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どういう関係?って、突然聞かれても…。
これから恋人になりたいって思ってるの♪なんて言ったら、火に油を注ぐようなもんだろうし。
「私は、坂上くんの幼馴染です。ちょっと事情があってお世話になってるんです」
「事情って?!」
ストーカー女子・権俵さんの顔がますます近づいてきて、思わずのけぞる。
年齢は同じくらいに見えるのに、初対面なのに、なんでタメ口?
「あなたに事情まで話す必要ありませんよね?」
正論で返す私。
「だってすごく気になるんだもの!昨夜だって気になって一睡も出来なかったのよ!」
知らんがな…。
思わず、困ったちゃんを見る目になってしまう。
「あっ!今、バカにしたわね!心の中でバカにしたでしょ!きぃ~!悔しい~!」
地団太を踏み始める権俵さん。
きぃ~っ!って、今時、ギャグマンガの主人公でも、なかなか言わないセリフだし。
ここまで性格が突き付けてると、彼女が可愛く見えてくるから不思議だ。
実際、見た目は私より可愛い。
茶髪のゆるふわロング、アイドル系のかわいい顔。ヒラヒラした高そうな可愛いワンピース着てるし。
ボブカットで地味で平凡などこにでもいる感じの私には、敗北感半端ねぇ。
「あなたみたいな地味な人に、先生は渡さないんだからぁ~っ!」
前言撤回。やっぱり、かわいくない。
「地味のどこが悪いのよ~!あんたみたいにキラキラし過ぎてるのも、目がチカチカするのよ!」
「あっ!地味って認めたわね!地味って!」
「うるさ~い!地味地味言うな!」
社外の人にだと、なんでこんなに言いたいことが言えてしまうのだろう。
ガチャ
権俵さんの隣の部屋のドアが開き、
「うるさいわねぇっ。他でやってよ、他で!」
バタン!とドアが閉められ、
「「すいませ~ん…」」
わたしたちは、ハモりながら謝った。
「もぉっ!怒られちゃったじゃないの~!」
声を殺しながら、まだ抗議を続ける権俵さん。
「私、急いでるからもう行きます。しばらく、諒ちゃんと一緒に暮らしますから、荷造りしなきゃ」
思わずドヤ顔で言うと、
「諒ちゃん、ですってぇ~っ!!やめてよ、私の先生に、そんな馴れ馴れしい呼び方!」
権俵さんは信じられないという顔をして、髪を振り乱して怒り出す。
「また、うるさいって怒られますよ♪」
地味呼ばわりされた仕返しとばかりに、ふふん、と笑いながら言ってやる。
「くやし~~~!!」
必死で声を殺しながら地団太を踏む権俵さん。
しばらく、彼女との攻防が続きそうだ。