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褒めたら育つなんて嘘だ。

「魔法訓練ー? 面倒ー」

「本当それしか言いませんよね、シュバリエ」

「私はやるぞ」

「原語魔法使える人は黙っていてください」

 魔王配下最強とされる四天王にも、得手不得手というのが当然ある。

 もちろん、彼らは最強と呼ばれるに相応しい武力と魔力を持っている。──だが、それら全てのバランスが取れているというわけではないのだ。

「おらは参加しなくていいだか? サージュ」

「アミドソルは戦士タイプですから、今のままで充分ですよ」

「俺だって戦士タイプだしー」

 屁理屈を捏ねる鬼人・シュバリエの髪をサージュは容赦なく引っ張る。

「いだだだだっ」

「貴方は魔法剣士タイプでしょう? ちゃんと魔法剣士を名乗るならもっと繊細な魔法の扱いを覚えるべきです」

「あのー、私は……」

「アルシェは範囲攻撃特化型なんですからもう威力も充分ですっていうか魔力のコントロールできないんですから戦闘以外で魔法使わないでください」

 ちなみにかくいうサージュは魔法使いタイプである。もちろん、魔法使いが近接戦闘タイプと当たったときの欠点、近接戦闘手段がない、ということも克服している。

 つまり、魔王四天王の面々で最も魔法に詳しいのはサージュなのである。

 魔力の量で表すなら、アルシェ>サージュ>シュバリエ>アミドソルとなる。一番少ないアミドソルは一族に伝わる独自の魔法によりその本領を発揮するため、サージュの管轄外である。

 それに、アミドソルは魔力は少なくないが、実はその土塊の体を魔力で繋いでいるため、余った魔力しか使えないのだ。サージュには手の施しようがない。

 けれど、それでも魔王四天王、アミドソルは強い。肉弾戦なら、ここにいる四天王の頂点に立つだろう。アミドソルの強さは完成されているのだ。

 それに比べ、シュバリエやアルシェと来たら……とサージュは頭を抱える。

 アルシェは魔力が多いだけあって、魔法の飲み込みはよかった。今や神しか操れぬと謳われる原語魔法を行使するほどだ。原語魔法は魔力の消費が激しい代わり、かなり強力な効果をもたらす魔法である。魔法に長けた一族である風の民のサージュでさえ、五発放てればいい方だ。それをアルシェは平気な顔で百発放つ。

 ただし、問題はアルシェの使い方だった。アルシェはほぼ無尽蔵に魔力があるため、原語魔法を惜しみなく使う。……普段使いで。

 原語魔法は高威力である。普段使い……例えば、風呂にお湯を溜めたり、暑いときに水浴びしたりするために使うようなものではない。

「アルシェが活火山を強制鎮火させてから掘り出した温泉はよかったな」

「そういう問題ではないんですが」

 まあ、そんな逸話もある。

 一方、シュバリエはというと、彼はあまり魔法が得意ではない。得意ではないといっても、魔王四天王基準なので、セフィロート標準からしたら随分できる方なのだが。

「勇者になるダート持ちを弟子にしていたと言いますがね、まだまだ貴方のやり方じゃ甘いんですよ」

「リヴァルは簡単に伸せたが」

「子ども相手に本気で叩きのめす大人げなさというのを考えてください」

「師匠が本気じゃなきゃ弟子も本気にならん」

「本気になった弟子に負けそうで怖いと言っていたのはどこのどなたですか」

「う、リアンの話は出すなって……」

 シュバリエは人間よりは圧倒的に強いため、魔法の鍛練を怠りがちである。が、ダートの使い手──魔法とは異なる能力の担い手を相手にするとなると、また話は変わってくる。

 人間のダート持ちには二人いて、シュバリエが口にしたリヴァルというのが炎の使い手、リアンというのが熱気・冷気の使い手である。

 特にリアンはシュバリエ自身も実力を認めているし、火魔法が得意なシュバリエとは相性が悪い相手だ。人間のダート使いに負けているようでは、魔王四天王の面目が立たない。その上、シュバリエの師匠という立場も危ぶまれる。

「女神様の復活まで、我々は持ちこたえなければならないのですから、それぞれの得意な戦術に見合った魔法技術を身につけなければなりません」

 まずは、とシュバリエにびしりと指を向ける。

「シュバリエは氷魔法を覚えてください」

「なんでだよ! 俺は炎一本でやってく」

「だから甘いというのです。リアンとやらの冷気に対抗する術を身につけるためにも相克というのを克服しなければならないのです」

「もっともらしくて嫌だ」

「らしいんじゃなくてもっともなんです!」

 渋々サージュの言うことを聞くシュバリエ。


 数時間後、飲み込みは悪くないので習得したシュバリエ。ぜぇはぁ言う彼の頭をサージュは撫でる。

「よくできました。千里の道も一歩から、ですよ」

「なあサージュ、一歩が千個の魔法習得ってことか……? 長くね?」

「細かいことを気にしていると禿げますよ」

「細かくないし、禿げねぇよ!?」

 余談だが、額に角が生える鬼人は額がどんどん後退していき、最終的に脳天が更地になる傾向があるという……まことしやかな噂である。

「まあ、今日はここまでで」

 そう言って、サージュが去ると、そっとアルシェがシュバリエに近寄る。

「シュバリエ、いいこと教えてあげる」

「ん? なんだ? アルシェ」

「火魔法と水魔法を習得したからこそできること……」




 数日後、ゲブラー陥落に行ったシュバリエがアルシェが独自に作った爆発魔法が使ったことが発覚し、サージュが「なんでだぁぁぁぁっ」と神殿で叫ぶことになるのだった。



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