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屍者の国  作者: ふるか162号
序章 そして俺は……。
6/20

6話 俺が処刑されてから十年経っていた。


 俺は魔族の女性や子供達に話を聞こうとした、だが、俺の姿を見て子供達は泣き叫び、女性達は顔を青褪めさせている。俺は元・勇者だからな。

 しかし、俺は四天王以外の魔族と殆ど会ったことが無い。しかしこの怯えようは? 俺の顔を知っているのか? 

 それに、ここにいる魔族達は不思議だ。男性の魔族や、老人達がいない。

 四天王は男だったし、男性型がいるのは間違いない。魔王城の腹心は老人だったから、歳を取らないということもないはずだ。

 こういう事情も聞きたいが、俺が聞いても答えてくれないのであれば意味がない。


「ベル、俺の代わりに話を聞いてくれないか? 俺では、魔族を怖がらせる」


 よく考えれば、俺は魔族がこうなった原因である勇者だ。怖がるのも無理はない。

 しかし、ベルは「今のお前は勇者ではない。お前が聞かなければ意味がないのじゃ」と尻を蹴られた。

 お前も原因が知りたいんじゃないのかよ。と、愚痴っても仕方が無い。俺は怖がらせないように話を聞こうと必死だった。そんな時。


「カイル。私も手伝うわ」


 そう言ってくれたのはメリアだった。

 メリアは優しい顔で子供に近付いた。子供は最初は怯えていたが、彼女が両手を広げて優しく「おいで?」と言うと、少し警戒しながら近付く。

 そして泣きながらメリアに抱きついた。

 これを見た女性達は驚いていたが、その反面、子供達はメリアに集まっていった。


 メリアは女性達に「私達、人間が怖いのは分かります。けれど、原因も分からず怖がられるのは、何とも言えない気持ちになってしまいます。お話を聞かせて貰えませんか?」と優しい顔で頼んでいた。


「じ、実は……」


 ようやく女性の一人が話をしてくれた。

 その話を聞いて俺達は困惑することになる。五年前に、魔族に殺された勇者の敵と言い、アロガンシア王国の精鋭達が攻め込んできたと。

 何故アロガンシアの精鋭と分かったというと、魔王城を襲って来た人間が金色の鎧を身につけていたということを聞いたからだ。

 この金の鎧は、アレスの好きな色だ。アレスが自分達を守る騎士には金色の鎧を着せていることは、仲間内で良く話のネタになっていた。

 しかし腑に落ちない。


「五年前ってどういうことだ? 俺が死んだのは、最近のはずだ。ベル、お前が復活したのはいつだ?」

「え? わしはお前が復活したのとほぼ同時期に復活しておる」


 俺とベルが困惑していると、魔族の女性が「魔王様が倒されたのは十年前になります」と言った。

 十年!? 俺も驚いたが、ベルを含む俺の村の皆も驚いていた。


「そんなに経っていたのか……今の話を聞いて一つ疑問に思ったことがあるんだが、ベル、お前に聞きたい」

「なんじゃ?」

「お前は本当に俺に倒されたのか?」


 ベルは四天王は瀕死で逃げていたと言った。と、言うことはベルも同じことをしていてもおかしくはない。

 だが、一つ気になることもある。ベルは俺と同時期に復活したということだ。

 復活ということは死んでいたのか? 俺と同じように?


「いや、わしはお前に倒された……、いや、封印されたというのが正しい。魔王を完全に滅ぼす為には、勇者と相打ちさせる必要があると文献には書いてあった」


 その話は初めて聞く。

 恐らくアレス達も知らなかっただろう。知っていたら、どんな手を使ってでも魔王と俺を相打ちにさせていたはずだ。

 

