ズルしては強くなれない
「…………あれ?」
「あ、目が覚めましたか?」
いつまでも床に気絶させている訳にはいかないので近くの椅子に寝かせる、依頼の内容についての整理はすぐに終わったので膝枕でもして安静にさせる。
「……っ!」
自分が膝枕されている事に気が付いたようで顔を赤くして飛び起きる。
「いいいいったいな何を……!」
「何ってここのベンチだと寝づらいでしょうから膝枕をね」
「………っ! っ!」
少女は言葉が上手く出せないのかバタバタしていた。
「元気があるようですし、訓練を始めましょうか」
今回は報酬やら手当やらとても美味しいので全力で愛想よく対応しておく、普段はこんな事はしないのだが金額が金額なので何もしなくても笑顔になるほどだ。
「ああぁ、そうだったな」
「あ、その前に強化の魔法を解除していただきましょうか、時々使うのは良いかもしれませんが、普段使いは認められません」
「かしこまりました、アーノイドさんでしたら問題ないでしょう」
「ちょっ!」
魔法が解除されると、少女から猫の耳と尻尾が出現した。
「…いい趣味してますね」
「天然物ですよ」
「養子か何かですか?」
「いえ、奴隷ですよ名前はニキで物珍しさから購入したんですよ、あちゃんと女の子ですからね」
確かにこの付近でいわゆる獣人と言われる人種は珍しいし、更に言えば周辺の国々で禁止している奴隷を所有している、首についているチョーカーはオシャレではなく奴隷の証だったようだ、そんな会話を聞いていたニキが失望したような表情でこちらをみている。
「珍しいですね、では魔法が無い状態でどれくらい動けるか確認しましょうか」
「え、あ………あぁ」
ユウキにとっては奴隷だとしても上客の相手なので手を抜く事はしない、というか肉付きや肌艶もよく、服なども綺麗な物で奴隷も首輪もチョーカーになっておりオシャレに見える、それに定期的に体をしっかりと洗っているようで清潔感もあるのだ、建前上奴隷という酷い名称で呼ばれているがしっかり大切にさせているが分かる、なので問題ないと判断して気にせずに対応する事にした。
「では真っ直ぐ走ってみて下さい」
「お、おうよ!」
言葉遣いは悪いがそこを直すのはユウキの仕事ではないので放置する、一通り体を動かせてみておおよその技量を計る、ちょっと運動神経が良い子供程度の評価で間違いないだろう。
それを先ほどの魔法がかかった状態まで鍛えるのは本人の資質にもよるがかなり時間がかかりそうだと腹をくくった。
どんな辛い仕事でもそれ相応の報酬があるとやる気は出ますよね、続くかは置いといて。




