17 R
お互いが、求め合うように抱き締めあう。
こんなに好きなのに、諒ちゃんを忘れることなんて出来るんだろうか…?
厚い胸板に顔を埋め、諒ちゃんの熱い鼓動を感じる。
私のために、生きようとしてくれたんだ…。
私をずっと、想ってくれていた…。
そう思うと、諒ちゃんの体温が、たまらなく愛しい。
「陽菜っ、陽菜っ…」
まるで離したくないみたいに、息が苦しくなるほど強く抱き締められる。
自然に重なり合う唇。
やわらくて甘い諒ちゃんの唇に、時折、涙の味が混じる。
こんなに求めてくれているのに、どんな治療を受けているかなんて、問いたださないといけないことだろうか…?
諒ちゃんを失いたくないのは、私も同じ。
言いたくないことを無理に言わせて、大好きな諒ちゃんと離れなくてもいいよね…。
私が治療内容を詳しく知りたがらなければ、諒ちゃんと仲良く付き合っていけるかもしれないのに…。
無理に言わなくてもいいよって、私が言えばいいんだ。
私だって、こんなに諒ちゃんが好きなんだもん…。
でも、諒ちゃんのキスが止まらなくて、言いたい言葉を伝えられない…。
私も、諒ちゃんの唇が欲しくてしかたない。
どんどん深くなっていくキス。
頭の中が甘くしびれる。
諒ちゃんが愛しくて、離れられない。
「陽菜っ…」
諒ちゃんの熱い唇が、私の首すじを優しく愛撫する。
絶妙な唇の感触に、おかしくなりそうなほど惹かれてゆく…。
もっと、諒ちゃんが欲しい…。
叫びたくなるほど、甘い唇に焦らされて、泣きたくなる。
そのとき、首すじに冷たい感触と、強烈な快感が押し寄せてきた。
「ああっ!」
凄い快感が全身を駆け巡っていく!
今…何があったの…?
不埒な気持ちに心が支配されていくのがわかる。
こんな淫らな気持ちになったのは初めて。
なのに、諒ちゃんは急に私を放してしまった。
「5分の約束だったのに、少しオーバーして、ごめん…」
「嫌! 離れないで! 私を放さないでよ!」
気付けば、諒ちゃんを押し倒していた。
「陽菜…俺が欲しい?」
迷わず、うなづく。
我慢なんて、できなかった。
「後悔しない…?」
私を下に組み敷いて、首筋に愛撫を繰り返しながら、諒ちゃんが呟く。
「イジワル言わないでっ。私、諒ちゃんと別れるなんて出来ないっ!出来ないのぉっ…」
まるで、媚薬でも流し込まれたような感覚。ドキドキして、体が熱くて、もっと諒ちゃんに触れられたくてうずうずしてしまう。
どうして? 今までこんなことなかったのに…。
我慢できずに、自分から諒ちゃんにしがみつく。
「諒ちゃん、諒ちゃんっ…」
逞しい背中に腕を回すと、また首筋に、さっきの快感が走った。
「あんっ!」
体中が、甘くしびれてゆく。
気が狂いそうなほど、諒ちゃんが欲しくてたまらなくなるのに、それ以上、触れてはくれない。
「これで、俺の正体が分かった?」
火照った体に、諒ちゃんの冷めた声が響く。
「言葉にするのはつらいから、俺の行動から察して…?」
首筋を這う熱い唇に焦らされて身もだえる。もう…限界だ…。
諒ちゃんに溺れたい…。
「…諒ちゃんの正体が何でもかまわない…。諒ちゃんが、欲しい…」
息も絶え絶えで、うわごとのように口走っていた…。
その言葉を聞いて、私の首元に顔を埋めていた諒ちゃんは頭を起こし、やっと私を見てくれた。
「ごめん…。陽菜にそこまで言わせて…」
火照った私の頬に、やさしく触れる諒ちゃんの手のひら。
「陽菜…愛してる。
命を懸けて陽菜を守っていくから、俺を受け入れて…」
泣きながら、諒ちゃんは私を愛しそうに抱いた。
翻弄されて、わけがわからなくなるほど、諒ちゃんに溺れた。
優しい腕の中に包まれるのは心地よくて、とても幸せだった。
諒ちゃんの正体が、何でも構わない。
こんなに幸せな気持ちは、諒ちゃんとしか感じられないと思うから。
絶対、後悔なんてしない…。