「成る程な……。しかし十年か……四天王はどうなったのじゃろうか……」

「それは私がお答えします」


 一人の女性がベルの前に立つ。


「おぉ!! 其方は!!」


 彼女は『エリアル』風の四天王の一人娘だそうだ。

 エリアルが話してくれた内容は酷いモノだった。


 アロガンシアの軍勢が攻めてきたのは突然だったそうだ。「勇者カイルは魔族によって殺された。今こそ仇を取る!!」と叫んでいたそうだ。

 最初の襲撃では四天王の活躍もあり、被害も最小限で追い返すことが出来たそうだが、アロガンシアは連日攻めてきたそうだ。

 流石の四天王でも、毎日のように戦えば、疲労が重なる。

 更に、四天王はできるだけ人間を殺さないように追い返していたそうだ。それが仇になった。

 怪我が治った兵士はさらなる復讐心を燃やし攻め込んだ。そしてそれが繰り返され、四天王の一人が倒れ、そしてまた一人倒れた。

 最後の一人がエリアルの父親だった。

 エリアルの父は強かった。名前までは聞いていなかったが、武人として正々堂々戦った。

 そんな彼でも物量には勝てなかったらしい。


「後は、魔族の男性達が戦いを挑み、全滅。そこからはこの地下で身を寄せ合って生きてきました」

 

 エリアルの表情から疲労の色が見える。

 しかし、エリアル達の恐怖はここから始まった。

 人間であれ、魔族であれ生きるには食べることが必要だ。

 魔族の老人達が、女子供を危険な目に遭わせるわけにいかないと、率先して食料の調達に出かけたらしい。

 暫くは、それで生きてきたのだが、最初の襲撃の一年後、再びアロガンシアが攻めてきたらしい。

 老人達はその時に戦い、皆殺しにされたらしい。


「その後は、毎年その日に人間が攻めてきて、『襲撃祭』という名で、新人兵の研修の場に使われお祭り騒ぎを起こしています」

「趣味が悪いな……」


 俺の守りたかった人間は、本当にそんなに醜いものなのか? 魔族が嘘をついて……いや、エリアル達の顔をみれば、嘘をついていないのは分かる。今まで本当に不安だったのだろう。


「なぜ、今まで逃げなかったんだ? 毎年来るのが分かっていれば、逃げることは容易だったはずだろう?」

「逃げられません。いつかはベルゼブブ様が復活なさると信じていましたから。それに魔王城(ここ)は私達にとっての故郷ですから」


 故郷か……。

 彼女達を何とか守れないか?

 そういえば俺の力は……。


「ベル、俺の力で殺された魔族を復活させることは出来ないのか?」

「無理じゃ……」


 即答だった。ベルの顔は沈んでいた。

 ベルの話では、魔族というのは人間に比べ十倍以上の寿命がある、その代わりなのかどうかは分からないが、一度死ねば二度と復活することは出来ないそうだ。

 魔族であるエリアル達もこのことは知っているようだった。

 だからこその絶望なのだろう。


「それならば、ベルが復活した以上、ここにいるのは危険だ。どこか遠くの地へ逃げよう」

「貴方は勇者のはずです。父から容姿や性格などは聞かされていました。何故、敵である私達を助けようと? 貴方も魔族に殺された……? なぜ生きているのですか?」


 俺はエリアルに自分が死んでリッチキングになったこと、故郷の皆がどうなって殺されたかを説明した。

 彼女は絶句していた。それはそうだ、一般的な魔物というモノは意志を持たない。だが、俺達は全員意思を持っている。


 俺とエリアルが話し込んでいると、村長が俺に話しかけてきた。


「カイル、私達もここに残ろうと思っておる。こんな幼子が多い魔族の皆さんを見捨てることは出来ない」

「村長!? ここは危険なんだぞ!!」


 いくら死なないとはいえ、毎年のようにアロガンシアが攻めてくる。毎年恐怖に怯えながら生きることになる。それだけは駄目だ。


「カイル。私もこの子達を放っておけないわ」


 ミリアまで……。

 しかし、放っておけないのは事実だ。どうする?


「ベル、お前の意見を聞こうか」

「わしか?」

「あぁ、ここに留まるのならば、アロガンシアを追い返さなければいけない。そうじゃなきゃ、復興も何もできないからな。もし、そうなれば四天王を倒されたときの様な状況になりかねん」


 復興を始めれば、そこに魔族がいるとアロガンシアの連中は襲撃当初と同じことをするだろう。

 そうなった場合、大規模な戦争になりかねん。それこそ、ここにいる者を危険に晒すことになる。


「わしはここに残る。一人で人間を押さえて見せる、だから皆を逃がしてくれ」


 幼女の姿でそんなことを言われてもな……。


「カイル……」


 はぁ……。メリア、そんな目で見ないでくれ。

 腹を括るか……。


「よし、ここに残ろう!!」

感想などがあればよろしくお願いします。

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