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初恋 女

作者: たなちょ

夕方から降り出した雨が、少し和らいできた。


私は雨の日に生まれた。だからなのか、決まって誕生日には雨が降る。

雨でも晴れでも、誕生日の夜は散歩に出かける。あなたがくれた傘をさしたくて、あなたのことを想いたくて。


10年前

誕生日にあなたが傘を貸してくれた。

その傘を、あなたはそのまま私にくれた。

今でも色褪せない、あなたに出会った日。


9年前

仲間とあなたが一緒に祝ってくれて、嬉しかった。


8年前

誕生日の数日後に、あなたがおめでとうと言ってくれた。直接言ってくれたことが、何より嬉しかった。


7年前

一人で過ごした。雨の散歩では、あなたが好きな店の前を通った。


6年前

一人で過ごした。雨の散歩では、あなたに会いたいと心から思った。

あなたにとって、私は大勢の一人。私にとってあなたは、たった一人。わかっていたけど、涙がこぼれた。


5年前

仲間がお祝いしてくれた。あなたが来てくれたのは予想外だったけど、やっぱり嬉しかった。


4年前

あなたに、来年も祝うよといわれ、嬉しかった。来年、忘れられている私が頭に浮かんで、少し可笑しく

、少し寂しくなった。

あなたには気づかれたくない想いを飲み込んで、笑った。


3年前

親しい友人が花をくれた。嬉しかった。彼を好きになれたらと、少しだけ思った自分が嫌だった。

あなたは、何をして過ごしていたのかな。


2年前

一人で過ごした。雨の散歩では、あなたの笑顔を思い出して、幸せだった。


1年前

一人で過ごした。雨の散歩では、あなたが今何を思い、何をしているのか、目を閉じて思いを馳せた。


今夜もいつも通り、傘をさして散歩しよう。

10年分の思いを、そろそろ整理する頃だ。


雨が上がる前に出かけたい。この雨が、全部流してくれたら、どんなにいいだろう。


もし今夜会えるなら、最後に私を見つめてほしい。

そのまま目を閉じて、あなたのこと、忘れたいのに忘れることない初恋の思い出にするから。



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