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きみに心奪われたまま  作者: 松石愛弓
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朝4時ごろ、玄関のドアが開いた。

諒ちゃんが帰ってきたんだ…。


実は一睡もしないで待ってたけど、おかえり~♪なんて、出迎える度胸は無くて。


もしも、女性の香水の匂いがしたり、いつもと違うシャンプーの香りがしたら、神経太目の私でも笑えない。


こうやって布団にもぐりこんで知らないふりしてたら、見たくないものを見ないで済む。

夜に諒ちゃんに会ったって、何も無かったみたいに、笑える。


本当は、詳しく問い詰めたいけど、洗いざらい吐かせたいけど…。

そんなことしたら、喧嘩になるかもしれない。


諒ちゃんにセフレがいたって、まだ、諒ちゃんの傍に居たい。

もし、二股だとしても、今はまだ騙されていたいの。


だって、こんなに泣けるほど、諒ちゃんが好きなんだもん…。


枕が涙で濡れる。

ティッシュで鼻をかんでいると、諒ちゃんが私の部屋をノックした。


「陽菜。話があるんだけど」

諒ちゃんの真剣な声が聞こえる。


話って…。

もしも、その話を聞いたばかりに後悔することになったら…。


1.彼女がいっぱいいるんだけど15番目でも構わない?とか?

2.セフレが来たとき、クローゼットに隠れてくれよな。とか?

3.今から、磨き上げたテクで天国見せてやるぜ!とか?


どれも困るわぁ~。


特に、3は困るわ。マグロだって責められたら、私、どうしたら…。

何の知識も無いし、DVDとか見て勉強しておくべきだったかしら。

あんなの、レンタルで借りるの? そんな度胸試しみたいなことしないといけないの?

下着も上下バラバラで、クマちゃん模様だし。


総合的に、今、部屋に入ってこられたら困るわ!


「私は話なんてないわ。おやすみなさい!」

ふたたび、布団の中にもぐりこむ。


諒ちゃんと、今の穏やかな関係を崩したくない。

何も、話なんて聞いてあげないんだから!


「どうしたんだよ、陽菜!」

あっさりドアが開き、諒ちゃんが部屋に入ってきた。


そういえばこの部屋、鍵が付いてなかった…。


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