ゴーレム開発記10
「確かにコレが量産されたら戦況や戦術は大きく変わるだろうな……」
「でしょう、これからはゴーレムの時代ですわ」
「で、コストは?」
「こちらにまとめてありますわ」
ゴーレムの仕様についてやコストなどが書かれた冊子を渡す、作ったのは職員でミルシアは内容を軽く見た程度でしかない。
「……ふむ、確かに量産化できればかなり低コストだな、汎用車両の生産ラインを一部回してもそこまで大きく予算を圧迫しないだろうな」
「でしょう、その辺も考慮して生産しましたわ」
「しかし、この魔法陣の仕様については不明な所が多くないか?、ココとか」
仕様書の後半に魔法陣についてはほとんど記載がない。
「その辺はブッラクボックスになりますわ、他の勢力に奪われた時に解析されないように明確に記載はしていませんわ、……という建前で実はまだ完成していないのです」
「あの動きで未完成という事かな?」
「いえ、どうもずいぶんとこだわっているようで納得した仕上がりになっていないと……」
「その苦労は理解できる、おそらく強行せんと永遠に完成せんだろうな、ひとまずはソレを採用するか議題にしよう、正式採用については追って知らせる」
「ありがとうございますわ、ユウキ撤収しますわよ」
ゴーレムから声を発する機能はまだ搭載されていないので手を振って答える。
「しかし1ヶ月以内一度正式に完成させておく事だ」
「おまかせ下さいまし」
「で、アレの名称はあるのかな?」
「ええ、ホープと命名しておりますわ」
「いいだろう、完成を楽しみにしているよ」
「さてホープのお披露目を終わった事ですし一度私の所でお食事会にいたしましょう」
ゴーレムをミルシアに戻すと上機嫌で全員に提案した。もちろん断る者はおらず盛大に行われた。
少人数で場所はゴーレムがある事務所だったので雰囲気に欠けるがそれでも出された料理はしっかりとした物だった。
「みなさん、これでゴーレムが活躍する時代までまた一歩近づきました、これもユウキとそれからそれを私に呆れることなくついて来てくれたスタッフのみなさんのおかげです、この場で一度お礼申し上げます、ありがとうございます、それからこれからもよろしくお願いいたしますわ」
「それじゃあユウキ、さっさと完成させますわよ」
「了解」
食事会が終わると早々にゴーレムの製造に取り掛かる、ユウキは職員に作り方を教えつつゴーレムを仕上げていくミルシアに選ばれた人材なだけあって上手く制作できている、それでも保有している魔力がユウキと比較して少ないので一発で成形できるというわけではないようだ。
そうして2週間の期間を経てようやく職員の能力だけでゴーレムの《ホープ》が完成した。
「これで私は流石に帰るよ」
「ええ、いつまでもユウキに頼りっきりでは国の産業になりませんからね、今回の仕事はギルドを通じて振り込んでおきまわすわね」
「助かるよ」
こうしてユウキの長いゴーレム開発の時間が終わったのであった。
ユウキが作ったゴーレムは一番最初のホープという事で後に《ホープルーツ》と呼ばれるようになります。




