札束で殴る
「マキナ、この国で移動する事に関して問題が発生しました」
「そうなの?」
パソコンで調べ物をしていると、薄々気づいていたが確信に変わったようだ。
「この国って意外と広いです」
「それはうん、この国についてちょっと調べたらそんな感じがしたね」
「なので移動手段、それから宿泊手段が結構厳しいです」
「そうなの」
「そうなんです、まず、昨日行った橿原神宮みたいな交通手段が全国にある訳ではありません、それからこの国では野宿は基本的に歓迎されません」
この世界、もといこの国に発生したダンジョンのせいで日本全国に張り巡らされた鉄道網は分断されてしまっており、県をまたぐ移動は基本的に車を使用する事になってしまっている、もっともその移動の為の道も主要道路を除いてほとんど整備されていない。
またいくつかの村もダンジョンに飲み込まれているのもあり、人口が多いところ以外では宿泊施設自体もかなり少なくなっている。
「これが豊かになった代償みたいなものなのかな?」
「それはそうかもしれない」
「なので移動手段及び宿泊手段の確保が必要になりました」
「それはどうするの?」
「お金の心配はありません、そこの問題は悩まなくていいのがありがたい、それでも何とかしないといけない問題があります」
「お金でも解決できないなんて、そんな事あるんだ」
「それは免許、あるいはそれを持っている人です」
「免許?」
「車を動かすには必要なの」
「車、あぁ、アレね」
「そう、この国でルールとか諸々あるから免許がないと車を持つことすらできません、そしてその取得には最短でも30日はかかります」
「……それってかなり面倒じゃん」
「そう、だから人を雇った方が早いんです」
「こっちの国だとギルドみたいなのってないの?」
「何でもやってくれるって意味だと多分ないかな、少なくとも大きい組織がその身元身分を保証してくれるのは調べた限りなかった」
「こうしてみると文化の違いって面白いけど、使っていくには不便だね」
「そうだねぇ、この世界で知り合いとかそもそも、あの優奈って人はどうなんだろ……」
「車の免許ですか?! 一応持ってますけど?」
「ちょっと私に雇われない?」
「はい?」
ダメ元で優奈に聞いてみると免許をもっていた、どうやら高校を卒業した後に身分証に都合が良いからと取得していたようだ。
ユウキ達にとっては唯一この世界での友人なので、免許を持っているのなら逃す手はない。
「これから日本全国を回ってダンジョンを潰していこうとしてるんだけど、移動手段と宿泊手段がないですよ」
「そりゃあ、いちいちタクシーにホテルだとお金が溶けていくだろうね」
「なのでキャンピングカーを購入して全国を回る判断をしました、しかし私達はもちろん免許を持っておりません、なので貴女に運転をお願いしたい」
「そんないきなり言われても……」
困惑はしているものの、あと一押し決め手があれば簡単に行けそうだ。
「私達は異世界人なので金銭的な利益は不要になります、なので諸々の費用は私達が負担していきますし、最終的に自分の世界に帰るので、残った物は全て差し上げます」
「ヨシ乗った!」
前回優奈に渡した金額だけでも8桁に上るほどなので、次はソレ以上の金額が確実にもらえると確信できたので優奈の目がお金に変わっていた。
「はい、よろしくお願いします!」
いつか札束で殴ってみたい




