泣き虫
「それではこのように至った経緯を説明させていただきます」
大広間には大きなテーブルと椅子が4つだけあり、しっかりと手入れがされているものの、年期が入っているので貴族が使う物としては違和感が覚えてしまう、全員が座れないので老人が並べ直してから立って説明を始めた。
「まずはこの屋敷の現状から行きましょう、始めはお嬢様を捜索の為に売却しておりました、しかしこの家の主な収入原である特政収も主様がご逝去されてからは奥様も追うように……、それから皆様も散り散りになりそれぞれの人生を歩まれました、私は元々身寄りが無い物ですからこの屋敷の管理をしておりました、このようにいつの日かお嬢様が帰ってくると信じておりましたゆえ、残った物もこの屋敷の維持のために売却してつい先日、売れる物は全て売り切りました、後は朽ちるのを待つばかりでしたが、そこにお嬢様が帰ってこられて……」
説明の途中で老人は感情を我慢できなかったようで、これ以上話を続ける事が困難になっていた、それから少しの間落ち着くのを待っていたがしばらくは再び話せる状態にはならないだろう。
「では我々はしばらくこの屋敷を探索しておきますね」
老人は返事をしてくれたようだが嗚咽で何をいっているかわからなかった。
「しばらくは1人にしていればおとなしくなるでしょう、足音は無駄に響くし大丈夫でしょう」
テリジアは飽きれたような諦めたような表情をしていた、住んでいた屋敷もあって慣れた足取りで屋敷の中を見ている、家具等も含めて物ほとんど無いので清掃がいきとどいているものの寂しい雰囲気がある。
テリジアを先頭に屋敷を進んでいく、1部屋ずつ見て行く度にテリジアの足が速くなる、そして最後の角部屋を開けたとたんに泣き崩れてしまった、その部屋には物が沢山あり、先ほどまでのがらんどうとしていた屋敷とは別物で物で溢れかえっていた、淡いピンク色の家具が多いのもあっておそらくテリジアの部屋だろう。
「貴女の物だけは売りに出せなかったんだろうな」
テリジアもまた動けなくなったためマキナが肩を貸して支えながら広間まで戻っていった。
「改めてお帰りなさいませ、お嬢様」
「ええ私は帰ってきました」
「それでは、主様と奥様からお手紙を預かっておりますゆえ、少々お待ちください」
老人が確かな足取りで奥へ向い、自信に満ちた顔で古びた封筒を大切そうに持って戻ってきた、心なしか少し若返ったようにも見える、おそらくテリジアが戻って来たことにより生きる希望が出来たためだろう。
「こちらが主様と奥様からになります」
「わかりました、受け取ります」
テレジアが覚悟を決めて手紙を受け取り読み始めた、しっかりと封がしてあったので老人が開封して確認をしたりはしていないようだ。
希望があるとなんでもやる気ってでますよね




