転生した先は…
結局剣と魔法のファンタジーの世界なんですけどね。
生まれてから5年の月日が流れた……、5年間はいたって普通な生活をしていた、特に言うような出来事は起こっていないし起こしてもいない。
名前はユウキ・フェイシアだそうだ、一応貴族の部類に入るらしく家もそれなりに大きいし使用人なども数名いるが、中堅くらいのなんとも微妙な所に生まれたものだ。
そして今日は自分の誕生日だ。
今は屋敷の一番大きな広間にいる、しかしここには自分しかいない、しばらくすると軽快な足音と共に父親がやってきた。
「さぁ~ユウキ、今日はお前の5才の誕生日だ、そしてユウキの『魔力』を計る日でもあ~る」
魔力!?、確かにさっき父親が魔力と言った…つまりこの世界はいわゆるヨーロッパ辺りの中世風の時代ではなく、異世界転生でおなじみの剣と魔法のファンタジーな世界ということなのだろうか……。
父親に連れられて魔力とやらを計るであろう部屋に着く。部屋の中は6畳くらいの広さで真ん中に直径30センチほどの丸い透明な水晶が浮かんであるだけだ。
「さぁ、これに力を込めるんだ」
上機嫌に水晶を指差す父親。
「うん」
張り切って水晶に力を込めてみる…。
1分ほどたっても水晶は何も変わらなかった、それを見た父親からは笑顔が消えていきなり。
「来なさい」
とだけ言い、乱暴に自分の手を引っ張って自分の部屋に閉じ込めた。
「来い……」
夜になりまた無表情で自分を引っ張っていく。
自分は少し早い足取りに頑張ってついていき、大広間に到着した。でもなんだか様子が違う、昼にはなかった魔法陣が部屋全体に広がっている。
そしてその大きな魔法陣の真ん中に立たされた。
父親が何かをつぶやいている、何をしているか聞こうと尋ねようと思ったら視界が暗転した。
「ねぇ! ユウキはどこにいるの!?」
泣き叫ぶような声で母が父親に迫っていた。
「あれには魔力がなかった…」
父親は椅子に座り込んで無表情で答える。
「そんな訳ないわ、だからって捨てる事はないでしょ、ねぇ、今からでも連れ戻しに行きましょうよ!」
必死に訴える母親、しかし父親は無表情まま続けた。
「平民のままなら良かったさ…、ユウキに魔力があってもなくても、でも今は、今回は違う…」
声がだんだんと感情的になる。
「我々はもう昔と違うんだ…、貴族なんだ…子供に魔力がありませんでしたじゃ、示しがつかないんだ」
声にかなりの力がこもる。
「このままではユウキも私たちも良い暮らしはできないだろう」
拳を握り締め、涙を流しながら訴える
「私はユウキにそんな悲しい思いなどさせたくないんだ、だから……だからせめて楽に……」
――死んで欲しいんだ――
ちなみに主人公に魔力があるかないかはサイコロで決めました




