回収完了
【あら、あなたは入らないの?】
【この体は私の子孫だからね、このまま通路を道なりに進めば私の本体に会えますから、では】
人魚の顔が一旦真顔になり、少しするとハッとして慌てたようにお辞儀をして逃げるように去っていった。
(久々に会ったから記憶とちょっと違うかなぁって思ったら子孫を依り代にしていたなんてね)
(そうなんだ、じゃあ私もユーフェミアにできるかな?)
(たぶんできるんじゃない?)
ラクネラは興味なさそうにして道なりに進んでいく。
【改めて久しぶりね】
通路の先には巨大なクジラが存在しておりその頭部から先ほど人魚に似た女性が生えていた。
【本当にね、例え生きていたとしても会う事は無いと思っていたわ】
【私もまさかまだ生きていると思わなかったわ、本当に先生関連じゃなきゃ会えないでしょうしね】
【そうね、じゃコレ上げるからさっさと帰ってくれない】
【いいわよ、歓迎されてないみたいだし】
【そこはごめんね、深海で閉鎖的だからどうしようもないの、本当なら積る話でも長々と話したいけどね】
【わかっているわ、さっさと退散するわよ、なるべく早く静かにね】
【助かるわ】
(そんな訳で時蛍石は手に入ったけどすぐに帰る事になったわ)
(多分仲良く話してたみたいだけど、時間なら十分にあるから話こんでいてもいいよ)
(十分よ、さっさと帰らないとココの住人に処刑されるかもね)
(マジっすか、じゃあ帰りますわ)
(しかも静かにね)
(はーい)
ラクネラが体の主導権を持ったまま建物の外に出た後に交代してゆっくりと上昇していく、一気に上昇してしまうと水圧の関係で膨れ上がってしまうので我慢しながら上がっていく。
「……やっぱり地上がいい、おっと」
水面から出た時にエラ呼吸のままだったので一瞬呼吸困難になったがすぐに肺呼吸に切り替える、そのまま陸地に移動して一息つく、何かにもたれかかれるのは楽でいい。
「あぁでもどうしよ」
光に当ててはいけないらしいので今はユウキの体内に入れている、今の手持ちに完全には遮光できる物はない、ひとまずこのまま帰宅する。
目の前で時蛍石を吐き出す訳には行かないので一旦部屋に戻って漁ってみたが特に使えそうな物はなかった。
「……しゃあない」
「依頼の品です」
「あら、思ったより早かったわね、にしてもコレって卵よね?」
「あぁ遮光する物が無かったもので……、中が時蛍石になります」
結局使えそうな物を持ち合わせていなかったので体内に入れた時蛍石を卵の殻に包んで体外に排出することにした。
「あなたならいいお母さんになるわよ」
「いやもうなってるんで」
「ふふっそうね、そうだあなたはこの卵って普通に産む事はできるの?」
「それは流石にしんどいので勘弁してほしいです」
「流石に今はいらないわよ、でももし私にお願いがあったら私には有効よ」
「最終手段ですかね」
別にラクネラの時代の人が全員生き物の頭部から生えている訳ではありません。




