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屍者の国  作者: ふるか162号
1章 魔王城再建
8/20

2話 犬人の森にて

 

 ベルに強制的に転移された俺は、転移の光で目を開けていられなくなる。


 ベルの野郎。後で、覚えておけよ!!

 

 目を閉じて暫くすると、転移が終わったのか、光が止んでいることに気付く。

 目を開けるとそこは、俺の記憶にある森だった。


「ここは、犬人の集落のあった森じゃないか。この森には()()()()()があるから判りやすいからな」

 

 しかし、驚くのはベルだ。アイツは亜人との交流はあったのか? 俺が犬人に会ったのがこの森だと、何故分かったんだろうか?

 そのことは、帰ってからベルに聞くとしよう。


 犬人の集落のあったこの森は、葉の色が青い木が生えている。勇者として色々な場所に行ったのだが、こんな木が生えている場所は、ここ以外には無かった。

 イグニスが、「ここは他の森に比べて、海の魔力が充満している」と言っていたな。

 勇者だったころの俺には魔法の才能がなかったから、海の魔力と言われても、何を言っているかは分からなかったが、リッチキングとなった今なら何となくわかる気がする。


 海の魔力というのは、こういうことを言うのか……。

 何と言ったらいいのだろう……。水につつまれているというか、深海にいるような気分になるというか……。不思議な感覚だ。


「まぁ、今はそこは良い。犬人はどこだろうか? どうも、この辺りにはいない気がするな」


 俺は森の奥に入って行く。

 しかし、いつでも魔王城に帰還が出来るというのは、安心感につながるな。勇者時代にこの森に来た時は、独特の雰囲気にのまれて、足が前に進まなかったのを覚えている。

 恐怖感とでもいうのだろうか。

 俺は元々、ただの村人だ。勇者という肩書がなければ、こんな森に入ることもなかっただろう。

 それは俺以外の奴も同じで、この森を進むのに偉く時間がかかった。

 そもそも、この森の奥に試練があると言われ、行ったんだよな……。あの頃はこんなことになるなんて、思いもしなかった。

 そういえば、魔導士であるオズマだけは、歳を重ねているせいか、気にせず進んでいたな。


 

 森の中を進むと、木々が深くなり、日もあまり差さなくなる。薄暗くなってきたな。

 青い葉が日に透けて幻想的にはなるんだがな。今は一人だからかどうかは知らないが、この光景が不気味に見える。


 暫く進むと、道が開ける。

 ここには太陽の光が差し込んでいる。ここで休憩をしてもいいかもな。まぁ、どうも疲れてはいないようだから、休む必要もなさそうなのだがな。

 これも、俺が屍者だからだろうな。

 それにしても綺麗な場所だ。ここでなら、青い葉の木も綺麗に見えるな。

 落ち着いたら、メリアと一緒にここでピクニックもいいかもしれないな。


 俺は、この場所を散策するかのように回る。


 ん? ここだけ焦げているな。

 俺は地面を調べてみる。これは焼け焦げた跡? 魔法による焦げ方だろうか? それとも焚火か? 

 いや、焚火は無いな。そのような跡とは思えない。

 ここで戦闘があったのか? 開けているとはいえ、ここは森の中だから魔物くらいはいるだろう。魔物の中には魔法のような咆哮や火の息を吐く奴もいる。だから戦闘痕ならば、このような焦げ方もあり得るか……。

 しかし、腑に落ちない。勇者時代にこの森で何日も過ごしたが、いたのはゴブリンかコボルトくらいだ。火を吐くような魔物はいなかったはずだ。

 俺が死んでから十年は経つのだから、新種などがいてもおかしくはないが……。

 いや、魔物同士の戦いならば、どちらかが死ぬまで争うはずだ。この周辺には魔物の死体は無かった。

 じゃあ、冒険者か? しかし、この森には冒険者の興味を引くようなものはなかったはずだ。

 試練があると言われていたのも、結局はガセだったからな。

 

 俺は周りを見回す。

 すると、かなり遠くの方に、人が倒れている。


 怪我人か!?


 俺が急いで近付くと、それは死んだ犬人だった。

 正直犬人の性別は俺には判別できない。が、何故死んだのかは分かる。

 これは何かと戦闘したうえで殺されている。斬り傷が多く、命からがら逃げて、恐らく血を流し過ぎて死んでしまったのだろう。

 この体には焦げた跡もある。先程の焦げ跡があった場所で戦ったのか?


