少ない自歴
「というかそんなに上がっておったのか、ふむ…まあいいさ、しかし水龍よ、良い相棒を見つけていたようじゃないか」
「あれ…、お母さん…?」
「ユウキの横にいた黒龍じゃ、名前はフィアと申す…っとそんなことはどうでもよい」
フィアは天井を見上げながら呟く。
「素材程度だった我があんなに金がかけられているとはなぁ…」
「なぜあなたはあんな高額になるほどに…」
マキナにとって黒龍は伝説の存在であり恐怖や破壊といえば黒龍という話を聞いていた事が生前からあったが、今目の前にいるユウキの姿をしているフィアにはそのようなイメージや雰囲気が一切感じなく寧ろどこか寂しげに見える。
「我もな、昔は家族と暮らしとったのじゃよ」
「…………?」
「我ら龍の血や爪、牙は貴重だったらしくての、薬や装備品になるだので大量に人に狩られていたのじゃ、それで我の一族はみな殺されてもうてのぉ」
「そんな……」
マキナは意外に思った、遥か昔には龍が沢山いたと言われていたが現在龍種が絶滅してるかもしれないと言われているほど目撃例がない理由が乱獲だったということだ。
「我も若くてのぉ怒りで人間に復讐したのが始まりじゃろうか…」
「……はぁ」
「頭に血が登っておっての人を見れば見境なく殺したくなっておった」
「じゃあ…今も?」
「いやいや昔の事じゃ、もう人なんぞどうでもいいわい」
「そうですか…」
「うむ、ついに仇に連なる者を見つけての、おそらく子孫じゃ、我の一族を殺した人はすで死んでおったのじゃよ、後にも先にも明確に殺意を持って完全に殺し切ったのはあの時だけじゃな、まあ自分でも思うが無駄な時間じゃったな、あの頃はとにかく殺意と力をもてあましておった時期でもあったしのう」
「もう人に復讐は…」
「もうしとらんよ、いや少し前からは我を殺しに来る人間しか相手にしとらんよ」
「そうなんですか」
「ま、もっとも人を殺すの止めたのは別の理由じゃがな」
「え?!」
「復讐が終わろうとも人間自体が憎かったのじゃよ、ある日のことじゃ、一つの集落を見つけての当たり前のように人を殺しておったのじゃ」
「はぁ…」
「そうしたらじゃ、子を庇う親の姿を見てのぉ……、それがどうも我の小さな頃と重のうてしまっての、何故かその場を飛び出してしまったのじゃ…、またそれから暫く闇雲に飛んでおってな人の匂いがしてあの時訳の解らん気分を晴らしたくての、そこへ向かったんじゃ…、したらどうじゃ人と人が殺し合いをしておるではないか、なんというかのぉ、それで呆れたというべきか気が抜けたというかのお、それ以来こっちから殺しに行くことを辞めたのじゃよ」
「はぁ…でもなんでその話を?」
「まあまず、龍の生き残りでつい口が軽くなったのと、我はもう人を殺す気など向かってこない限りないのと…そうじゃな…」
ユウキの手をマキナの頭にのせる。
「我の娘じゃろそれくらは知っておいてもらわんとの、もっともそんな事しか話せそうなことは無いがな」
「お母さん…」
不思議そうにしていたマキナの顔がぱあっと明るくなる。
数回マキナの頭を撫でた後、ユウキの目が見開き両手を勢いよく上げる。
「そーい!、勝手に話を進めるな!」
「あ、お母さんおかえりー」
マキナがユウキに抱きつく、はがそうとするが力強く体格差もありビクともしない。
「あーもーお母さんって呼んでいいからまずはなれろ!」
「これからよろしくね!、お母さん」
「はぁ…よろしく」
こんな喋り方にしてちょっと後悔してる




