ついうっかりする事もある
「早いな……、って追いかけないと」
男が火事場の馬鹿力を発揮したのか、勢いよく車で飛び出していった。ユウキはあっけにとられてしまったが急いで追いかける。
時間帯的に人混みや車の通りが多いのもあって男は上手く逃走できなかったが、ユウキの方も人の視線があるので、人外じみた軌道ができずに上手く追いかける事ができなかった。
男は市街地では上手く逃走できないと早々に人里離れた山の方に逃げていった。ユウキ的にも人の視線が無くなるのでありがたいので、人の目が無くなった瞬間に一気に距離をつめて車を転倒させて足止めする。
「ひぃぃ……」
急いで逃走したために、シートベルトを付けていなかったようで、全身を打ってしまっており、上手く動けずにいた。
そこをユウキが見逃す訳もなく片手で男の足を掴んで逆さに持ち上げる。
「マキナ達はどこだ。言え!」
「あ、あぁ、ひぃぃ……助けて……」
男は完全に混乱しており、まともに会話できそうにない。ひとまず揺すって聞き出そうとするが、うめき声を上げるだけで聞きたい事は引き出せそうにない。
「はぁ、お前の事は最後に殺すと言ったな?」
「あ、あぁ、そうだ、俺以外誰も死んでねぇ……、だからまだ殺さないでくれ!」
「アレは嘘だよ」
「ウワァァァアアアアアアアアア!!!!」
あまりにも見苦しかったので崖下に落としてしまった、この世界で初めての人殺しをしてしまったので少々自己嫌悪になったが、頬を叩いて気合を入れてから男の遺留品を漁る。
吐かせるために男を揺すったおかげでいくつか荷物を落としていたのでそれらを漁っていく。
あまり証拠を残さないようにしているのか、それとも証拠は男と一緒に落ちた携帯端末の中にあるのかもしれない、唯一手がかりになりそうな物はホテルのカードキーだけだ。
一旦キャンピングカーに戻ってホテルの事を調べてからそのホテルの部屋に向かう。
部屋の中に手がかりがないか調べるが特にそういった物はない。
「おい、開けろ!まったくこんな所を指定しやがって、早く出てこい!」
証拠が見つからなくて落とした男の所に戻ろうとしていた時に部屋のドアが激しく叩かれる、聞こえてくる内容的にマキナ達を攫った一味だろう。
ドアで出くわすと逃げられる可能性があるので、男がナンパしていた女性に顔だけ変装してからドアを開ける。
「お前はナニモンだ?」
「ルームサービス、かな?」
「ち、おい、そういったのは全部終わってからって約束だろうが!」
男性が部屋の中を乱暴に進みシャワールームのドアを勢いよく開けるがそこには誰もいなかった……。
「お前……アイツはどうした?!」
「離してやったよ」
男性が部屋の中に入っていたので変装を解く。その姿を見て男性は瞬時に携帯端末に手を伸ばしかけたが、ファイティングポーズをとる。
「俺は元特殊部隊の人間だ、お前みたいなわけのわからない存在には負けねぇ」
「……私だって不服ながら元軍属だ」
わけのわからない存在と言われて一瞬たじろいてしまったが応戦する。元特殊部隊と言っただけあって動きがいい。特に閉所での戦闘に慣れているのか、ユウキでも少し苦戦してしまったが、魔法を使って即座に無力化させる。
「マキナ達は何処……あぁ」
取っ組み合いの中で元の世界の勢いで魔法を行使してしまったため、どうやら殺してしまったようだ。
「こっちは手がかり、あるといいなぁ」
流石にこれ以上元ネタ通りにいかせません




