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諒ちゃんは私を抱きしめると、ふわりと宙に浮いた。
諒ちゃんの胸に顔をうずめられ、どういう状況なのか全く見えない。
空を飛んでいるような風の感触が、体に心地良い。
速すぎず遅すぎない快適な速度で空を滑り、時折、翼のような音が聞こえた。
諒ちゃんの鼓動に、心が安らぐ。
繁華街の喧騒はどんどん遠のいてゆき、数分後、地面に着地すると、奇麗なマンションの前だった。
お姫様抱っこされていた私を、そっと降ろしてくれる諒ちゃん。
月光の下で私を見下ろす諒ちゃんはミステリアスで奇麗すぎて。
かっこいい…。思わず口からこぼれそうになる言葉を慌てて飲み込んだ。
「おいで」
諒ちゃんに手を引かれて、エレベーターで6階に上がり、『坂上』の表札の前で立ち止まる。
ドアを開け、「どうぞ」と歓迎スマイルをしてくれる諒ちゃん。
男の人の独り暮らしっぽい雰囲気なんだけど、入っちゃってもいいのかな。
でも、自分のアパートには帰れないし。また、怖いお兄さんたちが来るだろうし。
所持金もあまり無いし、甘えるしか仕方ないよね…。
私が戸惑っていると、隣の部屋のドアが開いた。