魔力が無かった訳
「……暇だなぁ」
魔物達がいなくなりこの空間から脱出する方法は知らないので途方に暮れているといきなり胸の辺りから腕が生えてきた。
「うぁあぁ、…あっ!」
驚きのあまり手首を掴みを引っこ抜いてしまった、引っこ抜かれて出てきたのは10歳くらいの女の子で髪は栗色で目は水色でよく見覚えのある顔でユウキを睨んでいる。
「私?、いや『私』か…」
「ええ、初めてかしら、顔を合わせるのは」
声は向こうの方が若干高い。
「今更出てきて何の用だ!?」
「私の体を、返しなさい!」
もう一人の『私』からものすごい量の魔力があふれ出る。
「それは出来ん相談だなぁ」
ユウキも対抗して魔力を放出する。
「前世ごときがでしゃばるんじゃないわよ!」
「私…いや俺が居なかったらそもそも五年前に死んでいるし母親の情報通りならどっちみち死んでる!」
「当たり前よ、魔力があるのはあなたじゃなくて私なんだから!」
「そうか、つまり俺がこっちで産まれた時から『私』はいたんだな、だったら始めから出てこいよ!」
「赤ちゃんが意識をどうこうするなんて分かる訳無いじゃない!、私という存在に気がついた時にはフィアがいて出て来れなかった、でも今は違う…ここならお前を倒して体を取り戻す事が出来る!」
「それは出来ないな!」
「「ファイアボルト」」
2人が同時に火の玉を放たれ中心でぶつかり合って消滅する、2つ火の玉の大きさも威力も同じようだ。
「「アイスニードル」」
今度は魔法の種類を変えてみるが同じモノになり無数の氷の矢が飛ばされるがやはり相殺される。
魔法を撃つだけでは埒があかないと判断したのかお互いに距離を詰める、組み手もやはりほぼ同じ動きでお互いにすこしでも隙を見せてしまえば確実に負けてしまう。
ユウキは手から炎を出して爆発させて爆風で距離をとる、もう一人の方は以外だったのか驚きのあまりバックステップに失敗し転ぶ、それを見たユウキはすぐに突進する。
もう一人は体勢を立て直すのを諦め、負けを覚悟する。
「ごめんな…」
とりあえず攻撃のモーションから抱き着いてみて様子を伺うが……、『私』の方は一息いれ体勢を整えてから思いっきり腹部を殴る。
「ですよね~」
強烈な一撃で意識が飛びかける。
「なにがごめんだ、謝っても今更おそい!」
動揺すらしていなかった、むしろ更に燃料を投下してしまったようだ。
「あぁもういいや」
「何?、大人しく体を返す気になったの?」
「お前がすこしでも動揺してたら渡してたかもな…もう、ドウデモイイ」
やる気ない声で喋り終わるとユウキの手を変化させる。
『私』が構えるが一瞬でケリがついた。
「もう、降参しろ」
『私』は既に拘束され龍化した爪で喉を突き立てている。
「ズルいよ…フィアを使うなんて…ズルいよ…何もかも」
『私』は涙を流しながらユウキの中に消えていった。
「終わった、のか?」
気が付くと校庭に戻っていた、肉の塊になって。
「なんじゃこりゃああ!!」
ユウキは叫んだつもりだったがただの叫び声になっていた。
ユウキは キメラに なった▼




