スマホゲームのプロフィール
「……で」
ソルは森から神殿に状況を聞きに来たのだが。
「おめえだづ何してるだ?」
魔王四天王のうち、ソルを除く三人が三人、以前魔王ノワールが外界から持ち帰ったスマホの画面に釘付けになっていた。何やらゲームをやっているらしい。先日のようなリズムゲームではないらしいが。
ちなみに、ソルも自分用にタブレットをもらったのだが、薄すぎるのと小さすぎるので、誤って壊してしまった。
外界の遊びに興じてまさかまた侵攻計画が進んでいないのだろうか。
「おお、ソル。今回のは実に理にかなってるぞ!」
「スマホゲームの一体何が理にかなうだ?」
「一人だけゲームできねえからって落ち込むなよ。ほら」
シュバリエが画面を見せてくる。原語のような文字列が美麗化されたものがそこに並んでいた。「最後のおとぎ話」といった意味であろうタイトルが並んでいる。
「外界で人気を泊し、何十年も愛され続けているロールプレイングゲームってやつらしい。ただ、これは特別版で、好きなキャラ、好きな役職を選べるんだ。名前もつけられるぜ。しかも色々な世界の言葉でつけられる。もちろん原語バージョンもある」
「……はあ」
「で、俺のキャラはこれ」
大剣使いの男性キャラクターだ。名前はフラムになっている。魔力が少ないが物理攻撃力がべらぼうに高い。防御力はまずまず。
それがどうしたというのだろう。
「モバイルオンラインモードっつって、外界の人間とリアルタイムで遊べるんだ。だからプロフィールを設定する。俺はこれな」
見せられたフラムのプロフィールは。
「フラム
男。最強の剣士を目指している。魔王ぶっ倒す!! 俺TUEEEEEE!!」
「おめえ魔王四天王だべ……」
「仕事何やってるかって聞かれてそう答えたら『マジ草』って返ってきたぞ。木属性魔法でも使えんのか?」
ネットスラングを知らないシュバリエ。まあそこはソルたちも同じである。
「しかし俺のプロフィールなんて普通だぞ? 見ろよサージュのやつ」
「あっ、調子乗って引力魔法使うんじゃありません」
引力魔法でサージュの手からスマホを引き寄せるシュバリエ。場違いではあるが、ちゃんと魔法の修行をしているらしいことにソルは安堵した。
で、サージュのキャラクターは……
白いローブを纏い、プラチナブロンドの美しい髪を覗かせた女の子。なんとなく魔法使いなのはわかる。
「レイラ
女。治癒系の魔法が使えます。本当は普通の魔法使いになりたかったんですが……よろしくお願いいたします」
ゲーム画面には文字がいくつか飛び交い、会話を成しているが、「レイラたんかわええええええええ!!」「マジ天使」などと言った言葉で埋め尽くされている。
ソルはその少ない顔のパーツでなんとも言えない表情をした。
「サージュ……」
「哀れむような表情をしないでください!! 誤解です!!」
曰く、ノワールに弄られたらしい。魔改造されたのだそうだ。さすが魔王。
「ちなみにネット上で男が女のふりすることをネカマ、女が男のふりをすることをネナベというらしいぜ」
「厨房だか?」
「というわけでここにはネカマとネナベが揃っている」
「誇るごどだか?」
サージュがネカマだから、アルシェがネナベということになるわけだが……そういえば、アルシェが女だということを忘れていた。
「ソル、今めっちゃ失礼なこと考えなかった?」
「え?」
それはさておき。アルシェのプロフィールも見せてもらった。
「サーガ
男。弓矢を武器にする魔法使い。デバフ魔法得意」
「デバフ……?」
「相手の能力を下げるやつのことだな。自分の能力を上げるのはバフっていうぜ」
「馴染んどるだ……」
サーガはエルフという種族の男性らしい。耳が長くて尖っているので、サージュの風の民みたいな種族だろうか。
「これにミルを巻き込んで魔王討伐に向かっている」
「ミルまで……」
「やつは素手で戦う戦士だ」
「そのままだ……」
「だが是非魔王四天王で魔王討伐したい!! というわけでソルもキャラ作れ」
「おら暇でねえだ!!」
今日もわちゃわちゃしている魔王四天王であった。