大根役者
「……そういえば自己紹介すらしてませんでしたな、私はダンジョン協会関西支部代表の黒川です、後ろにいるのは秘書兼護衛の水田と火野です」
後ろで控えている2人の女性が軽く会釈する、それでも視線を外さないのはユウキを相変わらず警戒しているのだろう。
「自分はユウキ、アーノイドです、向こうの世界ではギルド、何でも屋みたいな事をやってます」
一瞬前世での名前の方が日本っぽいので名乗ろうかと思ったがそんな事する必要はないなと考えて普通に名乗る。
「アーノイドさん、ですねよろしくお願いします、ひとまずはこの世界で生活する上で身分証を発行したい、御覧通りこの場所では何もできないので下の発行機がある所まで来てもらえないだろうか?」
「もちろん構いませんよ」
「それでは……」
黒川が立ち上がり、ユウキに促しながら1階に向かう、そこではファンタジーな武装した人とそれに対応しているオフィスカジュアルの人たちというよくわからない光景が広がっていた、服装以外はユウキがいつもギルドで見ている光景に似ているのと日本語表記なので、1人で来たとしても何とか対応できそうではある。
「ここでは人が多いのでこちらへ」
「あ、はい」
光景を少し眺めていると1階の奥の部屋に案内される、扉がやたら分厚かったり通路に職員達の視線があったり、それでいて少し豪華な感じがあったりとVIP用なのだろう。
「……最初からココで良かったのでは?」
「はは、それはごもっともなのですが、如何せん……」
「あぁ、扱いに困ったからとりあえずって感じだったんですね」
「ご理解頂いているようで……、とにかくこちらの設備にて身分証を発行させて頂きます」
そういって部屋にある機械類を操作し始めた、ある程度操作を続けていると電話が鳴り響いた。
「はいこちら黒川……ええっ83階層で緊急救援?! わかりましたすぐに人員を派遣いたします……、あのいきなりなんですがお願いしてもよろしいでしょうか?」
とても棒読みでわざとらしい演技してから恐る恐るユウキに質問してくる、恐らく実力を試したいのだろう、見え見えだがココは乗せられておく事にする。
そもそもこの世界にダンジョンを攻略する事に関しては試験等は無く、簡単な手続きで誰でもダンジョンに挑戦できるようになる、ただ今回は「流石に一番下のランクからスタート」という訳にはいかないので茶番を仕掛けてユウキの実力を知ろうとしたようだ。
「まぁ、実力を知っておきたいでしょうし良いですよ、とりあえずダンジョンの仕様とか諸々教えていただければ……」
「おぉそうでしたね……」
黒川からダンジョンの説明を一通り受けてから建物の中からダンジョンに入っていく。
実力を試すなら直接行いましょう。




