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賢者モードってなぁに?

全然エロ要素のない賢者モード、賢者タイムのお話です。

安心してご覧ください。

 闇の女神神殿内、四天王の間。そこは厳かな雰囲気を放ち、各々異彩を放つ四天王たちが集っていた。

 火を司るシュバリエ。

 水を司るアルシェ。

 土を司るソル。

「……サージュがいねえのは珍しいだ」

「ははは、この議論をするにはちょうどいいじゃないか」

 ソルが粘度の異なる土を混ぜ合わせ、固めて作った黒に寄った緑色の板に、シュバリエは土に含まれる成分の一部を抽出してできた白い粉を固めたペンで何やら書いていく。ちなみにそのペンもソルが作った。

「ずばり、今日の議題はこれだ!!」

「……『賢者モードとは何か』?」

 ソルとアルシェの声が揃う。賢者モード。聞いたことのない言葉だ。少なくとも、セフィロートには存在しない。

 が、なんとなく、出所はわかった。

「まーたノワールが外界から変な言葉覚えて持ち帰っただな?」

「察しがいいな、さすがソル」

「わかるのは『賢者』くらいか」

 アルシェが分析する。賢者とは、このセカイにおいて、魔法使いとしての頂点に立つ者に使われる二つ名である。今代では今ここにいない四天王最後の一人、サージュ・ド・ヴァンが相当する。サージュというのがセフィロートの古い言葉で「賢者」を意味しているのだ。

「ちなみに、これは『賢者タイム』とも言うらしい」

「余計に混乱するだ」

 タイムとモードの意味がまず彼らにはわからない。類義語なのだろうか。

「でも確か、文献にタイムの意味は載ってた。どこかの言葉で『時間』を意味するらしい」

 アルシェの発言である。ソルは察した。何故シュバリエがこんな議題を持ち出したか、そしてサージュのいないタイミングを選んだか。

 ソルはずっと森で暮らしていたので、魔王四天王となるまで、シュバリエたち三人と関わりはなかったが、シュバリエ、アルシェ、サージュの三人は幼い頃からの知り合いらしい。それぞれ、鬼人、水の民、風の民、と異なる種族ではあったものの、その才故に、ゲブラーで各々の能力を切磋琢磨していたという。それは今も変わっておらず、四天王の間は四天王がその力を遺憾なく発揮して戦闘訓練を行えるよう、特別製に仕立ててある。ちなみにこの部屋……というか神殿そのものを作ったのもソルである。

 それとこの議題と何が関係があるかというと、まあ、ソルも四天王になってから知ったのだが、サージュはシュバリエに些か手厳しい、ということだ。目指すのが魔法剣士なのだから、魔法の指導は魔法使いの頂点たるサージュがやっているのだが……シュバリエは魔法より剣の方が好きらしく、魔法の修行をサボるので、サージュから罠系の魔法をかけられたり、かなり重量のある愛剣を重くされたり、と色々されている。

 おそらく、シュバリエは「賢者モード」を「賢者のように強くなれる時間」と捉えているのだろう。アルシェがタイムの意味を知っていたことから、シュバリエも同じ文献を読んでいたのではないか、という推測は容易にできる。

「というわけで、俺は賢者モードを習得する修行をしようと思う」

「修行って……具体的にどうやるんだ?」

 アルシェの疑問はもっともだ。まず、賢者モードの意味がそれで合っているかもわからないのに。

「それを考えるために、原語魔法を扱えるアルシェと冷静さはピカイチのソルを呼んだんだぞ」

 自分が冷静さに欠いている自覚はあるらしい。

 この四天王の間は特別製だが、それでもサージュの結界なしには壊れかねない。

 ソルは自分が冷静とは思っていないが、馬鹿みたいな火力と斜め上の発想能力を持つアルシェと強くなるためには暴走も厭わないシュバリエの二人よりは正常な思考をしている。

 現に。

「だったらシュバリエも原語魔法を習得してみたらどうかな」

「おお、それはやってみたい。ってか原語魔法習得できたら賢者名乗ってもいいよな!!」

 という感じに話が進んでしまっている。このままではサージュに目撃されたとき、彼が頭を抱える事態になることは請け合いだ。胃痛の原因となる芽を、ソルは摘まなければならない。

 うーむ、と唸り、それからソルは思いついたことを言った。

「なあ、賢者言っても、外界の言葉なら、セフィロートの意味と違うんでねえが?」

「え……」

「外界のことを理解するには、外界のことをやってみるのがいいだよ」


 ……かくして。

 四天王の間は奇妙なほどに静まり返り、そこには目を瞑って変わった座り方をする四天王二人が鎮座することとなった。

 そこへ任務を終えて帰ってきたサージュがソルに感謝するまではあと少し。

 その前にミルがやってくる。

「……ソルさま、お二人は何を?」

「座禅だ」

「ミルたーん!!」

「雑念を払うだ!!」

 ミルに飛びつこうとしたアルシェが、ソルの拳に一撃で沈む。その様子を察知したシュバリエは下手なことはすまい、と黙って瞑想に耽った。

 こんなことで賢者モードを体得できるのかはさておき、今日も魔王四天王は平和だった。

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