一つの精神
「まぁ、とにかくあんた達はすぐにここから出て行くのね?」
「一休みしたらここからすぐに去りますよー」
「……すぐに去りなさいよ」
半透明な少女の視線がずっとこちらを射してくる。
無防備にしているおかげか少しだけ警戒を解いたようだが二人をずっと睨んだままだ。
ユウキは近くの木にもたれかかり目を閉じようとする。
「はぁー、フィアがモコモコだったらなー」
「む、あの食いにくい物のどこがいいのじゃ?」
ユウキが浮かべた動物のイメージがフィアにも伝わったようだ。
「えー、可愛いよー、抱きしめたらあったかいし」
「…そんなもんかの?」
ユウキから送られてくる可愛いというイメージでフィアは考えを改めた方がいいのかと思い始める。
「そんなもんだよ、でいつまでこっち見てるの? 幽霊さん」
「ゆっ…あなた達を信用したわけじゃないし、っていうかいつまでいるつもりよ!」
幽霊という言葉に反応したのか少し声が大きい。
「もうすぐで立ち去りますよー」
「じゃあなんで木にもたれかかって今にも寝そうなのよ!」
「自分の体力が思ったよりなかった感じだね……」
「寝てるし!」
太陽が少し傾き日光が顔にかかり目が覚める……。
「うぅ、ふぁー…よく寝たのかなうー…ん2時間位寝てるといいなぁ、フィアは寝てなかったの?」
「あんまり動いてないのに眠くなるわけないだろ」
「そーなのかーあーまだいたんだ幽霊さん」
「いったでしょ、あなた達を信用していない、監視よ」
「さいですかー、おや?」
「ユウキよ、どうしたのじゃ?」
「湖の底に…何かいる、うっすらとだけど」
「ななななななななんで水龍がいるってわかるの!?」
ユウキが湖の底に何かいるのを感知すると、半透明な少女はわかりやすく慌て始める。
「え、水龍いるの?」
「あ…」
「ほう」
「それから、かなり弱ってる…」
「っ!…、そこまでわかってしまったからには…」
半透明な少女の周りに湖の水がまるで生きているかのように集まってくる。
「死んでもらうわ!」
ユウキは臆することなく一度溜息をつきフィアに話しかける。
「フィアちゃん、その姿でいるのはそろそろ疲れたんじゃない?」
「え!?、いや、我は別に…むぅ」
頭のイメージがなんとなくでも伝わるのが便利で察してくれたが、だるそうに渋々元の姿に戻る…。やっぱり戻るときもグロテスクな見た目と音がする。
「コレでよいのだろ?」
「な…! 龍、なんで、そんな…黒、いや、でも…っ!」
その姿を見て幽霊は周りに漂わせていた水を沈め、なにやら葛藤を始めた。何か覚悟を決めたように。
「私達の……、水龍様を…、助けてはいただけないでしょうか!」
たまに寝て起きたらどれくらい時間が経っているか直観でわかるときがありますよね




