全て水に流した
「これからサバイバルを始めます、生徒の皆さんはここから森に転移してもらいます、１１時になるか、戦闘不能と判断した時点でこちらに戻ってきてもらいます、それでは……開始！」
説明していた教員の開始宣言床から膨大な魔力を感じたと思った瞬間にユウキ達は森に飛ばされていた。
「ここが森、ねぇ……」
ユウキ達が飛ばされたのは確かに森ではあるが。
「均等じゃないけど一定に並んでる木々に生えている草が少ないし、獣の気配が全くない、倒れた木も見かけなければ根っこが地面からあんまり出てもいない……、あきらかに人工的だな……」
などと愚痴りながら一人で森をゆっくりと歩いていた。
前方から人の気配が向かって来るのに気づく、上手く隠れられてはいるが気配が消せていないのでおおよその場所がわかる。
あえてその気配に対して背をむけ歩きだす、わざとらしく方向転換したにもかかわらずその気配はこっちに向かってチャンスとばかりに魔法を放ってきた、しかも大声で詠唱しながら。
「我が従えし炎の力よ、今その力は敵を倒す力に変換される！」
直径１０ｃｍ程の火球が放たれるがユウキにとっては大して思う事はなかった……。
「あいつ、油断してるな」
木の陰から標的の様子をうかがっていた、暫く様子を伺っていたら向こうが反対方向に振り向いた、チャンスだ、木の陰から飛び出して標的に魔法を放つ。
「我が従えし炎の力よ、今その力は敵を倒す力に変換される！！」
最近やっと習得できた炎の攻撃魔法だ、といっても今の俺じゃ無駄な詠唱が必要だから実戦向きじゃないけど不意打ちなら十分に使える。
放たれた火の球は標的が不意打ちで動けなかったのか真っ直ぐに標的に命中する、よし狙いも完璧だ。
「やったか？」
煙が晴れ、標的の様子を確認するが。
「無傷、いや確かに当たったはずだ」
標的は何事も無かったように歩き続けていた、おかしい、確かに俺の魔法は当たったはず…ええい！、考えても無駄だとにかく行動あるのみ、俺は懐にある剣で敵に切りかかる。
剣が当たる寸前で標的は体を少しずらして避けられる、避けられたことには驚いたが剣を握り直して、あれ……、いつの間にか俺は持っていた剣で突き立てられていた。
「お、女…」
服装が地味で遠目でしかも標的としか認識してなかったせいでもあるかも知れない……、ただ俺は…あの女の顔を見た瞬間に俺は一目惚れした。
「弱い…」
ユウキはそう呟き目の前の男の子に左手で鳩尾に一発入れると、男子生徒は気絶しその場に倒れこんだ、すると男子生徒のリストバンドが光を放ち男子生徒を包み込み光が収まると同時に男の子は消えていた。
「同年代の実力はこの程度かなうーん……、なおさら私は学校に行く必要が無くなるかな……」
と、さらに学校に通う気の無くなるユウキであった。
場所は変わって、ユウキから約１キロほど離れた地点にマキナの姿があった。
「そーれ大洪水だー」
高得点を取るためと目立ちたいあまりに大技を雑に使う。
マキナの半径100メートル程の森が水に沈み、その範囲内にいる入学予定の生徒数十名が退場した、そんなマキナが何やらやらかしているのを遠目で眺めていると森全体にどこからからアナウンスが鳴り響く。
「１０時になりました、新入生の皆さん、あと一時間、頑張りましょう」
それから時間がくるまでずっとユウキは周囲を無警戒を装ってゆっくりと歩いていた。
転移系が使えているの学校の大規模な設備があってこそでその規模の大きさから軍事利用ができないそうな。
