呼び出し
先生に注意されてまともに学院生活を始めて1ヶ月が過ぎようとしていたある日…。
普段は授業の開始と終了などを知らせるチャイムを鳴らすためだけのスピーカーから大音量でいつもと違う音声が鳴り響く。
「魔物警報が発令されました、生徒は速やかに中央防衛ラインまで避難しなさい、繰り返します魔物警報が発令されました、生徒は速やかに中央防衛ラインまで避難しなさい、またギルドランクA以上の先生、生徒は第一グラウンドまで集合しなさい」
「あー…じゃあ授業は中止します、一応ここも中央防衛ラインの範囲の中だから別に慌てる必要はありませんよー」
今授業しているのは担任ではなく別の教科担当の先生だ、サイレンが鳴るのはよくあることなのか落ち着いている。
「先生~魔物警報ってなんですか~」
「魔物警報っていうのは言ってしまえば自然災害の大雨とか土砂崩れとか台風とかの警報の魔物版ですね、あと…」
先生がユウキの方をみる。
「たしかアーノイドさんはSランクでしたね?、放送で呼ばれていますし、成績には問題ないのでどうぞ」
「あ、はい…」
クラスメイトからの視線を感じながら急がずゆっくりと退出する。
「アーノイドさん、あなたが一番最後です、だいたいなぜこんなにもゆっくりと歩いてきたのですか、魔物警報が出てるのですよ、呼び出しがかかったのなら早く集合しなさい、それくらいわかるでしょ」
服装からして恐らく先生ではなく先輩だろう。
「あーまだ習ってなかったのでぇ、どれほど重要かわかんないですねぇ」
適当に答えた結果なぜか一触即発の雰囲気が完成していた。
「今回の魔物警報の魔物は普通なら絶対に有り得ないタイプなので皆さん気を引き締めていきましょう!」
嫌な雰囲気になり始めた時に若い女性の先生が場をまとめる。
「先生!、そんな遠足に行くみたいな楽しそうに言わないでください、それでその有り得ないタイプというのは何ですか?」
「今回はねぇ、なんとキメラなのですよぉ、だから今回高ギルドランクの生徒にも来てもらいましたぁ」
先生ののほほんとした言い方にもかかわらず周りの空気が締まる。
「先生、そのキメラはどこまで来ていますか?」
「もうすでに第一防衛ラインの目の前にいますぅ」
「キメラ、か……」
キメラ、本来自然界には絶対に存在しない魔物で人工的に作られる魔物の総称でそれらの生産、育成、使用等は全て禁止されている、そんなことはユウキは一切知らない、むしろこの世界にも居たのかとユウキは感心していた。
「よし、アーノイドの姉の方、お前が行け!」
「…なぜ!?」
「お前だけが落ち着いているからな、キメラと聞いてもお前だけ余裕そうだし、高ランクのお前なら勝算があるのだろう?」
確かに辺りをみると先生も生徒もどこか緊張している。
「あーはい行ってきます、では」
ユウキが妙に落ち着いてるのはこの世界のキメラの存在がどんな物か知らない事と単に緊張感がないだけである。
「で第一防衛ラインはどこですか?」
この発言により5割がずっこけた。
「第一防衛ラインはあっちだよぉ」
先生が今来た道を指さす。
「てことはそこそこ距離あるのか…」
まるまる引き返す形になりユウキの力が抜ける。
「とりあえずアーノイド姉の方にはこれで第一防衛ラインまで行ってもらう」
「ママチャリ?」
距離が遠いため先生が移動手段として自信満々にどこからかママチャリを取り出す。
「先生、足が届きませんので飛んでいきます」
しかし用意されたママチャリは椅子が高く設定されており乗れそうにないので乗らない宣言をしてから、体を反転させ軽く助走をつけて大きく砂埃をまきあげてユウキが見えないようにしてからいったん真上に飛んでから向かう。
「え…あ、ちょっ…」
椅子の位置は調節できるのでユウキを呼び止めようとしたが既に飛び立っていた。
学校の敷地が広いので移動手段としてママチャリが使用されています、基本的に生徒は使用できませんが今回は緊急なので使用の許可が出ていました。
もちろんギアの変速などはありません。




