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きみに心奪われたまま  作者: 松石愛弓
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諒ちゃんと、謎の美女は、ふたりで外出したようだ。

玄関のドアが閉まる音が聞こえて、思わず追いかけるように玄関に走りドアを開けた。

でも、もうすでにそこには2人の姿はなくて、代わりに隣の部屋の権俵さんが私を見下すような視線を向けていた。


「彼女、先生の編集で半年もここへ通ってるけど、私はそれだけの関係には思えないのよね~」

尋ねもしてないのに、気になる情報を提供してくる権俵さん。

「じゃあ、どういう関係だと思ってるのよ…」

気になってたまらない私は、つい聞いてしまう。

「あの人が来ると、先生、朝帰りすることがよくあるのよね。かと言って、彼女だとも言わないし…、てことは、セフレってやつ?」


せ…せふれっ?!

あの可愛かった諒ちゃんが、あんなにスーパーセクシーなカッコいいイケメンになってしまったのは、セフレと数をこなしたからなの?

いざという時に、私にガッカリされないために、テクを磨いていたとでも?(なぜにそこまで根拠も無く自信満々?)


「実際のところ、彼女とどういう関係かは分からないんだけど~。でも、もし何人かそういう女性がいたとしても、先生見てると芸能人みたいに綺麗だから、モテ過ぎてそういうこともあるのかな~って、許せちゃうっていうか~」

なぜストーカーに許しを請わないといけないのか疑問だが。


「同居できたからって、先生はモテるんだから油断してたらすぐ持ってかれるわよ?ふふっ」

油断してなくても、早速、持ってかれてるわよ!


「まっ、まだセフレと決まったわけじゃないし…」

「編集の人と朝まで一緒にいないといけない理由なんてある?今頃、ふたりは何処に向かってるんだか」

「うっ、うるさ~い! さっきまで私と良い雰囲気だったのよ! そんなことあるわけ…」

「朝帰りに千円!」

「私は賭け事はしないの!」

権俵さんの言うことを信じたくなくて、部屋の中へ戻りドアを閉めた。


♪♪♪~


その時、スマホにメッセージが入った。

諒ちゃんからだ。


液晶画面に愕然とする。


『今夜は帰れないかもしれないけど心配しないで』


やっぱり…やっぱり権俵さんの言ってた通りなの?

セフレと朝まで過ごすの?

そんなにテクを磨かなくても、私、初心者だから何も分からないしガッカリなんてしないのに!(なぜにそこまでプラス思考?)


そしてすぐ後に、もう1通、諒ちゃんからのメッセージが届いた。


『好きだよ。陽菜』


浮気をする直前に、こんなメッセージを送れるだろうか?


諒ちゃん。

あの女性とは、どんな関係なのですか?


あなたの言葉を信じていいのですか?


私も、あなたが好きです。すごく嬉しいです。


でも、このタイミングでの諒ちゃんの告白は、正直、微妙です…。

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