4話 そして、俺達の今後が決まった。
メリアとの再会を喜んだあと、俺は村の皆を集めた。
そして再度頭を下げた。どうしても俺としては譲れないものがあった。
村の皆は「俺は悪くない」と言ってくれるが、俺が勇者だったせいでこうなったのもまた事実だ。
勇者に選ばれたときは、この世界を救うつもりだった。俺が選ばれたことも運命だと思っていたし、俺が勇者になればメリアだってもっと幸せにしてやれると思っていた。
だが、現実に起こったのは、仲間の裏切りと、俺の巻き添えに故郷が殺されたという事実だけだった。
謝って許されるものじゃない。復活したから許されるモノでもない。そんなことは分かっているのだ。でも、俺自身の為に謝りたかった。
次に、あまり紹介はしたくなかったが、ベルを皆に紹介する。
ベルが魔王だということに皆は驚いていたが、こいつの見た目は褐色幼女。人間としてみれば可愛いと思うのだが、こいつの元は蠅だ。まぁ、今となっては俺達も魔物なんだがな。
俺がリッチキングで、村の皆はフレッシュゾンビという姿形は人間と変わらないゾンビだということらしい。
ベルは俺達のことを説明してくれる。
まずリッチキングである俺が皆の生を握っているとのことだった。
リッチキングの力に眷属化というのがあるらしく、村の皆は眷属ということになるらしい。
つまりは俺が死ねば皆が死ぬし、俺が死ななければ村の皆が死ぬことは無いというのだ。
次いで、俺達の体についてを説明してくれた。俺達は死者なので、年老いたり、成長したりすることは出来ないそうだ。
だが、逆に若返ることは可能らしい。それを聞いてテンションが上がっていたのが村の中高年の連中だ。
村長もそこに物凄く食いつき、ベルに迫っていた。幼女に縋る爺……見た目が最悪だが……。
若返る方法は落ち着いてからということになったのだが、俺は今までの話を聞いていて、一つ心配になったことがあった。
それは記憶だ……。
俺は死んだときの記憶を鮮明に持っている。当然、痛みも苦しみもだ。だが、俺の場合は恐怖は無かった。それは、今まで勇者として戦ってきた中で、死ぬ時よりも苦しい思いは何度もした経験がある。だからこそ、そこまで気にしていないのだが、村の皆はどうなのだろうか……。
そう心配していたのだが、村長が「実はな、私達も記憶を持っているが、痛みも苦しみも感じることは無いんだよ」と言ってくれた。
気遣いか? とも思ったが、ベルの話ではそうではないらしい。
ベルが言うには、死霊系の魔物というのは死や苦痛にたいしての感情が薄くなってしまうそうなのだ。
「俺は鮮明に残っているのだが?」
と、聞いてみたのだが、ベルが言うには、俺は魔物ではなく、一応魔族ということになるそうだ。
いや、魔族というよりも亜人と言った方が近いかもしれないな。
ベルは俺の村の人間も不思議だとも言っていた。
普通、リッチキングが使役するために作った使者には知能がある者はいない。知能を持ったまま死霊系の魔物になることはそうそうないとも言われた。
ベルの推測では、俺の中にある勇者の力が変化して、奇跡に近い力になったかもしれないとのことだった。
俺達は今後について話し合うことにした。
ベルが言うようにアロガンシア王国に復讐するかどうかだ。
俺、個人としてはメリアや、村の皆が戻ってきてくれたのなら復讐などする必要はないと思っている。だが、村の皆が望めば俺自身も協力するつもりではいるのだが。
メリアは復讐には興味が無いと言っていた。俺と同じ気持ちになってくれている様だ。他の皆はどうだろうか?
「ワシらはそんな面倒なことはしとうない」「ボクも同じです」「私も」「うちもや」
ベルは皆が復讐を否定するので、アワアワとしだしている。
「ま、待つのじゃ!! 貴様らが復讐して負の感情を出してくれんと、わしが復活できんではないか!!」
復活……ねぇ……。
俺はベルを半目で睨む。ベルもこれに気付き、顔を青褪めさせている。
俺はベルの頭を掴み話を聞こうとするが、メリアに止められる。
「ベルちゃんが可哀想でしょ!!」
「な!?」「にょ!!?」
俺とベルが同時に驚く。
俺は当然こいつを魔王と知っているし、こいつとは命のやり取りもしている。
ベルとしても、魔王としてのプライドもあるだろし、威厳……今の褐色幼女状態だからか威厳も何もないが、こんな子供扱いされたことに驚いているのだろう。
とはいえ、ベルはメリアの膝に座らされている。ベルは少し暴れているが、頭を撫でられて大人しくなっている。
こうしてみると本当に子供……、いや、こいつは元蠅で、今はテントウムシなんだが……。
「ベル。このままここにいても仕方が無い。どこか静かに暮らせそうなところは無いか?」
「静かにじゃと? う~む。無いことも無いが、ここから少し遠いな。お前らどうやって移動するつもりじゃ?」
「遠い? どこだ?」
「勇者等が荒らしまわってくれた、魔王城じゃ」
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