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「やぁ~ん、先生。この人、怖ぁい」
さっと諒ちゃんの後ろに回り込み、かよわい乙女の振りをする権俵さん。
その二重人格、そっちのほうが怖いわ!
どさくさに紛れて、勝手に家に上がり込んでるし!
「さっきまで、人のこと茶色い猿って言って笑ってたくせに、諒ちゃんの前だと急に態度が変わるのね」
思わず、本性をバラしてやる。
「え~? 私そんな失礼なこと言わな~い。先生、助けて~」
諒ちゃんにぎゅっと後ろから抱きつく権俵さん。くそぅ、うらやましい。
「もぅっ! さっきから諒ちゃんに触り過ぎなのよ!」
たまらず靴を脱いで、私も家に上がると、
「きゃ~♪」
権俵さんは絶好のチャンスと思ったのか、諒ちゃんから離れ、部屋の中を見て回るため奥へと走って行った。
「リビングはこんな感じなんだぁ♪ 素敵~♪ 先生のお部屋は~?」
「お待ちっ! この、ストーカー娘!」
これ以上、二人の愛の巣を荒らされてたまるかぁ!と、華麗?にタックルを決める私。
ウナギのように、にょろん、と逃げ出す権俵。(もはや呼び捨て)
しかし、いつの間にか目の前にいた諒ちゃんにあっさり捕獲され、ドアの外につまみ出された。
やっぱり諒ちゃんて、運動神経が良いわ~。
「陽菜姉、ヤキモチ焼いてくれるんだ…」
ふっ、と目を細めてうれしそうに笑う諒ちゃんに、撃沈。
声も、表情も、態度も。なんでそんなにカッコイイの? 爽やかなのにセクシーで。
腰砕けそうなんですけど…。
壁際に立ったまま、諒ちゃんに見惚れて動けないでいると、諒ちゃんは少しづつ私に近づいてくる。
えっ。これって。もしかして…。
諒ちゃんはすごく自然に、壁ドンした。
私は、人生初の壁ドンに緊張&感動で動けない。
諒ちゃんのしなやかな美しい手が指が、私の髪にそっと触れる。
そして、耳元で、
「この髪型、似合ってるよ」と囁かれ、
脳内に、心地よいセクシーボイスが浸透していく。
腰、砕けました…。