謁見からの逃走
この国の王都の正門から王宮までは一本道で迷うことはない。
王宮に進んで行くにつれて王宮から護衛の兵士が集まっていき姫様の周りの兵士が増えていく、ユウキはそれに乗じて兵士達の間中をすり抜けて逃げようとしたが姫様に腕をガッチリ捕まれて最終的に国王の前まで連れて行かれてしまった。
「なんでこんな事にぃ…」
謁見の間に到着する頃には護衛の兵士もいつの間にかいなくなっており、ユウキは国王から10メートルほど離れて立っている。
「お前が私の娘の助けてくれたのだろ?」
インカムを通して周囲のスピーカーから喋っているせいで声が四方八方から聞こえる、それもあって凄く威圧感がある。
「……はい…」
もはやこの一言を言うだけで精一杯だ、そもそもこの声が届いているかも怪しい。
ユウキが怯えているのを近くで見た姫様は「あ、そっか…」と小さく呟き王の所に行き耳打ちしていた。
「あ、そっか」
スピーカーから抜けた声が響いた後に遠くで機械類が停止する音が聞こえてきた、それによって一気に静まり返った空間では少し離れた兵士の咳払いが聞こえる。
「ごめんな、怖かったやろ?」
先ほどの声とはまるで別人のようななんとも気の抜けた声が聞こえる。
「ごめんな、見た目がソレだからついつい国民向けの対応をやってしまったよ」
まるで知り合いのおっちゃんのような軽い口調でさっきまでの威厳が台無しである。
「ふぇぇ…」
ユウキは混乱して変な声を出してしまった。
「あーあ、父上、見た目はこんなのだけどこの子10歳よ」
「え、本当か!」
姫様がユウキのポケットから無理矢理気味に学生証を出して国王に見せる。
「確かに…しかもあのくs、隣の国の……」
国王にすぐに姫様経由で返してくれた。
「あのー…」
「ん、なんだ?」
「もう…帰って…良いですか?」
ユウキはまだ特別授業中で早く帰らねばならず正直に他国の事などどうでもよかった。
「ふっ…ガァッハハハハ!」
突然王が笑いだす、横にいる姫様は呆れておりユウキは何事かと驚いた。
「なんとも欲がないなあお前は、普通こういう時には何か見返りを求めるものだろう」
「あ、いえ、今特に欲しい物は無いですし……」
「ほぉ~いいのか?、お前が望めばそれなりの大金だって手には入るし今のその見た目ならばここの部隊長として復職も可能だぞ?」
一瞬部隊長の言葉にミネルバの意志が強く反応したが抑えこむ。
「いえ、お金は金遣いが荒い女が1日中買い物を楽しむほどは持ってますし、それに私は何よりも他国の人間ですので……」
あのミ=ゴにあった後日来た請求書を見てこの世界に来て初めて感情のまま怒りを表してたほどだ、金額はおおよそ平民用の一軒家が建てれる位の額だ、それでも貯金している額の方が多かったので問題なく支払いは済ませる事ができた。
そんなことを思い出して拳に力が籠もる、それを見逃さなかった王は。
「そんなに帰りたいか?」
早く帰る用事が存在して居ても立っても居られない様に見えたようだ。
「え、あ…はい」
自分が拳に力が籠もっていることに気がつくが否定するとさらにこの場所に長居することになりそうなので肯定しておく。
「正直だな、じゃあ帰っていいぞ」
「え、あ、はい、失礼します」
ユウキはまっすぐ大きく開いた窓へ行きそのまま翼を生やして飛んでいった、姫様に見られているのでもうどうでもいいかと飛び立っていったがそういえば兵士や国王にはまだ知らなかった事だと思いだして少し後悔した。
「あれは尾行できるか?」
「父様、別に尾行しなくてもあの学校に通ってる一年のユウキ・アーノイドを探せばいいのでは?」
「まっ、そうだな」
城の中は意外とハイテクに出来ています。




