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脳まで筋肉って知ってますか?

 ここは生命に満ち溢れたセカイ、セフィロート。生命の神が司るセカイで、人間以外の種族も暮らしている。

 ただ、このセフィロートには生命の神の対抗神として、破壊の女神・ディーヴァがいる。ただ、ディーヴァが破壊の女神であることを知る者は少ない。そのため、セフィロートでは一般的に闇の女神と呼ばれている。

 そんな闇の女神を崇める魔物の一団が魔王を名乗るノワールの下に集い、決起して、人間を滅ぼそうとしているのがセフィロートの現状である。現在、セフィロートは十都市あるうち六都市をも魔王軍に乗っ取られている。

 魔王軍は闇の女神復活のために人間に侵攻している。何故人間に侵攻することが闇の女神の復活に繋がるか、わかっている者は少ない。

 そんな戦いの意味をわかっている中の一握りに魔王四天王という、魔王軍を統率する魔王軍最強の四人がいた。


「あー、だりぃ」

「本日第一声がそれですか。とても魔王四天王筆頭シュバリエの一言は思えませんね」

「五月蝿い、ちまちま何やってんだ、サージュ」

風精霊(シルフ)魔法の小型化です」

 聞いているのかいないのか、ふわぁ、と欠伸をする鬼人のシュバリエは朝起きたばかりだからか、髪がぼさぼさである。その威厳のない姿に、指先で色々ちょこちょこやっているサージュが深い溜め息を吐く。

 この寝起きが残念な青年がまさか昨日セフィロートの一都市を滅ぼした魔王四天王とは思うまい、とサージュは内心で嘆く。

「つうかお前、一昨日の夜から寝てなくね? 一昨日からずっとその風を操ってるよな、綾取りみたいに」

「おや、シュバリエは綾取りを知っていましたか」

「俺にだってそれくらいの常識はある」

 むくれるシュバリエを見、サージュは再び溜め息を吐いて、髪を整えるよう促した。

「えー、面倒くさい」

「あんた魔王四天王だろ」

 わやわや二人が言い合っていると、不意に上空からばしゃん、と水が降ってくる。バケツの水をひっくり返したような水だ。

「……アルシェ、不意討ちのこれはひどいです」

「え? シュバリエが色々面倒くさいって言ってるから色々やってあげようかと思って」

 出てきた白髪の青年は悪びれもなく言う。サージュは頭を抱えた。

「というか不意討ちで原語魔法とか能力の無駄遣いですか」

「原語魔法の方が詠唱簡単でいい」

 アルシェの台詞にサージュが更に頭を抱える。原語魔法とはセフィロートの旧い言葉・原語を使った魔法である。かなり強力である代わり、魔力消費が激しいという代物だ。サージュも魔術師である以上、かじってはいるが、決して朝の仕度のために使ったりしない。

 アルシェは決して魔法が得手ではないが、潜在魔力量においてはサージュですら及ばないほどの魔力馬鹿である。

「あー、馬鹿と言えば、こないだシュバリエもやらかしてましたよね。こっそりあの剣の軽量化魔法解いておいたんですが、なんでもない様子で担いでいて」

「脳筋だよね」

「まじかよ!? つかサージュ何やってんだよ!? 通りで少し重かったわけだな」

 だが、シュバリエは誤差の範囲だと思っていたらしい。さすが脳筋である。

「馬鹿力という意味ならアミドソルもだろ!?」

「呼んだか?」

「うわぁっ」

 地面からゴゴゴゴと音を立てて、土塊の巨人が現れた。

「アミドソル、急に地面から現れんのやめろよな」

「ああ、わりがっただ。いんや、呼ばれだ気がしただが、気のせいだったがな?」

「や、呼んだ呼んだ」

 シュバリエの軽い対応に、サージュは頭が痛くなってきました。

「とごろで、なんでシュバリエとサージュはびしょ濡れなんだ?」

「アルシェがな。どれ、火魔法で……」

「こらシュバリエ、貴方火魔法下手なんですから屋内で使わないでください!! って言ってる傍から使わないでください!! ほら、髪が焦げてる、焦げてるから!!」

「わー、本当だー」

「本当だー、じゃありません! ああもう! 風よ、集いし炎を掻き消せ」

「あ、今水かけようと思ったのに」

「アルシェも戦闘以外で魔法使わないでください!!」

 戦乱の先頭に立つ者たちとは思えないほど、愉快な日常がそこにあった。



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