「この犬人が生きていれば、話を聞くことが出来たのだがな」


 俺の脳裏に、屍蘇生という言葉がよぎった。

 しかし、この犬人を屍蘇生したところで、協力してくれるかが問題だ。それどころか恨まれる危険性もある。

 そう思っていた時、ふと以前会った犬人ことを思い出す。


 彼等、犬人は人間に友好的だった。だから、助けられるものは助けたい。

 それが例え、俺のエゴだとしてもだ。


「カダ―ベール・レスレクシオン!!」


 俺は犬人を復活させることにした。これで強制的に俺の眷属となるわけだ。

 だが、この犬人が拒否を示した時は自由にしてやろう。 

 自由に生きたいと望めば開放するし、死にたいと思うのならば死なせてやろう。


 魔法をかけて少しの時間が経つと、犬人が起き上がる。


「あれ? 僕は死んだんじゃ?」


 犬人は、自分の体を見て、戸惑っている。


「気分はどうだ?」

「え? に、人間!? どうしてこんな所に!?」


 俺は、犬人を生き返らせたことを説明する。ただ、屍者になったことは、まだ説明していない。

 これは、俺なりの思いやりだ。真実を語るのは、もう少し落ち着いてからでいいだろう。


 この犬人は『ノービス』という名だそうだ。

 彼は雄で、年齢は十五歳だそうだ。


 ノービスは、生き返らせた俺に感謝していた。

 真実を知ったとしても、感謝できるかどうかは分からない。けど、今は話を聞いてくれるだけでも構わない。


 ノービスがなぜあんなところで死んでいたのかを説明してくれる。


「コボルトが、集団行動をとっていただと?」

「はい」


 ノービスの話では、コボルトが集団で犬人の集落を襲って来たらしい。

 村の戦士が、果敢に戦ったのだが、質よりも数できたコボルト達に、やられてしまったらしい。

 彼も戦士として戦ったのだが、まだ新人だったので、少しでも数を減らそうとここまで逃げたらしい。

 逃げたと言っても、仲間を見捨てたわけではなく、敵を引き連れて逃げたのだという。

 

 しかし、ここで疑問に思うことがある。

 俺が知る限り、コボルトは単独行動が多かったはずだ。

 この森で何が起きているんだ?

 

「お前以外の犬人はどうしたんだ?」

「あ、はい。この先にある洞窟に身を寄せ合っています。あ!! 早く助けに行かないと!! あそこには、戦えない犬人しかいないのに!!」


 こいつは一度殺されても、自分達の仲間が気になって助けに行こうとする。

 俺は正直こういう奴が……。


 大好きだ!!


 ついつい助けてやりたくなる。


「よし!! 助けに行くぞ!!」

「あ、はい!!」


 

 犬人が隠れているという洞窟は、森を抜けたところにあるそうだ。

 急いで洞窟まで来たのだが、森を抜けようとしたとき、俺は不穏な空気を感じた。

 ノービスは、洞窟に早く辿り着きたいのか焦っているが、俺がノービスを止める。 


「おい、ノービス。お前はここにいろ。俺が様子を見てくる」

「どうかしましたか?」

「洞窟の外に嫌な気配を感じる。お前はここにいろ」

「ぼ、僕も行きます!! 皆を守らないと!?」


 正直、ここに来るまでは、こいつは一人で逃げたんじゃないか? と疑っていたが、本当に仲間を守ろうとしている様だ。

 多数に無勢で再び殺されるかもしれないのに、それでも戦いに行こうとしている。

 こいつはここで死んでも構わないと思っていそうだな。まぁ、死なないんだけどな。

 

「分かった!! お前は()()()()()()()()()()()()()()()!! ただ、強くなったわけじゃないから無理だと思ったら逃げろよ!!」

「え? 死なないって?」

「そこは後で説明してやるから、俺を信じろ!!」

「は、はい!」


 洞窟の前に出ると、案の定、コボルトが群れて洞窟に入ろうとしている。しかし、犬人の一人が必死にそれを押さえていた。


「おい!! 手助けするぞ!!」

「え!?」

「ノービス!! お前は無理をするなよ!! 死なんと言っても、強くなったわけじゃないからな!!」

「はい!!」


 洞窟入り口を守っていた犬人は、俺とノービスを見て驚いている様だった。

 しかし、今はそんなことで手を止めている暇はない。

 コボルトの数は二十前後。さほど多くはない。


 俺は、コボルト達を斬りながら考える。

 このコボルト達は群れている。少なくとも、俺が戦ったコボルトは群れはしなかった。せいぜい五匹一緒にいれば多い方だった。

 それに、気になったのは、コボルトの目だ。目の焦点が合っていないというか、目が操られている感じがする。



 コボルト自身の強さはたいしたことが無かった。

 まぁ、コボルトは低級の魔物だ。俺も一応は元勇者だからな。このくらいなら、息を切らさずに倒せる。というか、今の俺は息が切れるのだろうか? 息はしているから……うーん。わからん。

 しかし、予想外のこともあったな。ノービスだ。こいつかなり強いぞ。とはいっても、犬人にしてはだが……。

 こいつが、このまま俺の仲間になってくれれば、ありがたいんだけどな。


 あぁ、当初の目的を忘れる所だったな。


「ノービス。お前達の中で一番偉い人の所へ案内してくれ」

「分かりました!!」


 洞窟の入り口で頑張っていた犬人との、再会を喜んでいたノービスに道案内を頼み、俺達は洞窟へと入って行った。

面白いと思っていただければ幸いです。

もしよかったら感想や、アドバイスなどがありましたら是非よろしくお願いします。

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