえて離さない。