15
朝4時ごろ、玄関のドアが開いた。
諒ちゃんが帰ってきたんだ…。
実は一睡もしないで待ってたけど、おかえり~♪なんて、出迎える度胸は無くて。
もしも、女性の香水の匂いがしたり、いつもと違うシャンプーの香りがしたら、神経太目の私でも笑えない。
こうやって布団にもぐりこんで知らないふりしてたら、見たくないものを見ないで済む。
夜に諒ちゃんに会ったって、何も無かったみたいに、笑える。
本当は、詳しく問い詰めたいけど、洗いざらい吐かせたいけど…。
そんなことしたら、喧嘩になるかもしれない。
諒ちゃんにセフレがいたって、まだ、諒ちゃんの傍に居たい。
もし、二股だとしても、今はまだ騙されていたいの。
だって、こんなに泣けるほど、諒ちゃんが好きなんだもん…。
枕が涙で濡れる。
ティッシュで鼻をかんでいると、諒ちゃんが私の部屋をノックした。
「陽菜。話があるんだけど」
諒ちゃんの真剣な声が聞こえる。
話って…。
もしも、その話を聞いたばかりに後悔することになったら…。
1.彼女がいっぱいいるんだけど15番目でも構わない?とか?
2.セフレが来たとき、クローゼットに隠れてくれよな。とか?
3.今から、磨き上げたテクで天国見せてやるぜ!とか?
どれも困るわぁ~。
特に、3は困るわ。マグロだって責められたら、私、どうしたら…。
何の知識も無いし、DVDとか見て勉強しておくべきだったかしら。
あんなの、レンタルで借りるの? そんな度胸試しみたいなことしないといけないの?
下着も上下バラバラで、クマちゃん模様だし。
総合的に、今、部屋に入ってこられたら困るわ!
「私は話なんてないわ。おやすみなさい!」
ふたたび、布団の中にもぐりこむ。
諒ちゃんと、今の穏やかな関係を崩したくない。
何も、話なんて聞いてあげないんだから!
「どうしたんだよ、陽菜!」
あっさりドアが開き、諒ちゃんが部屋に入ってきた。
そういえばこの部屋、鍵が付いてなかった…。